腹部エコー検査や医師による腹部の診察(触診)で、
「肝腫大(読み方は「かんしゅだい」)がありますね。」
と診断されることがあります。
ところで
- この肝腫大とは何でしょうか?
- また肝腫大の原因は何で、どんな症状が起こるのでしょうか?
- さらに、どのように診断するのでしょうか?
肝腫大について様々な疑問が出てきます。
そこで、今回は肝腫大(英語では、hepatomegaly)についてまとめました。
図(イラスト)や実際のエコー画像やCT画像を用いて解説しましたので、ぜひ参考にしてください。
肝腫大とは?定義は?
肝腫大とは、何らかの原因により、肝臓が腫(は)れた状態のことを指します。
肝腫大の定義は?
肝腫大の定義としては、肝臓が腫大した結果、右の肋骨弓下に指の幅2本分(2横指)に肝臓を触れた場合とされます。
ただし、指の幅1本分であっても肝臓に圧痛があり、硬さが増していれば肝腫大ありとします1)。
腹部エコーや腹部CTにおける肝腫大の定義や基準については後述します。
肝腫大の原因は?
肝腫大を起こす原因は
- うっ血
- 沈着
- 浸潤
- 炎症
- 胆汁のうっ滞
- 腫瘍
に大きくわけることができます1)2)。
一つひとつ見ていきましょう。肝臓にうっ血が起こる
肝臓のうっ血は肝臓で血流が停滞しており、先の心臓に進みにくいという状態です。
肝臓にうっ血が起こる原因としては、
- 右心不全
- 収縮性心膜炎
- 三尖弁狭窄
- 下大静脈閉塞、肝静脈閉塞(BCS:Budd-Chiari症候群)
- 特発性門脈圧亢進症
などがあります。
特に右心不全の場合はほぼ100%に肝腫大が見られるとされます。
肝臓に沈着が起こる
肝臓に何らかの物質が沈着した結果、肝腫大が起こるというものです。
沈着による肝腫大の原因としては、
- 脂肪肝:脂肪が沈着
- Wilson病:銅が沈着
- ヘモクロマトーシス:鉄が沈着
- 糖原病:グリコーゲンが沈着
- アミロイドーシス:アミロイドが沈着
- ポルフィリン症
- Gaucher病
- Niemann-Pick病
などが挙げられます。
肝臓への浸潤が起こる
何らかの病態が肝臓へ浸潤した結果、肝腫大が起こるというものです。
浸潤による肝腫大の原因としては、
- 骨髄増殖性疾患
- 白血病
- 悪性リンパ腫
- 多発性骨髄症
などが挙げられます。
肝臓で炎症が起こる
肝臓で炎症が起こった結果、肝腫大が起こるというものです。
炎症による肝腫大の原因としては、
- ウイルス性急性肝炎、慢性肝炎
- アルコール性肝炎
- その他のウイルス性肝炎(伝染性単核球症など)
- 微小膿瘍
などが挙げられます。
胆汁のうっ滞が起こる
胆汁がうっ滞した結果、肝腫大が起こるというものです。
胆汁うっ滞による肝腫大の原因としては、肝臓の中か外かで胆汁がうっ滞するかに分けられ、それぞれ
- 肝内胆汁うっ滞:原発性胆汁性肝硬変(PBC:Primary biliary cirrhosis)、原発性硬化性胆管炎(PSC:Primary sclerosing cholangitis)
- 肝外胆汁うっ滞:閉塞性黄疸
などが挙げられます。
肝臓に腫瘍が生じる
肝臓に腫瘍が生じた結果、肝腫大が起こるというものです。
生じうる肝腫瘍には、
- 良性腫瘍:肝のう胞、肝血管腫
- 悪性腫瘍:肝細胞がん、胆管細胞がん、肝芽腫、転移性肝腫瘍
などが挙げられます。
肝腫大の症状は?
肝腫大が起こると出る症状としては、
- 右の季肋部(きろくぶ)に張った感じ・重苦しい感じ
- 右腹痛
- 黄疸
- 全身倦怠感など
があります。
無症状のこともあります。
肝腫大の診断は?
肝臓が腫れていることの診断としては、心窩部や肋弓下の触診で肝の大きさを測定することが一般的です。
しかし、大きさを数値化するために腹部エコー(腹部超音波検査)や、ときに肝臓全体や他の臓器の様子を観察するために腹部CTと言った画像検査で評価されることがあります。
CTは被ばくの問題があるため、腹部エコー検査が第一選択となります。
- 腹部エコー検査
- CT検査
に分けて見ていきます。
肝腫大のエコー検査
腹部エコーを用いて肝臓の腫大を評価する方法には大藤らによる評価法3)が最も用いられています。
これは肝臓を左葉と右葉に分けて大きさを測定します。
- 左葉:最大吸気時に腹部大動脈を含む矢状断像断面で計測します。
- 右葉:最大描出時に右側の胸壁中腋窩線付近で前額面像で計測します。
この測定法での肝臓の左・右葉径の基準値は以下の通り3)です。
ただしこの測定法は、同じ人を経時的に経過観察をしていくには良いですが、個人間では個人差があるとも言われています。
では実際のエコーの画像を見てみましょう。
症例 30歳代女性 急性肝炎 下のCTの1つ目の症例と同一症例
具体的な肝臓の数値は今回は記載がないのですが、肝臓両葉に腫大を認めています。
腹部エコーにおいて肝腫大と診断されました。
肝腫大の腹部CT検査における定義、基準
腹部CTでは、上下径が15cm以上で、肝腫大と診断することもありますが、通常は横断像で、見た目に腫大していれば肝腫大と診断することが多いです。
(左葉の上下径が10~11cm、右葉の上下径が15~16cm以上で肝腫大とする基準もあります。)
サイズを測定することも一つの基準ですが、肝右葉の下縁が右腎下縁あるいは骨盤上縁(腸骨稜)よりも下であれば肝腫大の可能性が高いともされます。
これらはCTでは冠状断像で観察するのがわかりやすいです。
また、慢性肝障害や肝硬変では、左葉の腫大・辺縁の鈍化、右葉が萎縮してくる傾向にありますので、左葉と右葉のバランスをチェックすることも重要です。
では実際のCT画像を見てみましょう。
症例 30歳代女性 急性肝炎
ダイナミックCTの門脈相の横断像です。
肝臓は腫大しています。(また、まだらな造影効果を示し、periportal collarあり。)
急性肝炎に矛盾しないCT画像所見です。
平衡相の冠状断像です。
上下径は161mm大と腫大を認めています。
急性肝炎による肝腫大と診断されました。
症例 70歳代女性 直腸癌多発肝転移
肝臓は腫大し、両葉には、低吸収域(黒い部位)が多数認められます。
多発肝転移を疑う所見です。
直腸癌の多発肝転移による肝腫大と診断されました。
症例 50歳代男性
肝臓は腫大しています。
肝臓の両葉には、先ほどもよりもさらに低吸収の肝のう胞が多数認められます。
多発肝のう胞による肝腫大と診断されました。
肝腫大の治療は?
肝腫大の治療はその原因となっている疾患の治療を行います。
最後に
肝腫大(かんしゅだい)についてまとめました。
- 肝腫大とは、右の肋骨弓下に指の幅2本分(2横指)に肝臓を触れた場合と定義される。
- 肝腫大の原因は、うっ血、沈着、浸潤、炎症、胆汁のうっ滞、腫瘍に大きく分けられる。
- 肝腫大の症状には、右の季肋部(きろくぶ)に張った感じ・重苦しい感じなどがある。
- 肝腫大は医師による腹部の触診の他、エコー検査やCT検査も有用である。
という点がポイントです。
参考になれば幸いです。
1)内科診断学 第2版、医学書院、P538-543
2)肝胆膵の画像診断 秀潤社 P24
3)消化器超音波診断学、医学書院、1985,P43
4)画像診断 Vol.41 No.4 増刊号2021 P20