脳出血の中で、被殻出血についで多いといわれる視床出血。
視床は、脳の中心に位置するため、被殻出血よりも治療が困難となります。
今回は、そんな視床出血(ししょうしゅっけつ、英語で「thalamic hemorrhage」)について・・・
- 症状
- 原因
- 診断
- 実際のCT画像
- 治療方法
- 看護
- 予後
ということを、詳しくお話ししていきたいと思います。
先に結論:視床出血(ししょうしゅっけつ)とは
- 脳の中心にある視床(間脳の一部・第三脳室の両わき)からの出血で、被殻出血に次いで多いタイプです。主な原因は高血圧です
- 症状は出血と反対側の感覚障害(しびれ)・麻痺、意識障害、目が内下方を向く(鼻先をにらむような)眼の症状など。脳室に近いため脳室穿破や水頭症を起こしやすいのが特徴です
- 予後は血腫の場所と大きさで大きく変わり、視床全体に及ぶ大きな出血は致死率が高い一方、背側の出血は予後良好です(Chung 1996)。急に片側の手足がしびれる・動かしにくい、ろれつが回らないといった症状があれば、すぐに救急受診してください
| 視床出血 | 被殻出血 | |
|---|---|---|
| 場所(CT) | 内包の内側・脳室のそば | 内包の外側 |
| 目立つ症状 | 感覚障害が強い・眼の症状 | 片麻痺・共同偏視(病巣側を向く) |
| 注意点 | 脳室穿破・水頭症が多く、手術での血腫除去は難しい | 血腫が大きいと手術の対象に |
視床出血とは?
視床出血とは、大脳と中脳をつなぐ、間脳の一部である視床で起こる出血のことを指します。
脳出血の中で、被殻出血についで多い脳内出血です。
脳に血流を送る(脳を栄養する)血管の中でも、後大脳動脈の枝である視床穿通動脈・視床膝状体動脈からの出血が多く、脳出血の中でも重症なものとなります。
実際のCT画像での視床の位置は、次のようになります。

横断像(輪切り)で、被殻や内包などと同じスライス(断面)に存在していることがわかります。
また、脳室に接していることから、視床出血が脳室へ穿破しやすいことも納得できますね。
視床出血の症状とは?
この視床に出血が起こると、
- 頭痛
- 脱力感
- めまい
- 吐き気や嘔吐
- 感覚障害
- 意識障害
- 片麻痺
- 眼球の内下方偏位
といった症状が現れることがあります。

これらの症状が全て出るわけではありませんが、脳内で出血が起こりすぐに症状が出るものから、時間の経過につれ出るものなど、その人によっても異なります。
中には失語症となることもありますが、特徴として多いのは瞳孔が小さくなったり、反射が悪くなったりといった目の異変(鼻先凝視)である神経症状です。
視床出血の原因は?
原因は、被殻出血と同様のことが言えます。
- 高血圧
- 外傷
- 脳動脈瘤
- 脳腫瘍内出血
- 血液疾患
1番の原因は高血圧です。
そのため、血圧が高くなりやすい日中に起こりやすいとも言われています(出血性脳卒中は午前6時〜正午に34%多いという報告があります:Elliott 1998)。
その高血圧とは、慢性的な高血圧症状から動脈硬化が起こり、それによって出血を起こしてしまうというものです。
視床出血の診断は?
CT検査・MRI検査・MRA検査・脳血管造影などが検査として行われます。
特に、頭部CTで、視床部に高吸収域(白い領域)が認められると、視床出血と診断します。
CT検査ではその他に、高吸収域周囲の浮腫や、第三脳室や側脳室にも血腫(脳室穿破(脳室に出血が及んでしまうこと))が認められることもあります。
視床出血のCT画像は?
では実際のCT画像を見てみましょう。視床出血はCTでの血腫の位置により、前方型・後内側型・後外側型・背側型・全体型に分けられます。175例の検討では後外側型が44%と最も多く、内包後脚へ進展しやすい型でした。後内側型は第三脳室へ穿破して水頭症を来しやすく、全体型の致死率は81%と高率でした(Chung 1996)。
| 型(出血する動脈) | 頻度 | CT・症状の特徴 |
|---|---|---|
| 前方型(視床灰白隆起動脈) | 7% | 最も小さく、側脳室前角へ穿破しやすい。行動の異常が主で、経過は良好なことが多い |
| 後内側型(傍正中動脈) | 14% | 第三脳室へ穿破して水頭症。中脳へ広がると予後が最も悪い |
| 後外側型(視床膝状体動脈) | 44% | 大きく、内包後脚へ進展。強い感覚・運動障害、右なら半側空間無視、左なら言語障害。致死率35% |
| 背側型(後脈絡叢動脈) | 18% | 側脳室体部の高さで見える。約3分の1はラクナ梗塞と誤診された。予後良好 |
| 全体型 | 18% | 視床全体を占める大きな血腫。致死率81% |
(Chung 1996)
症例 70歳代女性

右視床に出血を示唆する高吸収域(白い塊)を認めています。
脳室への穿破は認めていません。
右視床出血と診断され、保存的に加療されました。
症例 60歳代男性 右下肢脱力と呂律困難

左視床から一部内包後脚に18mm大の高吸収(白い)血腫を認めています。
脳室への穿破は認めていません。
左視床出血と診断され、保存的に加療されました。
症例 60歳代男性 左上下肢麻痺、呂律困難

右視床から一部内包後脚に血腫を認めています。

より頭側のスライスでは、血腫は右視床から頭側に放線冠に進展し、さらに右の側脳室に穿破していることがわかります。

血腫の広がりの様子は冠状断像を観察するとより明瞭です。
右視床出血+脳室穿破と診断され、保存的に加療されました。
視床出血の治療方法は?
CTによる出血部位の確認と、意識レベルの評価によって、治療方針が決まります。
視床の外側には内包(白質部)があるため、血腫除去術の適応対象とはなりません。
そのため、基本的な治療法として、
- 呼吸を整える治療と管理
- 高血圧を抑える治療と管理
- 脳浮腫対策
- 投薬による止血
などが中心となります。
呼吸管理
意識障害を起こしている場合、そのまま放置すると症状が進行し、自力呼吸できずに死に至ってしまうこともあります。
そのため、まずは呼吸を整え、管理することが必要です。
高血圧の治療
高血圧が原因となるため、この血圧管理も大切です。なお大規模試験INTERACT2では、発症6時間以内の脳出血で収縮期血圧を1時間以内に140mmHg未満へ下げる積極的降圧は、死亡・重い後遺症を有意には減らさなかったものの、機能予後の改善を示し、重い有害事象も増えませんでした。
脳浮腫対策・止血
また、脳浮腫が進むと脳ヘルニアを起こしてしまうこともあるため、脳内圧を下げつつ、止血などの処置も必要になってきます。
視床の外側には内包という運動神経が通る部位があるため、一般的に開頭血腫除去術の適応とはなりません。
手術適応例としては、水頭症により、脳ヘルニアが深刻な場合などで、その際には脳室ドレナージが検討されます。
視床出血の予後は?
- 視床出血100例の前向き研究では、死亡を予測する主な因子は、来院時の意識状態、項部硬直、血腫の大きさ・体積、脳室への穿破、水頭症でした(Kumral 1995)。
- 血腫が大きい(直径2cm超または4mL超)と、内包への進展で運動・感覚障害が強くなり、左なら失語、右なら半側空間無視などの高次脳機能障害も出やすくなります(Kumral 1995)。
- 後遺症として、まひ側の強いしびれや痛み(視床痛、脳卒中後中枢性疼痛)が出ることがあり、治療が難しいことがあります(Klit 2009)。
あわせて読みたい:被殻出血とは?左・右の症状の違いとCT画像所見、原因・治療・リハビリをわかりやすく解説
参考文献
- Kumral E, Kocaer T, Ertübey NO, et al. Thalamic hemorrhage. A prospective study of 100 patients. Stroke. 1995;26(6):964-970. PubMed
- Anderson CS, Heeley E, Huang Y, et al. Rapid blood-pressure lowering in patients with acute intracerebral hemorrhage. N Engl J Med. 2013;368(25):2355-2365. PubMed
- Chung CS, Caplan LR, Han W, et al. Thalamic haemorrhage. Brain. 1996;119(Pt 6):1873-1886. PubMed
- Greenberg SM, Ziai WC, Cordonnier C, et al. 2022 Guideline for the Management of Patients With Spontaneous Intracerebral Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2022;53(7):e282-e361. PubMed
- Demchuk AM, Dowlatshahi D, Rodriguez-Luna D, et al. Prediction of haematoma growth and outcome in patients with intracerebral haemorrhage using the CT-angiography spot sign (PREDICT): a prospective observational study. Lancet Neurol. 2012;11(4):307-314. PubMed
- Elliott WJ. Circadian variation in the timing of stroke onset: a meta-analysis. Stroke. 1998;29(5):992-6. PubMed
- Klit H, Finnerup NB, Jensen TS. Central post-stroke pain: clinical characteristics, pathophysiology, and management. Lancet Neurol. 2009;8(9):857-68. PubMed
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