被包化胸水(ひほうかきょうすい)は、文字通り胸水が被包化された状態を指します。

つまり、胸膜腔内に貯留した胸水が、胸膜の炎症や癒着によって部分的に区画され、包み込まれた状態を指します。

なぜそのようなことが起こるのでしょうか?

今回は被包化胸水についてまとめました。

先に結論:被包化胸水とは

  • 被包化胸水は、胸膜の炎症でフィブリンや癒着ができ、胸水が袋状に区切られた状態で、ふつうの胸水のように重力で下にたまらず、胸壁に沿ったレンズ形・多房性に見えます
  • 主な原因は膿胸・肺炎随伴性胸水・結核性胸膜炎・血胸・悪性胸水で、隔壁がある・胸膜が厚く造影されるとドレナージが効きにくく、薬(線維素溶解療法)や手術が必要になることがあります
  • 「被包(ひほう)」は「包み込まれた」という意味で、英語ではloculated(区画された)pleural effusion(胸水)といいます
  • 心不全で葉間にたまった胸水は腫瘍のように見えますが(vanishing tumor)、治療で消えるのが特徴です

被包化胸水(loculated pleural effusion)とは

  • 被包化胸水(loculated pleural effusion)は、胸水が通常のように下から徐々に溜まるのではなく、胸膜面にフィブリンが沈着して部分的な癒着を起こすことで、胸水が包まれてパッケージされたような箇所ができる現象。
  • 特に、pHの低い膿胸のようにフィブリンが多く存在する場合に起こりやすいとされる。
  • フィブリン沈着が進行すると、胸膜が肥厚し、血管が増生し、隔壁も形成され始める(膿胸の線維素膿性期〜器質化期)。隔壁ができるとドレナージが難しくなり、場合によっては手術が必要になる。

被包化胸水の主な原因

  • 結核性胸膜炎: 被包化胸水136例の検討では原因として最も多く、次いで化膿性感染、うっ血性心不全の順であった(Pasricha 1990)。
  • 化膿性感染(膿胸): 肺炎後の膿胸や細菌性胸膜炎では、強い胸膜炎に伴う線維性隔壁形成により被包化胸水を呈する。
  • 血胸: 外傷や手術後に胸腔内に血液が貯留すると、フィブリンの線維化により隔壁が形成され、被包化胸水を生じることがある。
  • うっ血性心不全: 葉間に胸水がたまって腫瘤のように見え、心不全の治療で消える「vanishing tumor(偽腫瘍)」を呈することがある。
  • 悪性胸水: 悪性腫瘍の胸膜播種による胸水は、腫瘍細胞や炎症反応に伴う線維組織の沈着により分画化され、被包化胸水が発生する。

    被包化胸水のCT画像所見

    • 癒着があったり粘度が高かったりする胸水が被包化されると、部分的に胸膜が肥厚したような像として見られる。
    • 急性膿胸では、胸膜癒着により胸水が被包化され、肺に向かって凸のレンズ状の胸水貯留を示す。
    • 時間が経過すると、フィブリンによる胸水中の隔壁形成(多房化胸水)や胸膜肥厚を認める。
    • 膿胸では、胸膜肥厚を伴った液貯留が見られ、内部に液面形成や気泡を伴うことがある(穿刺後や気管支胸膜瘻、ガス産生菌の感染などで生じる)。
    • Split pleura sign(スプリットプレウラサイン)は、膿胸(複雑性肺炎随伴性胸水を含む)を強く示唆する所見で、胸水を囲む臓側、壁側の両方の胸膜に肥厚と造影効果が見られます(膿胸35例の検討では、壁側胸膜の肥厚が86%、造影を行った例の96%で壁側胸膜の造影増強がみられた)。
    • 造影増強での胸膜所見の強調: 造影剤を用いることで、胸膜の増強や結節性病変を明瞭に描出し、悪性胸水や移行性胸膜病変との鑑別に有用。
      ただし、肺炎随伴性胸水50例の検討では胸膜の造影増強は全例、胸膜肥厚は92%にみられた一方、胸膜・胸膜外組織の厚さは病期や手術の要否とは有意に関連しなかった。CT所見だけでドレナージの成否を予測するのは難しいとされる。

    症例 70歳代 男性 発熱、呼吸困難、左側の胸痛、喀痰を伴う咳嗽。

    引用:Radiopaedia

    左側胸水があり、それを挟むように肥厚し造影効果を示す胸膜が認められ、典型的なsplit pleura signを示しています。

    胸水は肺に向かって凸の分布をしており、通常の胸水の分布とは異なります。このような胸水を被包化胸水といいます。

    症例 30歳代男性 鈍的外傷により両側多発肋骨骨折 4週後

    引用:Radiopaedia

    血胸に伴って胸膜癒着が生じた結果、右胸水は分葉状に分布しており、被包化胸水を疑う所見を呈しています。

    その様子はこの症例では、冠状断像で観察するとよりわかりやすく、多数の被包化された胸水が存在することが分かります。

    また胸膜に造影効果を認めていることが分かります。

    ちなみに、右大葉間裂沿いにも被包化された胸水を認めており、被包化した葉間胸水であることがわかります。

    このように葉間胸水も被包化することがあります。

    ふつうの胸水と被包化胸水のCTの違い

    項目 ふつうの(自由な)胸水 被包化胸水
    たまる場所 重力に従って背側・下側にたまる 重力と関係なく前側・側方・葉間などにとどまる
    形 三日月形で、肺に向かってへこむ レンズ形で、肺に向かって凸。多房性のこともある
    体位を変えると 移動する 移動しない
    胸膜 通常は肥厚しない 肥厚・造影効果を伴うことが多い(split pleura sign)
    主な原因 心不全・低アルブミン血症など 結核性胸膜炎・膿胸・血胸・悪性胸水など

     

    被包化胸水の鑑別診断

    • 胸膜の癒着を伴った膿胸は胸膜腫瘤のように見えることがある。
    • 葉間胸水の「丸い感じ」が腫瘤影に似ているため、鑑別が問題になることもある。

    被包化胸水でよくある疑問(Q&A)

    Q1. 「被包」「被包化」の読み方と意味は?

    A. 「ひほう」「ひほうか」と読みます。周りを膜で包まれることを指し、被包化胸水は「癒着で区切られて袋状になった胸水」のことです。なお「pleural effusion」は胸水、「effusion」は体の中にたまった液体(滲出液・貯留液)を意味します。

    Q2. 葉間胸水の原因は何ですか?

    A. 葉間(肺葉と肺葉の間の胸膜のすき間)に被包化された胸水は、うっ血性心不全によるものが最も多いと報告されています(Pasricha 1990)。心不全の治療で消えれば「vanishing tumor」と判断できます。

    Q3. 膿胸かどうかは胸水の何で判断しますか?

    A. 米国胸部医学会(ACCP)の指針では、胸腔の形(被包化・大量かどうか)、胸水の細菌学(グラム染色・培養)、胸水の化学検査(pH)の3つで悪い経過をたどるリスクを分類し、中等度以上ではドレナージを勧めています(Colice 2000)。画像で被包化があることも判断材料の一つです。

    発熱や胸の痛み、息苦しさが続くときは、早めに医療機関を受診してください。

    参考文献

    1. Pasricha P, Suri JC, Goel A, Chauhan S. Clinical and roentgenological profiles and etiological correlations of encysted pleural effusions. Respiration. 1990;57(1):40–4. doi:10.1159/000195817. PubMed
    2. Karkhanis VS, Joshi JM. Pleural effusion: diagnosis, treatment, and management. Open Access Emergency Medicine. 2012 Jun 22;4:31–52. doi:10.2147/OAEM.S29942. 
    3. Porcel JM, Light RW. Diagnostic Approach to Pleural Effusion in Adults. American Family Physician. 2006 Apr 1;73(7):1211–20. 
    4. Encysted pleural effusion managed conservatively: a case report and literature review. J Respir Med Res. 2025. doi:10.52338/jrmr.2025.4794
    5. Gonnelli F, Hassan W, Bonifazi M, et al. Malignant pleural effusion: current understanding and therapeutic approach. Respiratory Research. 2024;25:47. 
    6. Waite RJ, Carbonneau RJ, Balikian JP, et al. Parietal pleural changes in empyema: appearances at CT. Radiology. 1990;175(1):145-150. PubMed
    7. Kearney SE, Davies CW, Davies RJ, et al. Computed tomography and ultrasound in parapneumonic effusions and empyema. Clin Radiol. 2000;55(7):542-547. PubMed
    8. Colice GL, Curtis A, Deslauriers J, et al. Medical and surgical treatment of parapneumonic effusions: an evidence-based guideline. Chest. 2000;118(4):1158-71. PubMed

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