卵巣悪性リンパ腫の画像 T2均一高信号と他の充実性卵巣腫瘍との鑑別

卵巣に大きなかたまりがあり、MRIで「リンパ腫の可能性もある」と言われました。卵巣がんとは違うのでしょうか…?
卵巣のリンパ腫はまれですが、卵巣がんと違って手術より薬物療法が中心になることが多く、手術前に疑えるかが大切です。画像の特徴を整理しましょう。

先に結論:均一な充実性腫瘤で、T2強調像で均一な高信号・辺縁に卵胞が残る・造影は弱め、ならリンパ腫を鑑別に挙げる

項目 ポイント
頻度 まれ。卵巣原発はとくにまれで、全身のリンパ腫の卵巣浸潤(二次性)のこともある
組織型 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が最多、次いでBurkitt、辺縁帯リンパ腫
MRIの特徴 T2強調像で均一な高信号、辺縁に残る卵胞
CTの特徴 境界明瞭で均一な低吸収の充実性腫瘤、造影は軽度
次にすること LDHなどの確認、画像ガイド下針生検で組織診断を検討

画像だけで確定はできず、診断は病理です。お腹の張りや下腹部痛など気になる症状があれば婦人科を受診してください。

卵巣悪性リンパ腫とは

女性生殖器原発のリンパ腫は節外性リンパ腫の中でもまれで、侵される臓器は卵巣が最も多く、年齢は44〜68歳が中心です。組織型はDLBCLが最も多く、Burkitt、辺縁帯リンパ腫と続きます(Stavros 2026)。

女性生殖器原発リンパ腫13例の報告では、卵巣8例・子宮3例・頸部2例で、組織型はDLBCL 12例・濾胞性1例でした。血清LDHは10例で上昇していた一方、CA125の上昇は2例で、腹水はまれでした(Shi 2024)。

卵巣原発のBurkittリンパ腫21例のレビューでは、片側にも両側にも生じ、腹痛や大きな腹部腫瘤で見つかることが多いとされます(Stepniak 2017)。

画像でどう見えるか

エコー・CT

エコーでは境界明瞭で均一な低エコーの充実性腫瘤、CTでは境界明瞭で周囲に浸潤しない均一な低吸収の充実性腫瘤で、造影は軽度とされます(Donatello 2023)。9例のまとめでは、エコーで充実性低エコー6例・嚢胞充実混合3例で、血流が豊富で正常の卵胞構造が残ることが特徴として挙げられています(Shao 2025)。

MRI

卵巣リンパ腫14例と他の充実性卵巣腫瘍28例を比べた多施設研究の結果です(Kim 2024)。

所見 リンパ腫 他の充実性腫瘍
T2強調像で均一な高信号 81.8% 19.4%
辺縁の卵胞 40.9% 8.3%
両側性・形・大きさ・拡散制限・造影 有意差なし

多変量解析で独立した所見はT2強調像で均一な高信号だけで(オッズ比15.19)、これでリンパ腫と他の充実性腫瘍を分けるとAUC 0.82、感度81.8%、特異度80.6%でした。拡散制限はリンパ腫らしさの決め手にならない点が実務上のポイントです(Kim 2024)。

MRIのT1強調像では均一な低信号で、ガドリニウムでよく造影されたとする報告もあり(Donatello 2023)、造影の強さは報告によって幅があります。9例の検討では、単純CTで等吸収・T1強調像で等信号を示したものがそれぞれ55.6%(5/9)で、造影超音波では子宮筋層より早く染まる偏在性・不均一な造影を示した例がありました(Shao 2025)。Kim 2024の対象の年齢は中央値46.5歳(26〜81歳)で、閉経前後の幅広い年齢にみられます。

CT・MRIで拾いたいサイン

婦人科領域のリンパ増殖性疾患13例(卵巣9例)の検討では、次の所見が挙げられています(Slonimsky 2018)。

  • 均一な腫瘤 11例、軽度の造影 9例
  • 腫瘤に押しのけられた目立つ血管 4例
  • 卵巣辺縁に線状に並ぶ嚢胞(卵胞) 3例
  • 両側の卵巣が侵された例では全例で左右の卵巣が接している
  • 壊死 4例

症例 20歳代女性 非ホジキンリンパ腫(Stage IV)の両側卵巣病変

卵巣悪性リンパ腫 造影CT 横断像
引用:Radiopaedia(Lymphoma – stage IV)

骨盤内の両側に、比較的均一な充実性の腫瘤があり、卵巣への浸潤と考えられる所見です。周囲には少量の腹水もみられます。この症例は乳房・脾臓・骨・リンパ節にも病変があるStage IVの非ホジキンリンパ腫(乳房の針生検で確定)で、卵巣は全身病変の一部として侵されていました。

鑑別のポイント

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臨床像や血清所見は卵巣癌に似ることがあり(Donatello 2023)、卵巣原発か全身のリンパ腫の浸潤かは画像だけでは区別できません(Stavros 2026)。他部位のリンパ節腫大や脾腫がないか、全身を確認します。

心配な場合とそうでない場合

  • リンパ腫をとくに疑う:均一な充実性腫瘤でT2高信号・辺縁の卵胞・軽度の造影、LDH上昇、腹水が少ない。
  • 他の腫瘍を考えやすい:T2強調像で低信号が主体、嚢胞と不整な充実部が混在、腹膜播種が目立つ。

レポートに書いておきたいこと

  • 片側か両側か、両側なら左右の卵巣が接しているか
  • T2強調像での信号の均一さと、辺縁に残る卵胞の有無
  • 造影の程度、腫瘤内を走る血管、壊死の有無
  • 腹水・腹膜播種の程度(リンパ腫では目立たないことが多い)
  • 他部位のリンパ節腫大、脾腫、子宮・頸部など他の生殖器への病変

臨床側にはLDHの値や全身症状の有無を確認してもらうと、リンパ腫を考えるかどうかの判断がしやすくなります。女性生殖器原発リンパ腫ではB症状は少ないとされ(Stavros 2026)、症状がないことはリンパ腫を否定する根拠になりません。

次にすること

リンパ腫の治療は薬物療法が中心で、卵巣原発Burkittリンパ腫のレビューでも手術は第一選択の治療ではないとされています(Stepniak 2017)。画像ガイド下の針生検は不要な手術を減らしうる診断法とされ(Stavros 2026)、婦人科腫瘍としての広範な手術の前に疑うことが大切です(Shi 2024)。レポートでリンパ腫の可能性に触れ、血液内科・婦人科と方針を相談するよう主治医に伝わる形にしておきます。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 拡散制限が強ければリンパ腫ですか?

いいえ。他の充実性卵巣腫瘍も拡散制限を示すため、拡散制限の有無では差が出ませんでした(Kim 2024)。T2強調像の均一な高信号と辺縁の卵胞のほうが手がかりになります。

Q2. 両側の卵巣にあればリンパ腫ですか?

両側性だけでは決まりません(Kim 2024)。ただし両側例では左右の卵巣が接していることが多いと報告されています(Slonimsky 2018)。

Q3. CA125が高くなければ卵巣癌は否定できますか?

いいえ。CA125だけでは判断できません。リンパ腫ではLDHが上がることが多い一方でCA125上昇は少数でしたが(Shi 2024)、腫瘍マーカーと画像をあわせて主治医が判断します。

参考文献

  1. Kim TM, Ahn H, Kim SY, et al. MR imaging findings of ovarian lymphoma: differentiation from other solid ovarian tumors. Abdom Radiol (NY). 2024;49(1):220-228. PubMed
  2. Slonimsky E, Korach J, Perri T, et al. Gynecological Lymphoma: A Case Series and Review of the Literature. J Comput Assist Tomogr. 2018;42(3):435-440. PubMed
  3. Donatello D, Battista G, Sassi C. Imaging of ovarian lymphoma. J Ultrasound. 2023;26(4):799-807. PubMed
  4. Shi S, Li W, Ni G, et al. Primary lymphoma of the female genital tract masquerading as gynecological malignancy. BMC Womens Health. 2024;24(1):247. PubMed
  5. Stavros S, Daskalaki MA, Dafopoulos S, et al. Primary Lymphomas of the Female Genital Tract: Recognizing the Rare Mimicker of Gynecologic Malignancy. Med Sci (Basel). 2026;14(3):409. PubMed
  6. Stepniak A, Czuczwar P, Szkodziak P, et al. Primary ovarian Burkitt’s lymphoma: a rare oncological problem in gynaecology: a review of literature. Arch Gynecol Obstet. 2017;296(4):653-660. PubMed
  7. Shao Y, Li X, Yang Y, et al. Case series of diagnosis challenges in ovarian malignant lymphoma. Int J Surg Case Rep. 2025;128:110948. PubMed

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