下顎骨骨折(mandibular fracture)の原因と頻度
- 顔面骨骨折において鼻骨骨折に次いで頻度が高く、孤立性あるいは他の顔面骨骨折と併せて生じる。
- 原因としては暴行、交通外傷が多く、その他として落下、スポーツ外傷など。
- 20-30歳代の男性に多い。
- 骨折部位としては関節突起、角部、体部で特に多い。
- 関節突起部の骨折では偏位を示す例では顎関節により高度の障害を起こすことがある。
- 下顎骨には咀嚼筋や舌骨上筋など多くの筋が付着するため骨折片は付着する筋により特徴的な偏位を来たし歯列の断裂と咬合不全を生じる。
- 咬合不全・顎関節機能の回復が骨折修復治療の目的となる。
下顎骨骨折のCT画像診断と分類
下顎骨骨折は上のように分けられ、中でも
- 関節突起
- 角部
- 体部
の骨折の頻度が高いと報告されています。
関節突起骨折
- 介達骨折が起こる。
- 関節包に包まれている下顎頭骨折と、包まれていない関節突起骨折に分類される。
- 外側翼突筋が付着しているため、小骨片は前下内包に偏位する。
- 歯列全体が偏位するため、咬合不全が起こる。
症例 5歳男児
引用:radiopedia
左下顎骨関節突起骨折を認め、骨片は前下方内側に偏位していることがわかります。
関節突起には外側翼突筋が付着しているため、骨折により前下方内側に偏位します。
角部骨折
- 直達・介達骨折がある。
- 遠位骨片は閉口筋に牽引され、上方へ偏位する。
- 埋没智歯に注意する。
- 軟部組織の腫脹による気道狭窄に注意。
- 下顎管(下歯槽神経、下歯槽動静脈、リンパ管が走行)の損傷に注意。知覚鈍麻や神経麻痺を起こすことがある。
参考文献:
- 頭頸部の臨床画像診断学(第3版) P858-865
- すぐ役立つ救急のCT・MRI(第2版) P348-349