先に結論:Huntington病

  • Huntington病はCAGリピートの伸長による常染色体顕性(優性)遺伝の神経変性疾患で、舞踏運動・認知機能障害・精神症状が特徴です
  • MRI・CTでは尾状核(特に頭部)の萎縮により側脳室前角が丸く(箱形に)広がるのが最も特徴的で、被殻の萎縮も早くから見られます
  • 神経有棘赤血球症・SCA17・Wilson病なども基底核の萎縮や似た症状を起こすため、家族歴・遺伝子検査とあわせて診断します
  • 確定診断はHTT遺伝子のCAGリピート数を調べる遺伝子検査で行い、MRIは尾状核・被殻の萎縮を確かめて他の病気を除くために使います

Huntington病(Huntington’s disease:HD/ハンチントン病)とは?

  • 舞踏運動を主体とする不随意運動と認知症や性格変化などの精神症状を主症状とする神経変性疾患。
  • 第4染色体短腕4p16.3上のIT15領域におけるCAGリピートの異常伸長を原因とするポリグルタミン病であり、常染色体顕性(優性)遺伝する。
  • わが国では、山陰地方の調査で有病率は10万人当たり0.65人と報告されている(Nakashima 1996)。
  • 成人期に発症することが多い(平均発症年齢は40〜50歳ごろ:Caldeira Brás 2026)が、世代が経過するごとにCAGリピートが蓄積する表現促進現象があり、発症時期が若年化する。
  • 古典的三徴は舞踏病アテトーゼ、認知機能障害、精神症状。
  • 20歳以下で発症する若年型HD(Westphal variant)はまれで、10歳までに発症する例では言葉の障害・筋強剛・ジストニアが目立ち、成人発症より進行が速い(Oosterloo 2024)。
  • 病理では、皮質-線条体-視床回路に神経細胞脱落がみられる。

Huntington病(Huntington’s disease:HD)の画像所見

  • 基本的な画像所見は尾状核、被殻の萎縮。T2WIで低or高信号を認めることがある。病理での神経細胞の脱落と、グリオーシスや鉄沈着を反映したもの。
  • これらの萎縮は症状の発現に数年先行して出現し、尾側から頭側、背側から腹側へと進行する。病理学的な重症度分類(Vonsattel分類、grade 0〜4)では、最も早い変化は尾状核の脳室に接する内側部、尾状核尾部、被殻の背側にみられ、grade 1の段階ですでに尾状核の神経細胞の約50%が失われているとされる。
  • 尾状核頭部の萎縮による側脳室前角の拡大は成人、小児症例いずれも認められる最も特徴的な所見であるが、早期では目立たないことがある。尾状核体部の萎縮は、冠状断像での、尾状核の外側への膨隆の消失と直線化してとらえられる。
  • 一方、被殻などの萎縮は早期から認められる所見で、運動症状が出る前の遺伝子変異保因者でも、脳の体積や灰白質・白質にすでに差がみられることが報告されている(Tabrizi 2009)。

症例 40歳代男性 上肢舞踏病およびジストニア運動

引用:Radiopaedia

両側尾状核および被殻の萎縮を認めており、側脳室前角がやや開大しています。

Huntington病と診断されました。

 

Huntington病の鑑別診断

両側基底核の萎縮やMRI異常信号を呈する疾患が鑑別となり

  • 神経有棘赤血球症(neuro-acanthocytosis:nac)
  • 脊髄小脳変性症17(spinocerebellar ataxia 17:SCA17)、
  • 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA):日本人で考えるべきHD類似疾患として挙げられる(Gövert 2013)
  • Wilson病など

特に神経有棘赤血球症は画像所見のみならず、舞踏様運動、認知機能障害などの症状があり、類似した臨床経過を呈しうる。そのため有棘赤血球や筋萎縮の有無など理学所見を含めた総合的な評価が必要。舞踏病有棘赤血球症やMcLeod症候群も尾状核の萎縮と側脳室前角の拡大を示し、MRIだけでは区別できないことがある(Martino 2013)。

Huntington病の診断・検査(遺伝子検査とMRI)

検査 わかること
遺伝子検査(HTT遺伝子のCAGリピート数) 診断の確定に用いる。36〜39回は発症しないこともある範囲、40回以上は発症が見込まれる範囲とされる。子に伝わる確率は50%(Caldeira Brás 2026)
MRI・CT 尾状核頭部・被殻の萎縮、側脳室前角の拡大を確認する

Q. MRIで尾状核が小さければハンチントン病と診断できますか?
A. できません。似た画像を示す病気があるため(Martino 2013)、診断は遺伝子検査を含めて行います。不随意運動や物忘れ・性格の変化など気になる症状があれば、脳神経内科などの医療機関に相談してください。

関連記事:大脳基底核とは?機能と障害されたときに起こることまとめ

参考文献:

  1. 戌亥 章平, 松田 めぐみ, 大場 洋. 頭蓋内病変の画像所見スペクトラム(第4回) Huntington病MIMIC 両側基底核萎縮を呈する疾患の鑑別診断. 臨床画像 35(2):248-252, 2019(本記事の参照: P248)
  2. 新 頭部画像診断の勘ドコロ P254
  3. Tabrizi SJ, Langbehn DR, Leavitt BR, et al. Biological and clinical manifestations of Huntington’s disease in the longitudinal TRACK-HD study: cross-sectional analysis of baseline data. Lancet Neurol. 2009;8(9):791-801. PubMed
  4. Vonsattel JP, Myers RH, Stevens TJ, et al. Neuropathological classification of Huntington’s disease. J Neuropathol Exp Neurol. 1985;44(6):559-77. PubMed
  5. Nakashima K, Watanabe Y, Kusumi M, et al. Epidemiological and genetic studies of Huntington’s disease in the San-in area of Japan. Neuroepidemiology. 1996;15(3):126-31. PubMed
  6. Oosterloo M, Touze A, Byrne LM, et al. Clinical Review of Juvenile Huntington’s Disease. J Huntingtons Dis. 2024;13(2):149-161. PubMed
  7. Caldeira Brás I, Dawson J, Kay C, et al. Huntington Disease. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2026. PubMed
  8. Martino D, Stamelou M, Bhatia KP. The differential diagnosis of Huntington’s disease-like syndromes: ‘red flags’ for the clinician. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2013;84(6):650-6. PubMed
  9. Gövert F, Schneider SA. Huntington’s disease and Huntington’s disease-like syndromes: an overview. Curr Opin Neurol. 2013;26(4):420-7. PubMed

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