先に結論:錐体尖部の左右差は「骨髄か空気か」の違いのことが多い
- 耳の奥の側頭骨の錐体尖部は、人によって骨髄(脂肪)でできている場合と、空気の部屋(蜂巣)がある場合があります。片側だけ骨髄・反対側は空気だと、MRIで左右差が目立ちます
- 骨髄側はT1強調像・T2強調像で白く、脂肪抑制で黒くなり、造影されないのが特徴で、これは心配のいらない正常変異です(「leave me alone lesion」の一つ)
- コレステリン肉芽腫(T1で白いが脂肪抑制で黒くならない)や腫瘍・炎症と間違えないよう、脂肪抑制像と、CTで骨の形(膨らみ・破壊がないこと)と反対側の含気を確認します
錐体尖蜂巣の左右差による非対称性錐体尖部骨髄とは?
- 側頭骨の錐体尖部は、多くの場合、骨髄を含む骨構造として認められる。蜂巣と含気がみられるのは約33%とされる(岡本 2012)。
- ただし、乳突蜂巣が発達しており骨髄ではなく含気があるものもある。
- 左右ともに骨髄である場合や、含気がある場合は左右差がなく指摘されないケースが多い。
- 一方で、片一方は骨髄で、片一方は含気があるという場合は、錐体尖蜂巣の左右差による非対称性錐体尖部骨髄の状態であり、MRIのT1WIやT2WIで左右差として認識され、コレステリン肉芽腫や腫瘍などの病変として認識される場合があるので注意が必要。
- 実際は、単なる左右差なので、正常変異であり、leave me alone lesionsとして報告されている。錐体尖部に含気を認める人の4-7%では対側錐体尖部は骨髄であると報告されている(岡本 2012)。
錐体尖部の骨髄と含気の画像所見
- 骨髄の場合は、脂肪髄を反映して、T1WI高信号、T2WI高信号、脂肪抑制される(すべての撮像法で脂肪と同じ信号、Moore 1998)。
- 含気の場合は、CTで乳突蜂巣の含気を確認することができる。(かつ正常な骨皮質と骨梁構造を認める)
という特徴があります。もう一つのleave me alone lesionとして、含気のある錐体尖蜂巣に液体がたまった状態(trapped fluid)があります。T1WIで中等度〜高信号を示すとコレステリン肉芽腫と紛らわしいですが、CTでは膨張を伴わない蜂巣の混濁として見え、迷う場合はCTで経過を追って変化がないことを確かめます(Moore 1998)。
症例20歳代 男性

左錐体尖部にT1WI、T2WIともに高信号域あり。明らかな左右差を認めています。

腫瘍の可能性も考えられましたが、同部位は造影効果ははっきりせず、脂肪抑制で信号が抑制されています。
つまり、同部には(骨髄の)脂肪が含有されていることがわかります。

CTで含気を見てみますと、右は乳突蜂巣の含気を錐体尖部でも認めているのに対して、左側では認めていないことが確認できます。
錐体尖蜂巣の左右差による非対称性錐体尖部骨髄と診断されました。
Q. 錐体骨(側頭骨錐体部)とは?
側頭骨のうち、内耳や内耳道を内部に収め、頭蓋底を斜め前内側へのびる三角錐状の硬い部分で、その先端が錐体尖部です。錐体尖部の近くには外転神経や三叉神経が通るため、外転神経麻痺と三叉神経第1枝領域の痛みの組み合わせ(Gradenigo症候群)は、錐体尖炎などの錐体尖部の病変を示すことがあります(岡本 2012)。
関連記事:コレステリン肉芽腫のCT・MRI画像所見|T1・T2高信号と真珠腫との違い
参考文献:岡本浩一郎. 側頭骨の画像診断 ‘Leave me alone’ lesions と 錐体尖部破壊性病変. 日耳鼻. 2012;115:887-893.
- Moore KR, Harnsberger HR, Shelton C, et al. ‘Leave me alone’ lesions of the petrous apex. AJNR Am J Neuroradiol. 1998;19(4):733-738. PubMed
- Razek AA, Huang BY. Lesions of the petrous apex: classification and findings at CT and MR imaging. Radiographics. 2012;32(1):151-173. PubMed
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