
先に結論:食道アカラシアは「食道の出口がゆるまない」病気。食道造影の bird beak sign が手がかりで、確定は食道内圧検査
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 下部食道括約筋(LES)がうまくゆるまず、食道の蠕動(ぜんどう)も失われる運動の病気 |
| 症状 | 固形物も水分もつかえる、食べた物が戻ってくる、胸の痛み、体重減少 |
| 画像の特徴 | 食道造影で拡張した食道と、出口が鳥のくちばしのように細くなる像(bird beak sign)。CTでは拡張した食道に食物残渣・液体がたまる |
| 注意点 | がんなどがアカラシアに似た像をつくる「偽性アカラシア」との区別 |
| 次にすること | 消化器内科で内視鏡・食道内圧検査(高解像度マノメトリー) |
食道アカラシアとは
食道アカラシア(esophageal achalasia)は、食道の蠕動の異常と、下部食道括約筋(LES)の弛緩不全を特徴とする食道運動障害です(Vaezi 2020)。食道の出口がゆるまないため、飲み込んだ物が胃へ流れにくく、食道にたまって食道が拡張していきます。原因は、LESをゆるめる働きをもつ抑制性の神経細胞に炎症と変性が起こることと考えられています(Provenza 2025)。
まれな食道運動障害です(Duy 2025)。鑑別には胃食道逆流症、偽性アカラシア、腫瘍、強皮症やジャックハンマー食道・遠位食道けいれんなど、ほかの食道運動障害が挙がります(Provenza 2025)。
症状
代表的な症状は、固形物と液体の両方のつかえ感(嚥下障害)、食べた物の逆流(吐き戻し)、ときどきの胸痛で、体重減少を伴うこともあります(Vaezi 2020)。内視鏡で物理的な閉塞や炎症が見つからないのに、つかえ感や胸痛、治りにくい逆流症状が続く場合に疑います(Pandolfino 2015)。
診断には一般に、食道造影、高解像度食道内圧検査、上部消化管内視鏡の3つの検査が必要とされます(Provenza 2025)。食道にたまった物を誤嚥して肺炎を起こすこともあり(Rabushka 1991)、誤嚥性肺炎の画像は 誤嚥性肺炎のCTの記事 で解説しています。
診断の流れと分類(Chicago分類)
アカラシアが疑われたら、食道内圧検査(マノメトリー)を行います(Pandolfino 2015)。高解像度マノメトリーで、食道内の圧のかかり方と収縮のパターンから3つの亜型に分けられます(Vaezi 2020)。食道運動障害の分類は Chicago分類 第4.0版(CCv4.0、2021年)が用いられ、マノメトリーに加えて、錠剤を用いた食道造影などの補助検査も診断の裏づけに使うよう整理されています(Yadlapati 2021)。
| 亜型 | マノメトリーの特徴 | LESへの治療後の経過(報告) |
|---|---|---|
| Ⅰ型 | 蠕動なし・異常な圧上昇なし | 中間的 81%(拡張が強いほど不良) |
| Ⅱ型 | 蠕動なし・食道全体の圧上昇 | 非常に良好 96% |
| Ⅲ型 | 蠕動なし・遠位食道のけいれん性収縮 | 66% |
※亜型と治療成績は Pandolfino 2015 の系統的レビューによる。内視鏡では、食道内の唾液の貯留と、食道胃接合部のすぼまりが手がかりになります(Vaezi 2020)。
食道造影(バリウム)の所見:bird beak sign
食道造影では、拡張した食道と、食道胃接合部が鳥のくちばしのように細く先細りする像(bird beak sign、bird beaking)が重要な手がかりです(Vaezi 2020)。亜型によって食道造影の見え方が異なることも報告されています(Duy 2025)。
時間を決めて撮る食道造影(timed barium esophagram:TBE)は、バリウムを飲んだ後に一定時間ごとに撮影し、食道にどれだけ残るかで排出の悪さを数量的に評価する方法です。診断にも治療効果の判定にも使えますが、撮影方法は施設によってばらつきがあると指摘されています(Duy 2025)。
ほかの食道の形の異常は Zenker憩室の記事 も参考にしてください。
症例 40歳代男性 食道アカラシア

引用:Radiopaedia(Achalasia – timed barium oesophagogram)
食道が大きく広がってバリウムがたまり、下の端が鳥のくちばしのように細くなっています(bird beak sign)。症例ページでは、1分・3分・5分後の撮影でも拡張とバリウムのたまりはほとんど変わらなかったと記載されています。
CT所見
CTはアカラシアの診断のための検査ではありませんが、胸部・腹部CTで偶然見つかったり、合併症や他の病気を除外するために撮られたりします。
- 食道の拡張:アカラシア9例では中等度〜高度の拡張(気管分岐部の高さで平均径4.35cm)がみられ、壁の厚さは正常でした(Rabushka 1991)。
- 食道胃接合部の壁肥厚:別の検討では、アカラシア8例中5例で食道胃接合部に左右対称な5mmをこえる壁肥厚(7〜10mm)がみられました(Carter 1997)。
- 合併症:二次的な癌、医原性の食道穿孔、誤嚥がCTで確認されています(Rabushka 1991)。
食道の壁がむくんで厚く見える病気の鑑別は 食道の全周性浮腫性壁肥厚の記事、食道癌のCTは 食道癌のCT画像診断の記事 を参照してください。
偽性アカラシアとの区別(心配な場合)
症状や食道造影・マノメトリーがアカラシアにそっくりでも、実際には食道胃接合部の腫瘍などが原因のことがあります(偽性アカラシア、pseudoachalasia)。CTの比較では、偽性アカラシア4例中2例に明らかな食道腫瘤があり、残る例は左右非対称の壁肥厚(11mm)や18mmの強い壁肥厚でした(Carter 1997)。拡張の程度や壁の厚さが典型的でない場合は、ほかの病気を疑うきっかけになります(Rabushka 1991)。
| CTで見る点 | アカラシアらしい | 他の病気を考える |
|---|---|---|
| 食道胃接合部の壁 | 薄い〜左右対称な軽い肥厚 | 非対称な肥厚・腫瘤 |
| 拡張の程度 | 中等度〜高度の拡張 | 拡張や壁の厚さが典型的でない |
治療と次にすること
治療は下部食道括約筋をひらく方向で行われ、無作為化比較試験では、バルーン拡張術で70〜90%、腹腔鏡下筋層切開術で88〜95%の有効性が示されています(Pandolfino 2015)。どの治療を選ぶかは亜型や全身状態で変わります。
- つかえ感や吐き戻しが続く場合は消化器内科を受診してください。内視鏡で腫瘍などを確認し、食道造影や食道内圧検査へ進みます。
- 気になる症状があれば医療機関を受診し、治療方針は主治医に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 逆流性食道炎と言われていたけど、アカラシアのことはある?
A. 治りにくい逆流症状の中にアカラシアが含まれることがあります(Pandolfino 2015)。薬で改善しない場合は主治医に相談してください。
Q. CTで「食道が拡張している」と言われました。
A. アカラシアのほか、ほかの運動障害や腫瘍による通過障害でも食道は拡張します。内視鏡・食道造影などで原因を確認します。
Q. bird beak sign があればアカラシアと決まる?
A. 重要な手がかりですが、偽性アカラシアでも似た像になりえます。確定にはマノメトリーが必要で、腫瘍の除外も大切です。
参考文献
- Vaezi MF, Pandolfino JE, Yadlapati RH, et al. ACG Clinical Guidelines: Diagnosis and Management of Achalasia. Am J Gastroenterol. 2020;115(9):1393-1411. PubMed
- Pandolfino JE, Gawron AJ. Achalasia: a systematic review. JAMA. 2015;313(18):1841-52. PubMed
- Yadlapati R, Kahrilas PJ, Fox MR, et al. Esophageal motility disorders on high-resolution manometry: Chicago classification version 4.0©. Neurogastroenterol Motil. 2021;33(1):e14058. PubMed
- Duy L, Clayton S, Morimoto N, et al. Beyond visualizing the bird beak: esophagram, timed barium esophagram and manometry in achalasia and its 3 subtypes. Abdom Radiol (NY). 2025;50(4):1488-1497. PubMed
- Rabushka LS, Fishman EK, Kuhlman JE. CT evaluation of achalasia. J Comput Assist Tomogr. 1991;15(3):434-9. PubMed
- Carter M, Deckmann RC, Smith RC, et al. Differentiation of achalasia from pseudoachalasia by computed tomography. Am J Gastroenterol. 1997;92(4):624-8. PubMed
- Provenza CG, Romanelli JR. Achalasia: Diagnosis and Management. Surg Clin North Am. 2025;105(1):143-158. PubMed
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