前大脳動脈(ACA:anterior cerebral artery)には複数の破格・正常変異が知られています。
ただし、細かく覚える必要はないのではないかと個人的には思います。
- 1本のことも3本のこともある。
- 窓形成を来すことがある。
と言う程度でまずは理解しましょう。
前大脳動脈の破格・正常変異
頻度の多い前大脳動脈の破格・正常変異には以下のものがあります。
- 前大脳動脈窓形成
- 重複前交通動脈
- 部分的重複前交通動脈
- 前交通動脈窓形成
- 奇前大脳動脈
- 両側半球前大脳動脈
- 三分岐前大脳動脈
です。
Willis動脈輪から両側の前大脳動脈A1、A2、前交通動脈(Acom)のみを取り出してこれらの変異を見てみると次のようになります。
前大脳動脈窓形成
前大脳動脈のA1に窓形成を認めるものです。
症例 60歳代女性
左の前大脳動脈A1に窓形成を認めています。
また右の椎骨動脈の末梢を認めず、後下小脳動脈(PICA)で終わっており、いわゆるPICA end、PICA terminalを認めています。
重複前交通動脈
前交通動脈を2つ認めるものです。
部分的重複前交通動脈
前交通動脈が部分的に重複して2本あるものです。
前交通動脈窓形成
前交通動脈に窓形成を来したものです。
奇前大脳動脈
前大脳動脈のA2が1本で、左右前大脳動脈の全ての枝を栄養しているものです。前交通動脈は存在しません。
両側半球前大脳動脈
前大脳動脈のA2は2本ありますが、左右非対称で発達した一側のA2が大部分を栄養しているもの。
三分岐前大脳動脈
本来2本である、前大脳動脈のA2以降に相当する血管が3本あるものです。
症例 60歳代男性
前大脳動脈のA2が3本存在しており、三分岐前大脳動脈の所見です。
参考文献:知っておきたい頸部~頭部動脈破格 MRAとCTAの読影が楽しくなる! P106-121