先に結論:下垂体・甲状腺の神経内分泌腫瘍

  • MEN1は副甲状腺・下垂体・膵消化管の神経内分泌腫瘍、MEN2Aは甲状腺髄様癌・褐色細胞腫・副甲状腺機能亢進症、MEN2Bは髄様癌・褐色細胞腫・粘膜神経腫です
  • 下垂体の微小腺腫はダイナミック造影MRIで正常下垂体より遅れて染まる部分として見つけます。下垂体卒中は突然の頭痛・視力障害で発症し、出血による液面形成が典型です
  • 甲状腺髄様癌はカルシトニン・CEAが腫瘍マーカーで、約25%が遺伝性(RET遺伝子)です。副甲状腺腺腫はエコーとMIBIシンチで探し、異所性も念頭に置きます

下垂体疾患

思春期早発症

  • 中枢性思春期早発症の多くは原因不明(特発性)で、女児の90%、男児の60%を占める。脳の病変が見つかるのは男児に多い(Vurallı 2020)。
  • 原因となる脳の病変:視床下部過誤腫、鞍上部くも膜嚢胞(いずれも男児に多い)、水頭症、脳の発生異常、脳実質の損傷など(Vurallı 2020)。視床下部・視交叉の腫瘍も原因となる。

過誤腫

  • 視床下部灰白隆起〜乳頭体の付近にでき、乳頭体に付着する。
  • 灰白質に近い信号だが、てんかんを伴う72例ではT2WIで灰白質よりやや高信号(93%)、T1WIでやや低信号(74%)だった(Freeman 2004)。
  • 辺縁平滑な腫瘤。
  • 症状は大きさよりも形態(付着様式)と相関する。視床下部に入り込む視床下部内型は難治性てんかん。第三脳室底に付着・有茎性の傍視床下部型は思春期早発症。

多発性内分泌腫瘍(MEN)

  • MEN1:副甲状腺機能亢進症、下垂体腫瘍、膵・消化管神経内分泌腫瘍
  • MEN2A:褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、副甲状腺機能亢進症
  • MEN2B:甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進は見られない。

多発性内分泌腫瘍(MEN):MEN1は副甲状腺機能亢進症・下垂体腫瘍・膵消化管神経内分泌腫瘍、MEN2Aは甲状腺髄様癌・褐色細胞腫・副甲状腺機能亢進症、MEN2Bは甲状腺髄様癌・褐色細胞腫(副甲状腺機能亢進はない)

下垂体腺腫

  • 偶然発見される。
  • 2022年のWHO分類では、下垂体腺腫を「下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET)」と呼ぶことが推奨され(腺腫の名称も併用可)、PIT1・TPIT・SF-1などの転写因子で細胞系統を決めて分類する。
  • 造影にてmicroadenomaの検出能が上がる。
  • 下垂体上縁の部分的な突出が手がかりとなる事があるが、非特異的。妊娠中や産褥期にはよく見られる。
  • 短い間隔で連続撮影するダイナミック撮影をしないと、微小腺腫を見逃すことがある。
  • 腺腫の中には正常組織と早期相は同じ造影効果を呈することがあるのでダイナミックする。
  • 10mm以上はmacroadenoma。ホルモン非産生性が多い。
  • 男性のプロラクチノーマは症状気づきにくい。性欲低下も気づきにくい。
  • 浸潤性は、トルコ鞍内の破壊、海綿静脈洞への進展をする。腫瘍が海綿静脈洞部の内頸動脈を67%(約3分の2)以上取り囲んでいる場合は浸潤ありと言え、25%未満なら浸潤なしと考えてよい。
  • 下垂体卒中は出血を伴うこと。臨床的な下垂体卒中は下垂体腺腫の2〜12%に起こり、非機能性腺腫に多い。微小、巨大いずれも下垂体腺腫にも出血が起こりうる。突然の激しい頭痛、視力・視野障害、眼球運動障害、意識低下という症状が起こる。
  • 下垂体卒中の典型的画像=ニボー像形成。
  • 下垂体卒中の急性期を乗り切ると、下垂体不全になることがある。

下垂体卒中の画像所見

  • CTやMRIで、出血や壊死を含む下垂体腫瘍を確認して診断する。誘因として、頭蓋内圧の上昇、高血圧、大きな手術、抗凝固療法、下垂体の負荷試験などがある。副腎皮質刺激ホルモンの不足による副腎不全は、放置すると命に関わる(Briet 2015)。
  • 手術で確かめた研究では、出血を含む嚢胞52個のうち29個でT2WIの液面形成がみられ、上の高信号層は黄色調の液体、下の低信号層は液状化した血腫だった。液面形成は発症から時間がたった血腫で多かった(Kurihara 1998)。

症例 40歳代女性 突然の頭痛と視力障害

下垂体卒中 MRI FLAIR 横断像
引用:Radiopaedia(Pituitary apoplexy)

トルコ鞍部に嚢胞状の腫瘤があり、内部に液面形成(ニボー像)を認めます。前方の層は高信号、後方(背側=重力のかかる側)の層はやや低い信号で、腫瘤内の出血を示しています。下垂体腺腫内の出血による下垂体卒中に典型的な所見です。

甲状腺疾患

甲状腺髄様癌

  • MEN2型の一部だが、無関係に起こることがある。無関係(散発性)のものが多い。
  • 神経内分泌腫瘍の1つで、カルシトニンを放出→CEAとともに腫瘍マーカーとして有用(血清カルシウムへの影響はほとんどない)。
  • 甲状腺癌の中では少ない組織型。約75%が散発性、約25%がMEN2型などの遺伝性(Accardo 2017)。
  • MEN2型では発症年齢が若く、小児例もある。家族性もある。常染色体優性遺伝。
  • エコーでは、152例の検討で多くが充実性・低エコーで、辺縁は整っていた。約半数に石灰化があったが、微小石灰化は一部だけで、乳頭癌を念頭に作られた超音波のリスク分類では半数以上が高リスクと判定されなかった(Matrone 2021)。
  • CTやMRでは石灰化を有することがある腫瘤影。リンパ節転移などをチェックする。
  • 核医学では、術後の遺残・再発の検索に18F-FDOPA PET/CTが推奨され(EANM 2020、Castinetti 2021)、FDG-PETは進行の速い例に限られる。68Ga標識ソマトスタチン類似体のPETは十分ではないとされる(Castinetti 2021)。
  • MRでは局所の進展を評価する事が大事。リンパ節転移も高頻度で、触知できる髄様癌73例では、片側の腫瘍でも中央区域(レベルⅥ・Ⅶ)の81%、同側の側頸部(レベルⅡ〜Ⅴ)の81%に転移があった(Moley 1999)。上縦隔(レベルⅦ)まで含めて撮影する。
  • 遠隔転移のあった46例では、肺(52.2%)・骨(28.3%)・縦隔(19.6%)・肝(17.4%)の順に多かった(Park 2021)。

副甲状腺腺腫

  • MEN症候群に見られる。
  • 副甲状腺ホルモン産生。
  • 血流豊富な腫瘤。ドップラーで確かめることが大事。
  • 99mTc-MIBIでは、甲状腺より洗い出しが遅く、遅延像でも集積が残る(遷延性の集積)。
  • エコーとシンチが重要。
  • 4つの上皮小体がすべて大きければ過形成の可能性大。
  • MRIのT2WIでは高信号を呈する。
  • 手術例の約16%が異所性との報告があり、CTやMRは有用。下上皮小体は特に。発生に由来。下の方が移動距離が多い。下は下顎角から前縦隔に発生しうる。異所性の下副甲状腺は胸腺内・前上縦隔・甲状腺内などに、上副甲状腺は気管食道溝・食道後方などにみられ、MIBIシンチは縦隔の異所性腺の検出に有用です。なので、この領域を含めた撮影が必要。
  • 小さな腺腫は画像で指摘困難なことがある。
  • 低濃度、低エコーなのは細胞に富むから。
  • 甲状腺内に副甲状腺腺腫ができることがある。

異所性甲状腺(よくある疑問)

Q. 異所性甲状腺はどこにでき、画像でどう見えますか?
A. もっとも多いのは舌根部の舌甲状腺です。造影CTでは正常の甲状腺と同じように均一に強く造影され、見分けがつきません。本来の位置に甲状腺がなく、舌甲状腺が唯一の働いている甲状腺組織であることも多いため、切除の前に頸部の甲状腺の有無を確認します(Fakadej 2023)。

 

関連記事:胸腺上皮性腫瘍(胸腺腫、胸腺癌、神経内分泌腫瘍)の画像診断

参考文献

  1. Cottier JP, Destrieux C, Brunereau L, et al. Cavernous sinus invasion by pituitary adenoma: MR imaging. Radiology. 2000;215(2):463-9. PubMed
  2. Briet C, Salenave S, Bonneville JF, et al. Pituitary Apoplexy. Endocr Rev. 2015;36(6):622-45. PubMed
  3. Arita K, Ikawa F, Kurisu K, et al. The relationship between magnetic resonance imaging findings and clinical manifestations of hypothalamic hamartoma. J Neurosurg. 1999;91(2):212-20. PubMed
  4. Phitayakorn R, McHenry CR. Incidence and location of ectopic abnormal parathyroid glands. Am J Surg. 2006;191(3):418-23. PubMed
  5. Wan XY, Chen J, Wang JW, et al. Overview of the 2022 WHO Classification of Pituitary Adenomas/Pituitary Neuroendocrine Tumors: Clinical Practices, Controversies, and Perspectives. Curr Med Sci. 2022;42(6):1111-1118. PubMed
  6. Wells SA, Asa SL, Dralle H, et al. Revised American Thyroid Association guidelines for the management of medullary thyroid carcinoma. Thyroid. 2015;25(6):567-610. PubMed
  7. Castinetti F, Taïeb D. Positron Emission Tomography Imaging in Medullary Thyroid Carcinoma: Time for Reappraisal? Thyroid. 2021;31(2):151-155. PubMed
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  10. Kurihara N, Takahashi S, Higano S, et al. Hemorrhage in pituitary adenoma: correlation of MR imaging with operative findings. Eur Radiol. 1998;8(6):971-6. PubMed
  11. Accardo G, Conzo G, Esposito D, et al. Genetics of medullary thyroid cancer: An overview. Int J Surg. 2017;41 Suppl 1:S2-S6. PubMed
  12. Matrone A, Gambale C, Biagini M, et al. Ultrasound features and risk stratification systems to identify medullary thyroid carcinoma. Eur J Endocrinol. 2021;185(2):193-200. PubMed
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  14. Park H, Yang H, Heo J, et al. Long-Term Outcomes and Causes of Death among Medullary Thyroid Carcinoma Patients with Distant Metastases. Cancers (Basel). 2021;13(18):4670. PubMed
  15. Fakadej T, Balar AB, Kota S, et al. Lingual Thyroid: Case report and brief review of the literature. Radiol Case Rep. 2023;18(1):312-316. PubMed

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