播種性腹膜平滑筋腫症(LPD) 腹膜播種に似た多発結節のCT・MRI

子宮筋腫の手術をして何年もたってから、CTで「お腹の中に腫瘤がいくつもある」と言われました。がんの転移なのでしょうか?
腹膜にできる良性の平滑筋の結節(播種性腹膜平滑筋腫症)という病気があり、筋腫の手術歴がある方で見つかることがあります。画像だけでは区別しきれないので、最終的には組織で確かめます。

先に結論:腹膜に多発する「子宮筋腫と同じ顔つき」の結節を見たら、播種性腹膜平滑筋腫症(LPD)を鑑別に入れる

項目 要点
何か 腹膜表面に多数の平滑筋結節ができるまれな良性疾患(Xu 2025)
手がかり 子宮筋腫の手術歴(核出術・子宮摘出術、電動モルセレーター使用)のある女性
CT・MRI 境界明瞭な円形の充実性結節。T2強調像で低信号が主体、造影は子宮筋層と同程度(He 2025)
紛らわしい病気 腹膜播種(癌の腹膜転移)、肉腫など。画像では悪性が疑われやすい
次にすること 手術歴の確認と、筋腫との信号の比較。診断は病理で確定

播種性腹膜平滑筋腫症(LPD)とは

播種性腹膜平滑筋腫症(leiomyomatosis peritonealis disseminata:LPD)は、腹膜の表面に多数の平滑筋の結節が散らばるまれな婦人科疾患です。原因ははっきりしませんが、ホルモン・遺伝・分子レベルの要因が関与すると考えられています(Xu 2025)。英語では disseminated peritoneal leiomyomatosis とも呼ばれます。

子宮の外にできる平滑筋腫(leiomyoma beyond the uterus)には、LPDのほか、良性転移性平滑筋腫(benign metastasizing leiomyoma)、静脈内平滑筋腫症(intravenous leiomyomatosis)、広間膜や後腹膜の寄生性筋腫(parasitic leiomyoma)が含まれます(Barnaś 2019)。いずれも「平滑筋腫が子宮以外の場所にある」点で共通し、画像では子宮筋腫と似た信号を示すことが診断の糸口になります。子宮筋腫そのものの見え方は子宮筋腫のMRI画像診断のポイントを参照してください。

筋腫の手術後に生じる「続発性」腹膜平滑筋腫症

子宮筋腫に対する手術後に生じた腹膜平滑筋腫症(secondary peritoneal leiomyomatosis:SPL)を集めた多施設研究では、28例のうち12例が核出術、16例が子宮摘出術の既往で、17例で電動モルセレーターの使用が確認されています。初回の筋腫手術から診断までは平均7.2±4.5年で、78.6%(22/28)に症状がありました(Nelson 2026)。

CT・MRIでどう見えるか

病理で確定したLPD 10例を検討した報告では、以下の所見がまとめられています(He 2025)。

項目 所見
分布 全例が腹部・骨盤の多発病変(2個以上)。骨盤6例、腹壁6例、大網5例、腸管壁3例など
形・辺縁 円形〜類円形、境界明瞭で辺縁平滑。隣接する実質臓器への浸潤なし
大きさ 長径およそ1.5〜16.8cm
CT 境界明瞭な円形の充実性結節。小さな病変は均一、大きな病変では一部嚢胞変性
T1強調像 低〜等信号
T2強調像 多くは低信号。大きな病変ではやや高信号の部分あり
拡散強調像・ADC DWIの信号は子宮筋層を超えず、ADCは等信号
造影 充実部は比較的均一に造影され、程度は正常子宮筋層と同程度
その他 少量の骨盤内液体貯留が7例。肝への進展が1例

10例中7例に子宮筋腫手術の既往がありました(He 2025)。続発性の28例でも、腹膜に基部をもつ円形〜分葉状の造影される結節・腫瘤が多発し、その性状は子宮筋腫に類似していました。最大病変の平均径は8.0±5.6cmで、病変数は1個から数えきれないものまでさまざまでした(Nelson 2026)。

読影のコツは「子宮(または残存筋腫)と結節の信号・造影の程度を並べて比べること」です。T2低信号・拡散制限が目立たない・筋層と同程度の造影、という組み合わせは平滑筋腫らしさを支持します。筋腫の変性像は子宮筋腫の変性のMRI画像診断にまとめています。

症例 30歳代女性 播種性腹膜平滑筋腫症

播種性腹膜平滑筋腫症 造影CT 冠状断像
引用:Radiopaedia(Disseminated peritoneal leiomyomatosis)

子宮筋腫で子宮全摘を受けて4年後の方です。膀胱の周りの骨盤内に、境界明瞭で均一に造影される大小の結節が集まっています。腹水はほとんどなく、手術で取った結節は異型のない平滑筋の増殖で、播種性腹膜平滑筋腫症と確認されています。

腹膜播種との見分け方

LPDは発生部位のため術前画像では悪性が疑われやすく、診断は病理で確定するとされます(Khoo 2021)。He 2025も、画像は腹膜播種・転移と似るものの、病歴と組み合わせると鑑別に役立つ特徴があると結論しています。

着目点 LPDを考える方向 腹膜播種を考える方向
病歴 筋腫の核出術・子宮摘出術、モルセレーター使用 既知の悪性腫瘍(卵巣・消化管など)
結節の形 円形で境界明瞭・辺縁平滑 不整な結節や板状の肥厚(omental cake)
信号 T2低信号主体、DWIは筋層程度 病変ごとに多様、拡散制限が目立つことがある
腹水 少量のことが多い(He 2025) 多量の腹水を伴うことがある

腹膜播種の典型像は腹膜播種・癌性腹膜炎のCT画像診断を参照してください。

悪性のことはあるか

LPDの悪性転化はきわめてまれとされますが、症例報告はあります(Syed 2017)。続発性28例の検討では、病理が得られたもののうち良性平滑筋腫22例、平滑筋肉腫3例でした。初回切除後に5例が再発し、再発までは平均6.5年(0.7〜16.0年)でした(Nelson 2026)。

大部分は良性ですが、急速な増大、T2強調像での不均一な高信号、出血・壊死、拡散制限の目立つ部分がある場合は肉腫の可能性も考えて報告します。子宮肉腫を疑う所見は子宮肉腫(子宮平滑筋肉腫)のMRI画像診断で解説しています。

次にすること

  • 筋腫手術の時期・術式(核出術か子宮摘出術か)、モルセレーター使用の有無を確認する
  • 結節の分布(大網・腸管壁・腹壁・ダグラス窩など)と最大径、子宮や既存の筋腫との信号の比較をレポートに書く
  • 悪性を否定しきれない所見があれば、その部位を明記する

治療はホルモン療法(GnRHアゴニストなど)と手術があり、病変の広がりや患者さんの状況に合わせて選ばれます(Xu 2025)。気になる症状があれば婦人科を受診してください。治療方針は主治医に相談しましょう。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 子宮を取ったのに、筋腫のような腫瘤ができることはありますか?

あります。続発性の28例のうち16例は子宮摘出術後でした(Nelson 2026)。手術歴から年単位で経って見つかることがあります。

Q2. 画像だけで良性と言えますか?

言い切れません。画像は腹膜播種に似ることがあり、確定には病理診断が要ります(Khoo 2021)。筋腫と同じ信号・造影パターンかどうかが、良性を考える大きな手がかりです。

Q3. 切除したらもう心配ありませんか?

切除後に再発した例が報告されています(28例中5例、平均6.5年後)(Nelson 2026)。経過観察の方法は主治医と相談してください。
参考文献

  1. He X, Ma X, Jiang N, et al. Computed tomography and magnetic resonance imaging features of abdominal and pelvic leiomyomatosis peritonealis disseminata: A retrospective observational study. J Clin Imaging Sci. 2025;15:6. PubMed
  2. W Nelson L, D Sugi M, O Menias C, et al. Secondary peritoneal leiomyomatosis after uterine leiomyoma intervention: multi-institutional clinical and radiologic experience. Abdom Radiol (NY). 2026. doi:10.1007/s00261-026-05637-4. PubMed
  3. Xu X, Liu N, Liu S, et al. Advances in the understanding and management of leiomyomatosis peritonealis disseminata: A narrative review. Int J Gynaecol Obstet. 2025;170(3):1014-1023. PubMed
  4. Khoo ACH, Lim SY. (18)F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography-computed tomography imaging of leiomyomatosis peritonealis disseminata. World J Nucl Med. 2021;20(3):322-323. PubMed
  5. Syed M, Parida B, Mankeshwar T, et al. Imaging Findings in a Rare Case of Leiomyomatosis Peritonealis Disseminata with Malignant Transformation. Pol J Radiol. 2017;82:426-430. PubMed
  6. Barnaś E, Raś R, Skręt-Magierło J, et al. Natural history of leiomyomas beyond the uterus. Medicine (Baltimore). 2019;98(25):e15877. PubMed

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