先に結論:下顎管の解剖
- 下顎管は下顎孔(下顎枝の内側)から入り、オトガイ孔から出る下顎骨の中の管で、下歯槽神経(三叉神経第3枝の枝)と下歯槽動静脈が通ります
- 下顎骨骨折・抜歯・インプラントでは、下顎管の損傷で下唇・あごのしびれが起こるため、CTで骨折線や歯根との位置関係を確認します
- 口腔癌などの神経周囲進展の通り道(下顎管→卵円孔→Meckel腔)にもなるため、腫瘍の評価でも重要です
下顎管(mandibular canal)とは?
- 下顎管とは下顎骨を通る管のことで、入り口を下顎孔、出口をオトガイ孔という。英語ではmandibular canal、下歯槽神経が通ることから下歯槽管(inferior alveolar canal)とも呼ばれる。
- 中には、下歯槽神経、下歯槽動静脈、リンパ管が走行する。
- 下顎骨骨折の際に、下顎管に骨折線が及ぶと出血や神経圧迫の原因となる。
- また神経が走行するため腫瘍の神経周囲進展の通り道(下顎管→下顎孔→内外翼突筋間→卵円孔→Meckel腔→橋前槽)となることがある。画像では下顎孔・下顎管の拡大や異常な造影効果、神経の腫大が神経周囲進展を示す所見です。口腔顎顔面領域の腺様嚢胞癌の検討では、検出感度は造影MRIで73%、造影CTで55%(特異度はいずれも100%)と報告されています(Shimamoto 2012)。MRIでは神経の腫大(T2中等度信号)、神経に沿った異常増強、孔の拡大、神経周囲の脂肪の消失が所見で、FDG-PET/CTでは神経の走行に沿った線状の集積として見え、MRIを補う検査になります。
下顎管を走行する神経は?
- 下歯槽神経
- 後上歯槽神経
- 涙腺神経
正解!
不正解...
正解は下歯槽神経です。
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下歯槽神経(inferior alveolar nerve)とは?
下歯槽神経は三叉神経の分枝のV3の分枝。
三叉神経はMeckel腔で三叉神経節となり、V1(眼神経),V2(上顎神経),V3(下顎神経)と分かれる。その後は、
- V1は上眼窩裂から前頭・鼻毛様体・涙腺神経へと分岐する。
- V2は正円孔から翼口蓋窩を通って下眼窩裂を経て眼窩下神経、正円孔から翼口蓋窩・翼上顎裂を経て後上歯槽神経、正円孔から口蓋神経へと分岐する。
- V3は卵円孔から下顎管を経て下歯槽神経、卵円孔から耳介側頭神経、舌神経と分岐する。
下顎管を走行する下歯槽神経はどの神経の枝?
- 三叉神経第1枝(眼神経)
- 三叉神経第2枝(上顎神経)
- 三叉神経第3枝(下顎神経)
正解!
不正解...
正解は三叉神経第3枝(下顎神経)です。
下歯槽神経は三叉神経第3枝(下顎神経)の枝です。
問題に戻る
下顎神経(V3)の主な枝
下顎神経は卵円孔を出たあと、いくつもの枝に分かれます。下顎管に入るのはそのうちの下歯槽神経です。
| 枝 | 主な役割・分布 |
|---|---|
| 下歯槽神経 | 下顎孔から下顎管に入り、下の歯に枝を出す。オトガイ孔から出た後はオトガイ神経として下唇・あごの皮膚の感覚を担う。下顎孔に入る前に顎舌骨筋神経を出す |
| 舌神経 | 舌の前方の一般感覚 |
| 耳介側頭神経 | 耳の前・こめかみの皮膚の感覚 |
| 頬神経 | 頬の皮膚・粘膜の感覚 |
| 咀嚼筋への枝 | 咬筋神経・深側頭神経・翼突筋神経など(かむ筋肉を動かす) |
下顎管のCT画像所見
顔面骨CTの横断像で下顎管の解剖を見てみましょう。

下顎孔から下顎骨に入り、下行してオトガイ孔から出ていく様子がわかります。
次に矢状断像で見てみましょう。

矢状断像ですと上下方向に走る下顎管の様子がよくわかります。
引用:Radiopaedia
下顎管でよくある疑問(Q&A)
Q. 下顎孔とはどこですか?
A. 下顎枝(下あごの後ろの縦に立ち上がる部分)の内側の面にある穴で、下顎管の入り口です。下歯槽神経と下歯槽動静脈はここから下顎骨の中に入ります。
Q. オトガイ孔を通るものは?
A. 下顎管の出口で、下歯槽神経の続きであるオトガイ神経と、オトガイ動静脈が通ります。
Q. CTで下顎管が二股に見えることがありますか?
A. 歯科用コーンビームCTでは、下顎管が2本・3本に分かれて見える「二分・三分下顎管」が報告されています。ただし、その一部は下歯槽神経の正常な枝(臼後枝や臼歯枝など)を見ているものと考えられています(Iwanaga 2022)。
参考文献
- Shimamoto H, Chindasombatjaroen J, Kakimoto N, et al. Perineural spread of adenoid cystic carcinoma in the oral and maxillofacial regions: evaluation with contrast-enhanced CT and MRI. Dentomaxillofac Radiol. 2012;41(2):143-51. PubMed
- Iwanaga J, Takeshita Y, Matsushita Y, et al. What are the retromolar and bifid/trifid mandibular canals as seen on cone-beam computed tomography? Revisiting classic gross anatomy of the inferior alveolar nerve and correcting terminology. Surg Radiol Anat. 2022;44(1):147-156. PubMed
- Doran S, Whiriskey R, Sheehy N, et al. Perineural tumour spread in head and neck cancer: a pictorial review. Clin Radiol. 2024;79(10):749-756. PubMed
- Medvedev O, Hedesiu M, Ciurea A, et al. Perineural spread in head and neck malignancies: imaging findings – an updated literature review. Bosn J Basic Med Sci. 2022;22(1):22-38. PubMed
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三叉神経の第3枝である下顎神経の枝である下歯槽神経が下顎管を走行します。