
先に結論:肺静脈狭窄は「肺静脈の出口が細くなり、肺に血液がうっ滞する病気」
| 大人(アブレーション後) | 赤ちゃん・子ども | |
|---|---|---|
| 原因 | 心房細動に対する肺静脈隔離術(PVI)の熱・冷却による傷 | 総肺静脈還流異常などの心臓手術後、早産に伴う肺の病気、生まれつき など |
| 症状 | 息切れ・咳・疲れやすさ・血痰。肺炎と誤られやすい | まれだが進行しやすく、重い経過をとりやすい |
| 画像 | 造影CTで肺静脈の出口の径・断面積を治療前と比べる。肺に限局した影がくり返す | 心エコーでまず調べ、CT・MRI・カテーテル検査で詳しく評価 |
| 治療 | バルーン拡張やステント(再狭窄が多い) | カテーテル治療・手術・薬を組み合わせる。再狭窄が多い |
アブレーション後に原因のはっきりしない息切れ・咳・血痰が続く場合は、治療を受けた施設に相談してください。
肺静脈狭窄とは
肺静脈は、肺で酸素を受け取った血液を左心房へ戻す血管で、通常は左右に2本ずつ、計4本あります。肺静脈狭窄(pulmonary vein stenosis:PVS)は、この肺静脈が細くなる状態です。細くなった肺静脈の先の肺では血液がうっ滞し、むくみ(浮腫)や出血、梗塞が起こります。
原因は大きく、大人の心房細動アブレーション後と、赤ちゃん・子どもの肺静脈狭窄に分けて考えるとわかりやすくなります。
心房細動アブレーション後の肺静脈狭窄
どれくらい起こる?
心房細動のカテーテルアブレーションでは、肺静脈の入口を焼いたり冷やしたりして電気的に隔離します(肺静脈隔離術:PVI)。この傷が治る過程で肺静脈が細くなることがあります。
バルーンを使ったPVI 320例で、治療前と3か月後に造影CTを比べた検討では、中等度狭窄(50〜75%)が肺静脈の5.3%、高度狭窄(75%超)が0.5%で、治療が必要な症状のある狭窄は0.3%でした(Tokuda 2023)。
重症度の目安
狭窄の程度は、治療前のCTと比べてどれだけ細くなったか(径または断面積の減少率)で表します。下は2つの研究で使われた区切りです。
| 重症度 | 減少率の例 | 出典 |
|---|---|---|
| 軽度 | 25〜50% | Asbach 2015 |
| 中等度 | 50〜75% | Tokuda 2023、Asbach 2015 |
| 高度 | 75%超 | Tokuda 2023、Asbach 2015 |
症状と見逃されやすさ
高度狭窄124例の検討では、82%が診断時に症状があり、息切れ67%、咳45%、疲れやすさ45%、運動能力の低下45%、血痰27%でした(Fender 2016)。症状が特徴的でないうえ、肺静脈を狙った画像検査をしないと診断できないため、診断は難しいとされます(Fender 2016)。
アブレーション後の肺静脈狭窄19例の報告では、症状が出るまでの期間の中央値は7.5週で、2例以外は最初に別の病気と診断され、症状から診断までの中央値は16週でした(Qureshi 2003)。気になる症状があれば医療機関を受診し、アブレーションを受けたことを伝えてください。
CTの見方
肺静脈そのものを見る
- 造影CT(肺静脈・左心房がよく染まるタイミング)で、4本の肺静脈の入口の径・断面積を測ります。
- 治療前のCTと比べるのが基本です。治療前後で左心房の大きさも変わるため、比較の条件をそろえます(Asbach 2015)。
- 多断面再構成(MPR)で肺静脈の長軸に沿って見ると、入口の狭窄がわかりやすくなります。
肺の変化を見る
狭窄した肺静脈の流域では、肺のうっ血・出血・梗塞が起こります。アブレーション後の肺静脈狭窄による肺梗塞の2例では、改善しない、あるいは出たり消えたりする慢性の肺の影が肺の限られた範囲にくり返し見られ、当初は非特異的な肺炎(器質化肺炎)と診断されていました(Kwon 2015)。
「アブレーション歴のある人の、同じ肺葉にくり返す・治りきらない影」を見たら、肺静脈の入口まで確認するのが読影のポイントです。
アブレーションの他の合併症(心タンポナーデ、左房食道瘻、横隔神経麻痺など)は心房細動のカテーテルアブレーション(PVI)の合併症とCTにまとめています。
治療と再狭窄
高度狭窄の治療にはバルーン拡張やステント留置が行われます。3年間の再狭窄率はバルーン拡張のみで49%、ステントで25%と報告されています(Fender 2016)。
症例 30歳代男性 アブレーション後の肺静脈狭窄(肺静脈梗塞)

引用:Radiopaedia(Pulmonary venous infarction after cardiac radiofrequency ablation)
右の肺静脈は太く左心房へ流れ込んでいますが、左側の肺静脈は細く造影が乏しくなっています。症例ページでは左上下肺静脈の狭小化と造影不良、左下葉のすりガラス影・浸潤影、少量の左胸水が記載されています。
赤ちゃん・子どもの肺静脈狭窄
子どもの肺静脈狭窄は、まれですが進行しやすく、治療後も再狭窄が多い病気です(Prodigios 2026)。原因として、生まれつきのもののほか、総肺静脈還流異常・部分肺静脈還流異常の手術後、早産児の慢性肺疾患(気管支肺異形成)、周囲からの圧迫が挙げられます(Prodigios 2026)。
肺静脈組織を切除した子ども97例の検討では、年齢の中央値は生後6か月で、61%に先天性心疾患の手術歴がありました。組織では細胞の少ない線維性の内膜の肥厚が共通して見られました(Kovach 2017)。
画像検査の進め方
- 心エコー:最初のスクリーニング検査。ただし体格や血管の細さで見えにくいことがある(Prodigios 2026)。
- CT血管造影・心臓MRI:肺静脈の形を詳しく評価。CTではデュアルエナジーCTのヨードマップで肺の血流への影響を見る方法も使われ始めている(Prodigios 2026)。
- 心臓カテーテル検査:血行動態の評価の基準で、そのまま治療もできる(Prodigios 2026)。
似た名前の病気との違い
肺静脈閉塞症(PVOD)は、肺の中の細い静脈が狭く・つまる病気で、肺静脈の入口が細くなる肺静脈狭窄とは障害される場所が違います。詳しくは肺静脈閉塞症(PVOD)とは?をご覧ください。肺のうっ血の画像所見は肺水腫の原因・症状とCT画像診断も参考になります。
よくある疑問(Q&A)
Q. アブレーションを受けた人はみんな肺静脈狭窄になりますか?
A. いいえ。バルーンPVI 320例の検討では、治療が必要な症状のある狭窄は0.3%でした(Tokuda 2023)。
Q. アブレーション後の咳や息切れはすべて肺静脈狭窄ですか?
A. いいえ。症状は特徴的でないため、他の病気との区別が必要です(Fender 2016)。治療を受けた施設や主治医に相談し、必要に応じて肺静脈を評価する造影CTを検討します。
Q. 赤ちゃんの肺静脈狭窄は治りますか?
A. 治療後も再狭窄が多く、くり返し治療が必要になることが多い病気です(Prodigios 2026)。経過や方針は主治医と相談してください。
参考文献
- Fender EA, Widmer RJ, Hodge DO, et al. Severe Pulmonary Vein Stenosis Resulting From Ablation for Atrial Fibrillation: Presentation, Management, and Clinical Outcomes. Circulation. 2016;134(23):1812-1821. PubMed
- Tokuda M, Yamashita S, Shiomi S, et al. Pulmonary Vein Stenosis After Catheter Ablation of Atrial Fibrillation Using a Cryoballoon, Hot Balloon, or Laser Balloon. Circ J. 2023;87(12):1711-1719. PubMed
- Qureshi AM, Prieto LR, Latson LA, et al. Transcatheter angioplasty for acquired pulmonary vein stenosis after radiofrequency ablation. Circulation. 2003;108(11):1336-42. PubMed
- Kwon MR, Lee HY, Cho JH, et al. Lung Infarction due to Pulmonary Vein Stenosis after Ablation Therapy for Atrial Fibrillation Misdiagnosed as Organizing Pneumonia: Sequential Changes on CT in Two Cases. Korean J Radiol. 2015;16(4):942-6. PubMed
- Asbach S, Schluermann F, Trolese L, et al. Pulmonary vein stenosis after pulmonary vein isolation using duty-cycled unipolar/bipolar radiofrequency ablation guided by intracardiac echocardiography. J Interv Card Electrophysiol. 2015;44(1):47-54. PubMed
- Kovach AE, Magcalas PM, Ireland C, et al. Paucicellular Fibrointimal Proliferation Characterizes Pediatric Pulmonary Vein Stenosis: Clinicopathologic Analysis of 213 Samples From 97 Patients. Am J Surg Pathol. 2017;41(9):1198-1204. PubMed
- Prodigios J, Omeiri SE, Meneses M, et al. Pediatric Pulmonary Vein Stenosis and Treatment. Semin Roentgenol. 2026;62:150963. PubMed
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