多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) エコー・MRI所見と診断基準での位置づけ

エコーで「卵巣に小さな卵胞がたくさん並んでいる」と言われました。多嚢胞性卵巣症候群なのでしょうか…?
卵巣の見た目だけでは決まりません。月経の様子やホルモンの検査とあわせて判断します。画像の基準を一緒に見ていきましょう。

先に結論:PCOSの画像は「卵胞の数」と「卵巣の大きさ」で評価する

項目 ポイント
何か 排卵障害・高アンドロゲン・多嚢胞性卵巣形態(PCOM)のうち2つ以上と、他疾患の除外で診断する(2023年国際ガイドライン)
画像の基準(成人) 経腟エコーで少なくとも片側の卵巣に2〜9mmの卵胞が20個以上。数えにくいときは卵巣体積10mL以上か1断面の卵胞10個以上
画像が不要な場合 月経不順と高アンドロゲンがそろえば、エコーなしで診断できる
思春期 エコー(とAMH)は診断に使わない
MRI 診断基準には入っていない。偶然見つかったときの見え方を知っておく

「卵胞が多い」という所見だけでPCOSと決まるわけではありません。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?診断基準での画像の位置づけ

PCOS(polycystic ovary syndrome)は生殖年齢女性に多い内分泌・代謝疾患で、Rotterdam基準を用いた有病率は世界で10〜13%とされています(Teede 2023)。

現在の国際的な基準は2023 International Evidence-based Guideline(2018年版の改訂)です。診断は次の3項目のうち2つ以上と、他の原因の除外で行います(Teede 2023)。

  • 臨床的または生化学的な高アンドロゲン(多毛・にきび、血中アンドロゲン高値)
  • 排卵障害(月経不順)
  • 超音波での多嚢胞性卵巣形態(PCOM)。成人では代わりにAMH(抗ミュラー管ホルモン)を使ってもよい(2023年の追加点)

月経不順と高アンドロゲンがそろっていれば、エコーやAMHは診断に必要ありません。つまり画像は「3項目のうち1つ」であり、画像だけで診断する病気ではありません。

除外すべき病態として、甲状腺機能異常・高プロラクチン血症・先天性副腎過形成(17-OHプロゲステロン)、低ゴナドトロピン状態、Cushing症候群、卵巣・副腎の腫瘍などが挙げられています(Teede 2023)。

エコーでの卵巣の見え方(PCOMの基準)

指標 成人の閾値(2023年国際ガイドライン) 使う場面
FNPO(卵巣1個あたりの卵胞数) 2〜9mmの卵胞が20個以上(少なくとも片側) 第一の指標。経腟走査で卵巣全体を数える
OV(卵巣体積) 10mL以上(少なくとも片側) 古い装置・画質不十分・経腹走査のとき
FNPS(1断面の卵胞数) 10個以上(少なくとも片側) 同上

ガイドラインでは、10mm以上の主席卵胞や黄体があるときは卵巣体積の計算に含めず、反対側の卵巣のFNPOで判断することも示されています。報告には最終月経、プローブの周波数、走査経路、2〜9mm卵胞の総数、各卵巣の3方向の径(または体積)を記載することが勧められています(Teede 2023)。

診断精度のメタアナリシスでは、成人でFNPOが最も精度が高く(感度84%、特異度91%、AUC 0.905)、OV(感度81%、特異度81%)とFNPS(感度81%、特異度83%)がこれに続きました(Pea 2024)。

なお、2003年以降は「12個以上」が広く使われましたが、装置の進歩で正常女性でも数えられる卵胞が増えたため、AE-PCOS学会のタスクフォースは8MHz以上のプローブを条件に25個以上を提案しました(Dewailly 2014)。2023年ガイドラインはFNPO 20個以上を採用しています。

MRIでの見え方

MRIはPCOSの診断基準には含まれていませんが、骨盤MRIで偶然PCOMに気づくことがあります。

  • 前向き症例対照研究では、MRIで測った卵巣体積8.5mL超(感度78%、特異度96%)、2〜9mmの卵胞数26個超(感度85%、特異度98%)がPCOSの診断に有用でした。卵胞が辺縁に並ぶ分布の感度・特異度は73%・82%でした(Wang 2023)。
  • T2強調像で卵巣の辺縁を縁取る低信号帯(dark cortical rim)が、周囲の75%超にわたって連続する所見は、PCOS群71%、対照群25%にみられました。皮質の厚さの平均はPCOS群1.4mm、対照群0.8mmでした(Badeeb 2021)。

いずれも単施設の研究で、確立した基準ではありません。MRIでこれらの所見を見たときは「PCOMの可能性」として臨床情報と照らし合わせるのが現実的です。正常卵巣の大きさや周期による変化は正常卵巣の大きさとMRI画像|月経周期での変化と機能性嚢胞で解説しています。

症例1 20歳代女性 多嚢胞性卵巣(エコー)

多嚢胞性卵巣 経腟エコー 左右の卵巣
引用:Radiopaedia(Polycystic ovarian syndrome)

左右の卵巣がやや大きく、5〜8mmほどのそろった大きさの卵胞が、卵巣の外側(被膜の下)に並んで見えます。中央の間質は保たれており、左右ほぼ対称の多嚢胞性卵巣の形です。

症例2 40歳代女性 多嚢胞性卵巣症候群(MRI)

多嚢胞性卵巣症候群 MRI T2強調像 横断像
引用:Radiopaedia(Polycystic ovary syndrome (dark cortical rim sign))

両側の卵巣が軽く腫大し、T2強調像で低信号の間質が目立ち、その周りに小さな卵胞(高信号)が並んでいます。卵巣の外側を低信号の縁(dark cortical rim)が囲んでいるのがこの症例の特徴です。

鑑別:卵胞が多いだけではない状態

鑑別 手がかり
思春期の正常な卵巣 思春期にはPCOMの確立した基準がなく、エコー・AMHは診断に使わない(Peña 2025)
排卵のある女性の単独のPCOM 高アンドロゲンも月経不順もなければ、健康上の意味は乏しい可能性(Dewailly 2014)
アンドロゲン産生腫瘍(卵巣・副腎) 発症時期が新しい、症状が急速に進む場合に疑う(Teede 2023)
閉経後の卵巣莢膜細胞過形成(hyperthecosis) 男性化症状。卵巣は経腟エコー・MRI、副腎はCT・MRIで評価(Hirschberg 2023)

閉経後の高アンドロゲンでは、テストステロンが5nmol/Lを超えると男性化と関連し、まずアンドロゲン産生腫瘍の除外が必要とされています(Hirschberg 2023)。卵巣の充実性腫瘍については卵巣性索間質性腫瘍(総論)の画像診断、卵巣腫瘍の画像診断|単房性・多房性嚢胞と充実成分で見分ける良性・悪性も参考にしてください。

心配な場合とそうでない場合・次にすること

  • 月経が規則的で、多毛やにきびもない:PCOMの所見だけなら、PCOSの診断にはあたりません。
  • 月経不順、多毛・にきびがある:婦人科でホルモン検査を含めて評価します。PCOSは代謝異常や心血管リスク、睡眠時無呼吸、妊娠中の合併症のリスクとも関連するため、診断後も長く付き合う視点が大切です(Teede 2023)。
  • 短期間で急に進む男性化症状:腫瘍の除外を優先します。

気になる症状があれば婦人科を受診してください。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 経腹エコーでもPCOSと言えますか?

経腹走査では卵巣全体の卵胞を数えるのが難しいため、主に卵巣体積(10mL以上)や1断面の卵胞数(10個以上)で報告することが勧められています(Teede 2023)。経腟走査が可能で本人が受け入れられる場合は、経腟のほうが正確です。

Q2. 10代で「多嚢胞」と言われました。

思春期は正常でも卵胞が多く見えることがあり、エコーやAMHは診断に使いません。思春期の診断は月経不順と高アンドロゲンの両方で行います(Peña 2025)。片方だけなら「リスクあり」として経過をみます。

Q3. MRIで「多嚢胞性卵巣」と書かれていました。

MRIの指標は研究段階で、診断の基準はエコー(またはAMH)と臨床症状です。月経や症状の状況とあわせて主治医に相談してください。

参考文献

  1. Teede HJ, Tay CT, Laven JJE, et al. Recommendations From the 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome. J Clin Endocrinol Metab. 2023;108(10):2447-2469. PubMed
  2. Dewailly D, Lujan ME, Carmina E, et al. Definition and significance of polycystic ovarian morphology: a task force report from the Androgen Excess and Polycystic Ovary Syndrome Society. Hum Reprod Update. 2014;20(3):334-52. PubMed
  3. Pea J, Bryan J, Wan C, et al. Ultrasonographic criteria in the diagnosis of polycystic ovary syndrome: a systematic review and diagnostic meta-analysis. Hum Reprod Update. 2024;30(1):109-130. PubMed
  4. Peña AS, Witchel SF, Boivin J, et al. International evidence-based recommendations for polycystic ovary syndrome in adolescents. BMC Med. 2025;23(1):151. PubMed
  5. Wang S, Zhang M, Hu X, et al. Diagnostic values of MRI indexes for polycystic ovary syndrome. Acta Radiol. 2023;64(2):806-813. PubMed
  6. Badeeb A, Brook A, Lee KS. Dark cortical rim: an MRI feature of polycystic ovarian syndrome. Abdom Radiol (NY). 2021;46(3):1148-1156. PubMed
  7. Hirschberg AL. Approach to Investigation of Hyperandrogenism in a Postmenopausal Woman. J Clin Endocrinol Metab. 2023;108(5):1243-1253. PubMed

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