先に結論:びまん性血管損傷(DVI)

  • びまん性血管損傷は回転性の外力で脳の小さな血管が傷つき、SWI・T2*強調像で多数の点状・線状の低信号(微小出血)として見える状態です
  • びまん性軸索損傷(DAI)と一緒に語られますが、DVIは血管の損傷、DAIは軸索の損傷を指し、同じものではありません
  • blooming effectは、出血の成分(ヘモジデリンなど)が周りの磁場を乱し、T2*強調像やSWIで実際より大きく黒く写る現象で、小さな微小出血を見つけやすくします
  • 微小出血は皮髄境界・脳梁・脳幹に多く、数・分布は重症度の目安になりますが、DWIやFLAIRの所見とあわせて評価します

びまん性血管損傷(DVI:Diffuse Vascular Injury)とは?

  • びまん性血管損傷(diffuse vascular injury:DVI)は、交通事故や転落などの際に脳実質に加わった慣性力による回転によって髄質の微小血管(特に髄質静脈系)や微小循環が障害され、微小出血(traumatic microbleeds:TMB)や虚血性変化をびまん性に呈する病態概念。
  • びまん性軸索損傷(diffuse axonal injury:DAI)と並行して語られることが多いが、TMBは「血管損傷の可視化」であり、軸索損傷そのものと同一ではない。
  • DAIは軸索の損傷を中核とする概念であり、典型部位(灰白質‐白質境界、脳梁、脳幹など)に病変が出やすい。一方、DVIは微小血管破綻・微小循環障害を反映し、T2*強調像やSWIで点状〜線状の低信号(TMB)として描出される。
  • Griffinらの報告によると、DVIによる外傷性微小出血(Traumatic Microbleeds: TMB)は、病理学的には血管周囲腔におけるヘモジデリン貪食マクロファージの浸潤を反映しており、SWIで描出される範囲よりも広く侵されていることが示唆されている。すなわち、TMBはDAIとは異なる病態であり、微小血管の破綻による脳血流障害や虚血が、外傷性脳障害(TBI)に関与していると推察される。
  • かつてDVIは、受傷直後から意識障害が出現し、数分から数時間で死に至る重篤な病態であると考えられていた。しかし、近年のTMBに関する検討によれば、軽度外傷性脳障害(GCS 13〜15点)の患者にもTMBがしばしば認められることが示されている。
  • 一方で、複数の脳葉に出血を認めた症例や、massiveな出血を伴う症例においては予後が悪い傾向にある。

    びまん性血管損傷(DVI:Diffuse Vascular Injury)の画像所見

    • 重症例において頭部CTにて、脳実質のびまん性腫脹、脳溝・脳室の狭小化、白質、基底核における出血を認めることがある。しかし、微小な病変の検出においてCTの感度は限定的。
    • DVIの検出にはMRI、特にT2*強調像(T2*WI)および磁化率強調像(SWI)が極めて有用。点状・線状・結節状の低信号として描出される。これは、血液分解産物による磁化率効果(blooming effect)により、微小出血が高い感度で描出されるため。
    • 微小血管破綻による虚血やうっ血を反映してDWIで高信号、あるいは拡散亢進によるADCの高値を認める場合がある。
    • 虚血性変化を反映して、出血の周囲にT2強調像やFLAIR像で点状・結節状の高信号を認めることがある。
    • DVIにおいて特異的かつ重要な所見として、Convergent-type hemorrhageが挙げられる。側脳室前角に向かって収束するように分布する点状・線状の低信号域を示す。その分布から髄質静脈(medullary vein)の起始部の損傷による髄質静脈のうっ血・出血が原因であると推察している。Anterior caudate vein(前尾状核静脈)、Septal vein(透明中隔静脈)の静脈還流領域に一致して放射状に微小出血が配列するのが特徴。

    DVIとDAIの違い

    • DVI:微小血管損傷・微小循環障害 → T2*/SWIでTMB(点状/線状低信号)が主役
    • DAI:軸索損傷 → DWI高信号(急性期)、FLAIR高信号、DTI異常など(出血を伴う場合もある)

    DAI・DVIを疑うときのMRIのポイント

    • CTや通常のMRIで出血がはっきりしなくても、SWIで微小出血が見つかることがあります。通常のMRIで脳実質の出血がない軽症頭部外傷21例のうち、16例でSWIにより微小出血が検出されました(Park 2009)。
    • SWIは従来のグラジエントエコー(T2*強調像)より小さな出血を多く描出し、小児・青年のDAI 7例では、SWIで1,038個、T2*強調像で162個の出血性病変が数えられました(Tong 2003)。
    • 出血を伴わない軸索損傷はSWIでは拾えないため、SWI・DWI・FLAIRを組み合わせて評価します。

    DVI・DAIでよくある疑問(Q&A)

    Q. 医療でいうDVI・DAIとは?
    A. DVIはDiffuse Vascular Injury(びまん性血管損傷)、DAIはDiffuse Axonal Injury(びまん性軸索損傷)の略で、どちらも頭部外傷の画像診断で使われる言葉です。

    Q. DVIとDAIは同じもの?
    A. 同じ外傷で一緒に起こることが多いものの、別の病態と考えられています。慢性期の外傷性脳損傷27例の検討では、血管の異常(脳血流・脳血管反応性)と軸索の異常(拡散テンソル画像)を示す部位はほとんど重なりませんでした(Haber 2021)。

    Q. 頭を打ったあとに注意することは?
    A. 頭痛・吐き気・意識がぼんやりする・手足の動かしにくさなど、気になる症状があれば医療機関を受診してください。

     

    症例

    Brain, 142: 3550-3564, 2019.

    A~Cは従来からよく知られている点状(ドット状)に見える微小出血を示している。D~Fは線状(ストリーク状)に見える微小出血を示している。この線状の形状は、血管の走行(特に静脈構造)に似た位置や方向で見られることが多く、単なる軸索(神経線維)の損傷ではなく、血管そのものの損傷(Traumatic Vascular Injury)であることを示唆している。

    参考文献

    • Griffin AD, et al: Traumatic microbleeds suggest vascular injury and predict disability in traumatic brain injury. Brain, 142: 3550-3564, 2019.
    • Iwamura A, et al: Diffuse vascular injury: convergent-type hemorrhage in the supratentorial white matter on susceptibility-weighted image in cases of severe traumatic brain damage. Neuroradiology, 54: 335-343, 2012.
    • 頭部 画像診断の勘ドコロ NEO 第3章 疾患編 15 外傷:びまん性血管損傷 P513-4
    • Griffin AD, et al. Traumatic microbleeds suggest vascular injury and predict disability in traumatic brain injury. Brain. 2019;142:3550-3564.
    • Park JH, et al. Detection of traumatic cerebral microbleeds by susceptibility-weighted image of MRI. J Korean Neurosurg Soc. 2009;46(4):365-369. PubMed
    • Liu J, et al. Diffuse axonal injury after traumatic cerebral microbleeds: an evaluation of imaging techniques. Neural Regen Res. 2014;9(12):1222-1230.
    • Haber M, et al. Imaging biomarkers of vascular and axonal injury are spatially distinct in chronic traumatic brain injury. J Cereb Blood Flow Metab. 2021;41(8):1924-1938. PubMed

    1. Di Ieva A, Lam T, Alcaide-Leon P, et al. Magnetic resonance susceptibility weighted imaging in neurosurgery: current applications and future perspectives. J Neurosurg. 2015;123(6):1463-1475. PubMed
    2. Jaafari O, Salih S, Alkatheeri A, et al. Appropriate incorporation of susceptibility-weighted magnetic resonance imaging into routine imaging protocols for accurate diagnosis of traumatic brain injuries: a systematic review. J Med Life. 2024;17(3):273-280. PubMed
    3. Tong KA, Ashwal S, Holshouser BA, et al. Hemorrhagic shearing lesions in children and adolescents with posttraumatic diffuse axonal injury: improved detection and initial results. Radiology. 2003;227(2):332-9. PubMed

    画像診断を無料で学べるコンテンツ

    腹部画像診断を症例で学ぶ
    無料講座

    腹部画像診断を症例で学ぶ

    4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

    講座に参加する(無料) →
    胸部レントゲンの正常解剖を31日で
    無料講座

    胸部レントゲンの正常解剖を31日で

    1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

    講座に参加する(無料) →
    画像診断LINE公式アカウント
    登録特典あり

    画像診断LINE公式アカウント

    新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

    LINEで友だち追加 →