LEGH(Lobular Endocervical Glandular Hyperplasia)は、子宮頚部に生じる分葉状の腺過形成病変であり、画像診断において嚢胞性腫瘤と腺癌の鑑別でしばしば問題となります。MRI上ではcosmos pattern(コスモスパターン)という特徴的な所見を呈し、LEGHの鑑別において重要な鍵となります。
先に結論:子宮頸部の嚢胞性病変(ナボット嚢胞・LEGH・胃型腺癌)
- LEGHとは:Lobular Endocervical Glandular Hyperplasiaの略で、日本語では分葉状頸管腺過形成(分葉状内頸部腺過形成)。子宮頸部の奥(頸管)の腺が、胃の粘液に似た性質をもって増える良性の病変です
- 子宮頸部の嚢胞で最も多いのはナボット嚢胞で、頸部の表面近くにできる心配のない小さな粘液の袋です
- LEGH(分葉状頸管腺過形成)は、頸部の奥に小さな嚢胞の集まりを大きめの嚢胞が花びらのように囲む「コスモスパターン」を示す良性病変で、水っぽいおりもので見つかることがあります。一部は胃型腺癌(悪性腺腫を含む)の前段階の可能性があり、経過観察が必要です
- 充実部分がある・造影される・頸部の壁の奥へ広がる・大きくなる場合は胃型腺癌を疑い、細胞診や組織検査で確認します
- 3つの見分け方は位置(表面か奥か)・嚢胞の並び方・充実部分の有無がポイントです(下の比較表)
※水っぽいおりものが増えた・不正出血があるときは、婦人科を受診してください。
■ LEGHとは?
- 1999年、Nucciらにより提唱された頚管の良性腺性過形成。
- 基本的には良性だが、一部は腺癌(特にgastric type adenocarcinoma, GAS)との連続性が示唆されており、前癌病変の可能性もある。
- 若い世代から中高年の女性まで幅広い年齢で発見され、無症候のスクリーニングMRIや婦人科超音波で偶然指摘されることが多い。
■ LEGHの症状(自覚症状)
- 最も多い症状は水っぽいおりもの(水様性帯下)で、135例の検討では63.0%にみられました(Chen 2026)。
- 無症状で、婦人科の超音波や他の目的のMRIで偶然見つかることもあります。
- LEGHはHPV(ヒトパピローマウイルス)と関係しない病変で、通常の子宮頸がん検診(細胞診・HPV検査)では見つかりにくいとされています。同じ検討で細胞診は88.1%が陰性でした(Chen 2026)。
■ LEGHの原因
はっきりした原因はわかっていません。遺伝性の病気であるポイツ・イェガース症候群(Peutz-Jeghers症候群)の人に合併することが知られており、合併例はより若い年齢で見つかり、悪性化に注意が必要と報告されています(Jiang 2026)。
■ MRI画像での所見
- T2WI:中心部に小嚢胞、周囲にやや大きな嚢胞が分葉状に広がる「cosmos pattern」
- T1WI:基本的に低信号、内部出血があれば高信号を呈する
- 造影T1WI:腺間質に軽度〜中等度の造影効果あり(solid componentは乏しい)
- DWI:ADC値は中間〜やや高値。悪性腫瘍よりは高めであるが、GASとのoverlapに注意が必要
■ cosmos pattern(コスモスパターン)とは?
「cosmos」とは、中心に花芯、周囲に放射状に並ぶ花びらを持つ花(秋桜)のことです。LEGHのMRIでは、
- 中心に小さな嚢胞が密集
- その周囲を取り囲むように中等大の嚢胞が円形に配列
この構造が、まるでコスモスの花を真上から見たときの構造に似ていることから「cosmos pattern」と呼ばれています。
この所見はLEGHに特異的ではありませんが、GASやMDAでは通常見られないとされており、良性所見として重要です。なお、Ohyaらの検討ではcosmos patternは胃型粘液陽性病変(LEGHと胃型腺癌を含む)の診断に特異度87.9%と高く、T1強調像で頸部間質より低信号の領域として見える場合は特異度95.5%でした。ただし、LEGHの一部が腺癌の前段階に位置する可能性があるため、cosmos patternの存在だけで良性と断定しないよう注意が必要です。一方で、臨床的にLEGHが疑われ経過観察された69例の検討では悪性化は1例(1.4%)にとどまり、悪性変化を示した例では経過中の増大率が高く、病変の増大と細胞診の悪化が手術を考える指標とされています(PMID: 32883699)。
LEGHのコスモスパターンのMRI画像所見については信州大学医学部附属病院のページが懇切丁寧でめちゃくちゃわかりやすいのでそちらを参考にして下さい。
■ 鑑別が必要な疾患
- Naboth嚢胞:単純な保持嚢胞。造影なし・mass effectなし
- 頚部腺癌(gastric type):cosmos patternを示さず、不整形・浸潤性・造影強く、ADC値低下が特徴
- 子宮内膜症性嚢胞の頚管進展:T1WI高信号、T2WIでshading
■ LEGH・胃型粘液性癌(胃型腺癌)・ナボット嚢胞の見分け方(比較表)
| ナボット嚢胞 | LEGH(分葉状頸管腺過形成) | 胃型粘液性癌(胃型腺癌・悪性腺腫を含む) | |
|---|---|---|---|
| 性質 | 良性(粘液がたまった袋) | 良性(一部は癌の前段階の可能性) | 悪性 |
| 位置 | 頸部の表面近く、頸管を取り囲むように散らばる | 頸部の上の方(頸管の奥)、頸部の壁の中に1か所にまとまる | 頸部の壁の中から周囲へ広がる |
| MRIの形(T2強調像) | 大きさのそろった単純な嚢胞が散在 | コスモスパターン(中心の小嚢胞の集まりを大きめの嚢胞が囲む)・微小嚢胞の集まり | 不整形で充実部分が主体、嚢胞があっても配列が乱れる |
| T1強調像 | 低〜高信号(粘液の濃さによる) | 頸部の間質と同じか低い信号のことが多い | さまざま |
| 造影・拡散強調像 | 壁や内部は造影されない | 隔壁・中心部が軽く造影、はっきりした拡散制限は乏しい | 充実部分が造影され、拡散制限(ADC低下)を示す |
| 症状・細胞診 | 多くは無症状 | 水っぽいおりもの、細胞診は陰性〜軽い異型 | 水っぽいおりもの・不正出血、異型腺細胞 |
| 対応 | 通常は治療不要 | MRI・細胞診で経過観察 | 手術を中心とした治療 |
- ナボット嚢胞との見分け:手術でLEGH 23例・ナボット嚢胞25例と確認された48例の検討では、「コスモスまたは微小嚢胞パターン」と「頸管を取り囲まない」の2つがそろうと、LEGHの診断の感度73.9%・特異度84.0%でした。どちらもなければナボット嚢胞を考えます(Omi 2024)。
- 胃型腺癌(悪性腺腫)との見分け:24施設112例の多施設研究では、LEGHはMRIで内部に充実様の部分を伴う特徴的な多房性嚢胞として見え、悪性腺腫は充実部分が主体でした。MRIで嚢胞主体の病変に軽い腺の異型と胃型粘液がそろうと92%(24/26)がLEGH、充実性の構造に異型腺細胞を伴うと100%(5/5)が悪性腺腫または腺癌でした(Takatsu 2011)。
- LEGHの一部には腺癌が合併することがあるため、表の特徴は目安で、最終的には細胞診・胃型粘液の検査・組織検査を組み合わせて判断します(Takatsu 2011)。
■ LEGHの診断の流れと治療(婦人科での対応)
LEGHの診断は、症状・細胞診・超音波・骨盤MRIを組み合わせて行います(Chen 2026)。
- 超音波:頸部の上の方に多数の嚢胞の集まりとして見えますが、同じ135例の検討で超音波で病変を指摘できたのは59.3%、MRIでは92.9%でした(Chen 2026)。
- MRI:上のcosmos patternの有無、充実部分の有無、大きさを評価します。
- 細胞診・胃型粘液の検査・組織検査:病変が頸部の高い位置にあるため、通常の腟からの生検では見逃しが多く、子宮鏡や円錐切除による組織採取が必要になることがあります(Chen 2026)。
治療は、臨床的にLEGHと考えられる場合はMRIと細胞診での経過観察が選択肢になります。信州大学の検討では、経過中に病変が大きくなる・細胞診が悪くなることが手術(子宮全摘)を考える目安とされました(Kobara 2020)。悪性が疑われる場合や、ポイツ・イェガース症候群に合併した異型を伴うLEGHなどでは手術が検討されます(Jiang 2026)。
鑑別症例(悪性腺腫) 40歳代女性 水様性帯下と下腹部不快感

引用:Radiopaedia(Adenoma malignum of cervix)
膀胱の背側、子宮頸部に、大小多数の嚢胞が集まった多房性嚢胞性病変を認め、T2強調像で強い高信号を示しています。この症例は手術で悪性腺腫(adenoma malignum)と診断され、造影では隔壁の造影効果と造影される小さな充実性の壁在結節を伴っていました。LEGHと似た多房性嚢胞でも、充実成分の有無を確認することが大切です。
■ まとめ
- LEGHは良性腺性過形成だが、前癌病変の可能性もある
- MRIでcosmos patternが見られればLEGHの可能性が高いが、腺癌とのoverlapに注意
- DWI、造影効果、形状、mass effectなどを総合的に評価して診断
■ LEGHでよくある疑問(Q&A)
Q1. LEGHはがんですか?
LEGHそのものは良性の病変です。ただし一部は胃型腺癌(悪性腺腫を含む)の前段階になりうるため、経過観察が勧められます。臨床的にLEGHが疑われ経過を見た69例で、悪性化は1例(1.4%)でした(Kobara 2020)。
Q2. LEGHと言われたら手術が必要ですか?
多くは経過観察で、大きくなる・細胞診が悪くなる・充実部分が出てくるといった変化があれば手術を検討します(Kobara 2020)。水っぽいおりものが増えた・不正出血があるなど気になる症状があれば、婦人科を受診してください。
Q3. LEGHは何科を受診すればよいですか?
LEGHを含む子宮頸部の病変は婦人科で診てもらいます。MRIは放射線科で撮影・読影されますが、経過観察や手術の判断は婦人科(必要に応じて婦人科腫瘍を専門とする施設)で行われます。
参考文献:
- Nucci MR, Clement PB, Young RH. Lobular endocervical glandular hyperplasia, not otherwise specified: a clinicopathologic analysis of thirteen cases of a distinctive pseudoneoplastic lesion and comparison with fourteen cases of adenoma malignum. Am J Surg Pathol. 1999;23(8):886-891. PubMed
- Ohya A, Kobara H, Miyamoto T, et al. Usefulness of the ‘cosmos pattern’ for differentiating between cervical gastric-type mucin-positive lesions and other benign cervical cystic lesions in magnetic resonance images. J Obstet Gynaecol Res. 2021;47(2):745-756. PubMed
- 臨床放射線 Vol.64 No.7(2019)
- Takatsu A, Shiozawa T, Miyamoto T, et al. Preoperative differential diagnosis of minimal deviation adenocarcinoma and lobular endocervical glandular hyperplasia of the uterine cervix: a multicenter study of clinicopathology and magnetic resonance imaging findings. Int J Gynecol Cancer. 2011;21(7):1287-1296. PubMed
- Omi M, Tanaka YO, Kurihara N, et al. Preoperative diagnosis of cervical cystic lesions using magnetic resonance imaging: a retrospective study. BMC Womens Health. 2024;24(1):460. PubMed
- Kobara H, Miyamoto T, Ando H, et al. Limited frequency of malignant change in lobular endocervical glandular hyperplasia. Int J Gynecol Cancer. 2020;30(10):1480-1487. PubMed
- Chen X, Xue Z, Zhao S, et al. Clinical manifestations and ultrasonographic features of lobular endocervical glandular hyperplasia: a retrospective study of 135 patients. Ann Med. 2026;58(1):2673627. PubMed
- Jiang A, Chen Y, Ma F, et al. Malignant transformation risk and management dilemmas of atypical lobular endocervical glandular hyperplasia: A retrospective cohort study comparing Peutz-Jeghers syndrome versus sporadic cases. Gynecol Oncol. 2026;211:51-58. PubMed
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