先に結論:再生不良性貧血の骨髄MRI
- 再生不良性貧血は、骨髄で血をつくる細胞が減り、赤血球・白血球・血小板がすべて減る病気(指定難病)で、骨髄は脂肪に置きかわります
- MRIでは脂肪化した骨髄がT1強調像で全体に白く、STIRで黒く見えます。治療後などには脂肪の中に造血巣が島状(T1で黒い斑点)に見えることがあり、STIRによる分類(楠本の4型)は重症度や経過の評価に役立ちます
- ただし低形成の骨髄異形成症候群(MDS)とはMRIだけでは区別できず、骨髄検査で診断します
- 骨髄生検では細胞成分が30%以下に減り脂肪細胞が増え、MRIは生検で見られない全身の造血の具合を補います
再生不良性貧血
- 再生不良性貧血は、末梢血でのすべての血球の減少と骨髄の細胞密度の低下を特徴とする疾患である。
- 先天性と後天性があり、後者には1次性(特発性) と2次性がある。わが国では大部分が特発性で、2次性には薬剤・放射線・ベンゼンなどの化学物質によるものがある。経過中に骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行する例もある(再生不良性貧血の参照ガイド 2023)。
再生不良性貧血の骨髄所見(骨髄像)と脂肪髄
| 検査 | 再生不良性貧血でみられる所見 |
| 骨髄穿刺 | 有核細胞の減少。非重症例では細胞が保たれて見えることがあるが、巨核球は減少 |
| 骨髄生検(腸骨) | 細胞成分が全体の30%以下に減り、脂肪細胞の割合が増える(脂肪髄) |
| 胸腰椎のMRI | 造血組織の減少と脂肪組織の増加(診断を補強する所見) |
高齢者では健常でも造血巣が30%近くに減ることがあり、年齢を加味して判断します。生検は骨髄のごく一部しか見られないため、全身の評価にはMRIの併用が望ましいとされます(再生不良性貧血の参照ガイド 2023)。
再生不良性貧血のMRI画像所見
- 高度に脂肪髄化した骨髄は、MRIのT1強調像ではびまん性の均一な高信号を呈し,STIR像では低信号となる。
- 放射線治療後では、照射野に一致した骨髄の脂肪化が認められる。
- 慢性例や治療後の再生不良性貧血では、低形成の骨髄内にT1強調像で結節状または不均一な斑状の低信号域が認められることがあり、島状の造血巣と考えられる。
- 骨髄 MRI所見は造血機能を表す指標となり、重症度の判定や経過観察の参考になる。ただし腸骨MRIの検討では、MRIの分類は生検の細胞密度とは相関しなかった(Yang 2019)。
- 脂肪抑制画像を同時に評価することが望ましく、参照ガイドでは、骨髄造血能のSTIR画像による分類として楠本が提唱した4型が紹介されている(再生不良性貧血の参照ガイド 2023)。
- 1型:高信号域が極めて少ないもの(典型的な脂肪髄)→重症再生不良性貧血はこれ。
- 2型:高信号域が椎体周辺にみられる正常パターンと考えられるもの
- 3型:高信号域の分布が正常パターンを取らず不均一なもの
- 4型:高信号域が増加し分布が均一なもの(典型的な細胞髄)
※骨髄異形成症候群は3,4型を取ることが多い。しかし低形成性MDSは1型を取ることもあり,また中等症再生不良性貧血の多くは3型を取るため,MRIによって両者
を鑑別することは困難。一方、腸骨の骨髄脂肪分画をIDEAL-IQ法で定量した検討では、再生不良性貧血(約79%)はMDS(約43%)や健常者(約66%)より有意に高く、定量MRIが両者の区別の補助になる可能性が報告されている。また骨髄移植や免疫抑制療法で寛解した例では、腰椎骨髄の信号が細胞髄のパターンへ戻ることが示されている。
参考)T1強調像で骨髄の信号が上昇する主な病態
- 脂肪髄(加齢を含める)
- 再生不良性貧血(びまん性)
- 放射線照射(照射野に一致。照射後数週〜数か月で脂肪置換が目立つ:Stevens 1990)
- 変性(Modic type2:椎体終板に沿った黄色髄への置換:Modic 1988)
- 血管腫(限局性。典型例はT1・T2とも高信号:Gaudino 2015)
関連記事:赤色骨髄と黄色骨髄(脂肪髄)とは?違いと年齢による変化、MRI画像(T1強調像)での見え方
症例1 20歳代男性(重症再生不良性貧血)

引用:Kakizaki E et al. Cureus 2025 (Figure 2)
胸椎のMRIです。(A)T1強調像で椎体の骨髄が高信号、(B)STIR像で低信号を示しており(矢印)、脂肪髄化した再生不良性貧血の骨髄に合う所見です。(出典:Kakizaki E et al. Cureus 2025, Figure 2, CC BY 4.0)
症例2 骨盤MRIでみた島状の造血巣

引用:Walter J et al. Am J Hematol 2026 (Figure 1)
(A)1回目の骨髄生検は細胞成分の多い骨髄でしたが、(B)2回目の生検では細胞成分が少ない骨髄でした。(C)T1強調像・(D)脂肪抑制T2強調像の冠状断では、骨髄がまだらに見える中に造血巣の島が残っています(矢印)。(E〜H)横断像でも活動性の骨髄(矢印)がみられ、(G)1回目の生検の針の跡(*)は残った造血巣の中にあり、代償性の局所的な過形成をとらえていました。(出典:Walter J et al. Am J Hematol 2026, Figure 1, CC BY 4.0)
参考文献
- 再生不良性貧血の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ. 再生不良性貧血診療の参照ガイド 令和4年度改訂版. 厚生労働科学研究費補助金 特発性造血障害に関する調査研究班. 2023. 原本PDF
- Steiner RM, Mitchell DG, Rao VM, et al. Magnetic resonance imaging of diffuse bone marrow disease. Radiol Clin North Am. 1993;31(2):383-409. PubMed
- Yang X, Bai Y, Guo H, et al. Evaluating and monitoring bone marrow hypoplasia in adults with aplastic anemia via high-resolution iliac magnetic resonance imaging in the current era. Medicine (Baltimore). 2019;98(49):e18214. PubMed
- Park JM, Jung HA, Kim DW, et al. Magnetic resonance imaging of the bone marrow after bone marrow transplantation or immunosuppressive therapy in aplastic anemia. J Korean Med Sci. 2001;16(6):725-30. PubMed
- Zeng Z, Ma X, Guo Y, et al. Quantifying Bone Marrow Fat Fraction and Iron by MRI for Distinguishing Aplastic Anemia from Myelodysplastic Syndromes. J Magn Reson Imaging. 2021;54(6):1754-1760. PubMed
- Stevens SK, Moore SG, Kaplan ID. Early and late bone-marrow changes after irradiation: MR evaluation. AJR Am J Roentgenol. 1990;154(4):745-50. PubMed
- Modic MT, Steinberg PM, Ross JS, et al. Degenerative disk disease: assessment of changes in vertebral body marrow with MR imaging. Radiology. 1988;166(1 Pt 1):193-9. PubMed
- Gaudino S, Martucci M, Colantonio R, et al. A systematic approach to vertebral hemangioma. Skeletal Radiol. 2015;44(1):25-36. PubMed
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