腰方形筋(ようほうけいきん:quadratus lumborum muscle)は、後腹壁を構成する代表的な深部筋のひとつであり、腹部CTや胸腹部CTで比較的安定して描出される筋です。
日常読影では大腰筋ほど意識されないことも多いですが、後腹壁腫瘤、血腫、膿瘍、筋萎縮、腎周囲病変の広がりを評価する際には、腰方形筋の位置関係を理解しておくことが重要です。
腰方形筋のCT画像の解剖
胸部のCTやMRI画像を読む上で腰方形筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。
CTの横断像では以下の場所に腰方形筋があります。

腰方形筋は大腰筋の後方にあり、脊柱起立筋群のやや前外側にある後腹壁筋と考えることができます。腎の後方にも位置するため、腎周囲病変や後腹膜出血の広がりをみる際にも重要なランドマークとなります。
CT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→腰方形筋(quadratus lumborum muscle)のCT画像の解剖
腰方形筋の起始と停止
起始
- 腸骨稜後部
- 腸腰靱帯
停止
- 第12肋骨下縁
- 第1〜第4腰椎横突起
したがって、腰方形筋は骨盤側から起こり、上方では第12肋骨と上位腰椎横突起へ付着する筋として整理できる。線維走行はおおむね頭内側方向であり、下位から上位へ向かって後腹壁を埋めるように存在する。
腰方形筋の線維構成の考え方
腰方形筋は、単一方向の線維だけで構成されるわけではなく、解剖学的には腸骨から肋骨へ向かう線維、腸骨から横突起へ向かう線維、横突起間を結ぶ線維などを含む複合的な筋として理解される。したがって、教科書的には単純に見えても、実際には機能的・形態的に複数の線維束からなる筋である。
このため、CTでも完全に均一な長方形として見えるわけではなく、レベルによって厚みや輪郭がわずかに変化する。とはいえ、読影実践上は「腰椎外側に縦走する後腹壁筋」として捉えれば十分役立つ。
腰方形筋の作用
- 体幹の同側側屈
- 両側収縮による体幹伸展補助
- 腰椎の安定化
- 呼吸時の第12肋骨固定
- 片側収縮による骨盤挙上補助
腰方形筋は単独で大きな運動を起こす筋というより、体幹深層で姿勢保持と安定化を担う筋として理解するとよい。
とくに座位・立位での体幹安定化、および呼吸時の下位肋骨固定に重要である。
神経支配
腰方形筋は、一般に第12胸神経前枝(肋下神経)およびL1〜L4前枝により支配される。
したがって、後枝支配である多裂筋や脊柱起立筋群とは神経支配の系統が異なる。
この点は、筋萎縮や神経障害の解釈を考える際に役立つ。
参考文献:
- Bordoni B, Myers T, Varacallo M. Anatomy, Abdomen and Pelvis, Quadratus Lumborum. StatPearls Publishing. Updated 2024.
- Phillips S, Mercer S, Bogduk N. Anatomy and biomechanics of quadratus lumborum. Proc Inst Mech Eng H. 2008;222(2):151-159.
- Sonawane K, et al. Decoding quadratus lumborum blocks: Fascial pathways and anatomical insights. J Clin Anesth. 2026.
- Jeon A, et al. A Cadaver Study of the Quadratus Lumborum Muscle and Its Innervation. Int J Morphol. 2025;43(4):434-441.
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