動脈瘤様骨嚢腫(aneurysmal bone cyst; ABC)とは?
- 動脈瘤様骨嚢腫(aneurysmal bone cyst; ABC)は血液を含む多房性嚢胞を主体とする腫瘍様病変である。
- 約80%が20歳までに発生するとされるが、全年齢に生じうる。
- 長管骨の骨幹端(大腿骨・脛骨・上腕骨など)に多く、膝周囲(遠位大腿骨・近位脛骨)、骨盤も比較的多い(腸骨など)。
- 脊椎発生も一定の割合を占め、脊椎では後方要素(椎弓・棘突起など)に好発する。
- 骨巨細胞腫、骨芽細胞腫、軟骨芽細胞腫、線維性骨異形成などが出血性の嚢胞性変化を起こし、
「ABC様変化(二次性ABC)」として見えることがある(ABCそのものか別腫瘍+ABC様変化かの見極めが重要)。
一次性ABCと二次性ABC
- 一次性ABC:腫瘍性病変としての性格が支持され、USP6再構成(CDH11-USP6など)が報告されている。
- 二次性ABC:他の骨腫瘍や骨病変の内部に、出血性・嚢胞性変化としてABC様所見が乗る。
動脈瘤様骨嚢腫の画像所見
X線
- 膨張性の溶骨性病変(expansile lytic lesion)。
- 内部は透亮で、薄い皮質(eggshell)として残ることがある。
- 多房性(soap-bubble)様に見えることがある。
- 骨膜反応は軽度〜なしが典型だが、部位や病期で変動する。
CT
- 溶骨性で膨張性発育を示す。
- 典型例では明瞭な境界を示し、強い硬化縁は目立たないことが多い。
- fluid-fluid level(液面形成)を伴うことがある(体位で液面が変化しうる)。
- 皮質の菲薄化・膨隆、局所の骨性隔壁、脊椎では椎弓根・椎弓の破壊と脊柱管内進展の評価が重要である。
MRI
- 多房性嚢胞とfluid-fluid levelを高率に認める(出血の層状沈降を反映)。
- 嚢胞内容は出血の時相により信号が多彩となる。
- 辺縁と隔壁の造影増強は典型像の一つ(壁・隔壁が増強)。
- 重要ポイントは“明らかな腫瘍性充実部”の有無である。充実部が目立つ/不整に増強する場合、
telangiectatic osteosarcomaなど悪性を必ず鑑別に挙げる。
脊椎ABCの注意点
- 後方要素優位の膨張性溶骨性病変+多房性+fluid-fluid levelは強い手がかりとなる。
- CTで皮質破綻と脊柱管内進展(硬膜外成分)を確認し、神経圧迫リスクを評価する。
- MRIで硬膜外進展、髄内圧迫、出血成分、隔壁増強パターンを評価し、手術・塞栓など治療計画に資する。
症例 30歳代男性 歩行異常と下肢筋力低下

引用:radiopedia
胸椎椎体の右後方要素に、境界明瞭で膨張性の骨融解性病変を認めており、病変は右椎弓根、椎弓、横突起に及んでいます。

MRIにおいて液面形成(fluid-fluid level)と血液成分(T1WIで高信号)を含む膨張性の腫瘤性病変を認めています。
病変は椎体の右後方要素に及び、椎間孔へ進展し、脊髄および右神経根を高度に圧迫しています。
動脈瘤様骨嚢腫(ABC)を疑う所見です。
病理学的に動脈瘤様骨嚢腫(ABC)と診断されました。
鑑別診断:二次性ABCを起こしやすい病変
fluid-fluid levelは「出血の層状沈降」を示す所見であり、ABC以外でも出現する。したがって、年齢・部位・骨反応・充実部の性状を統合して鑑別する。
- 血管拡張型骨肉腫(Telangiectatic osteosarcoma:TOS):若年者
- 骨巨細胞腫(GCT)
- 軟骨芽細胞腫
- 骨芽細胞腫
- 線維性骨異形成
まとめ
- ABCは膨張性溶骨性病変+多房性+fluid-fluid levelが中核所見である。
- 脊椎では後方要素優位と脊柱管内進展の評価が重要である。
- fluid-fluid levelは非特異的であり、腫瘍性充実部(とくに結節状・不整な増強)を見落とさないことが最大の安全策である。
参考文献
- Beltran J, et al. Aneurysmal bone cysts: MR imaging at 1.5 T. Radiology. 1986.
- Hudson TM, et al. Fluid levels in aneurysmal bone cysts: a CT feature. AJR Am J Roentgenol. 1984.
- Zileli M, et al. Aneurysmal bone cysts of the spine. World J Surg Oncol. 2012.
- Nasri E, et al. Aneurysmal bone cyst: a review. 2023.
- Zishan US, et al. Differentiation between aneurysmal bone cyst and telangiectatic osteosarcoma: clinical, radiographic and MRI study. 2020.
- Oliveira AM, et al. USP6 and CDH11 oncogenes identify the neoplastic cell in primary aneurysmal bone cyst. Am J Pathol. 2004.
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