先に結論:脳梗塞はCTでわかる?陳旧性脳梗塞とは
| 時期 | CT | MRI |
|---|---|---|
| 発症直後〜数時間(急性期) | 小さな梗塞はわからないことが多い。広い梗塞なら早期虚血サイン(皮髄境界の消失・脳溝の消失・レンズ核の不明瞭化・中大脳動脈の高吸収)が見える | 拡散強調像(DWI)で早くから白く写り、見つけやすい |
| 時間がたった後(慢性期) | 梗塞の部分が黒く(低吸収)はっきり写る | FLAIR・T2強調像などで確認できる |
陳旧性(ちんきゅうせい)脳梗塞とは、時間がたった古い脳梗塞のことです。CTやMRIの報告書に書かれることが多く、本人が気づかないうちに起きていた小さな梗塞(いわゆる隠れ脳梗塞)が見つかることもあります。再発予防のため、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動などの管理が大切です。
早期虚血サイン(early CT sign)とは、発症早期のCTで脳がむくんで白黒の境目がぼやける所見です。発症6時間以内のCTでの見つけやすさ(感度)は平均66%で、読む人によって判断が分かれやすい所見です(Wardlaw 2005)。
発症した時刻がわからない脳梗塞(朝起きたら症状があった、など)では、MRIのDWI-FLAIRミスマッチ(DWIで白いのに、同じ場所がFLAIRで白くない)が、発症から約4.5時間以内を示す目印として治療の判断に使われます(Thomalla 2018)。CTだけの施設でも、ASPECTSで梗塞の広がりを評価して血栓回収の判断に使います(下の節)。
※急に片側の手足が動かない・しびれる、言葉が出ない、顔がゆがむなどの症状があれば、すぐに救急車を呼んでください。
「脳梗塞が起こった時に、CTで診断することはできるのだろうか?」
「脳梗塞はCTよりも、MRIが強いって聞いたけど・・・」
事実、脳梗塞の診断に強いのはMRIです。
MRIの中でも拡散強調像(DWI)が急性期脳梗塞の診断に非常に有効な撮像法です。
しかし、CT装置しかない施設は日本で多数あります。
では、CTで脳梗塞はわかるのでしょうか?
今回は、CTでの脳梗塞の診断について、イラストや実際のCT画像を用いてまとめました。
CTで新しい脳梗塞はわからない!?
CTで新しい脳梗塞はわからないといえば、厳密に言えば誤りで、
- 新しい脳梗塞はCTではわからないことが多い
というのが正解です。
実はCTでわかる脳梗塞もあります。
CTでわかる新しい(急性期)脳梗塞とは?
脳梗塞とは脳の血管が詰まり、脳虚血に陥った状態です。
CTでわかるのは、脳梗塞に陥った割合(範囲)が広いときです。
つまり、重症な脳梗塞ならばCTで捉えることができるということです。
逆に言えば、小さな新しい脳梗塞はCTで捉えることは非常に厳しいということです。

MRIで脳梗塞と診断できるのに、CTでは異常なしということは、特に小さな脳梗塞の場合、しばしばあることです。
ここでの注意点として、今は新しい(急性期)脳梗塞の場合の話です。
古い(慢性期)脳梗塞の場合は、後述するように、小さくてもCTでわかることはしばしばあります。
CTでわかる急性期脳梗塞の所見を早期虚血サイン(early CT sign)と言います。
早期虚血サイン(early CT sign)とは?
CTでわかる早期脳梗塞の所見は以下の4点として現れます。
- 皮質・白質の境界消失
- Sylvius裂の狭小化、脳溝の狭小化・消失
- レンズ核の不明瞭化
- 中大脳動脈高吸収所見(中大脳動脈に血栓があることを示唆)
の4つです。
| 早期虚血サイン | CTでの見え方 | 意味 |
|---|---|---|
| 皮質・白質の境界消失 | 脳の表面(灰白質)と深部(白質)の濃さの差がなくなる | 灰白質がむくんで黒っぽくなる |
| 脳溝・Sylvius裂の狭小化 | 脳のしわ(脳溝)が反対側より細い・見えない | 脳全体がむくんで膨らむ |
| レンズ核の不明瞭化 | 基底核(レンズ核)の輪郭がぼやける | 中大脳動脈の枝の領域の虚血 |
| 中大脳動脈高吸収所見(hyperdense MCA sign) | 中大脳動脈が反対側より白く写る | 血管の中の血栓そのもの |
4つ目以外は、大まかに言うと、
「脳梗塞が起こって、むくんで本来あるべき境界線がぼやける」
ということです。
これらは重複して見られることもありますし、1つのみ見られることもあります。

上の脳のCTの正常例をみてください。
脳の表面の皮質(灰白質)はやや高吸収(白め)で、深いところ(白質)はやや低吸収(黒め)ですよね。
この境界がぼやけてわからなくなるのが、早期虚血サインです。
実際の症例でこの早期虚血サイン(early CT sign)を見てみましょう。
症例 70歳代男性 右麻痺
頭部CT

解説をつけないものと、つけているものは全く同じCT画像です。
緑点線で囲ったところは、皮質と髄質の境界がまだわかりやすいですよね。
ところが赤点線で囲った側は、全体的にむくんでいて、境界がはっきりしません。
これらのCT所見が
- 皮質・白質の境界消失
- Sylvius裂の狭小化、脳溝の狭小化・消失
- レンズ核の不明瞭化
に相当します。
とはいえ、なかなか難しいですよね。
専門家が見ても評価が非常に難しいのです。
実際、発症6時間以内のCTを調べた研究をまとめると、早期虚血サインの感度は平均66%(20〜87%)、特異度は平均87%で、読影者どうしの一致度(κ係数)も0.14〜0.78とばらつきがありました。経験を積むほど見つけやすくなる一方、早期虚血サインがある人は予後が悪くなりやすい(オッズ比3.11)ことも報告されています(Wardlaw 2005)。
ちなみに、この早期虚血サインは、上のような
- 基底核レベル
- 放線冠レベル
といわれる高さでチェックすることが多いです。(中大脳動脈領域にこの早期虚血サインは出やすいといわれるからです)この早期虚血変化を点数化したのがASPECTS(Alberta Stroke Programme Early CT Score)で、中大脳動脈領域を10か所に分けて評価します。発症3時間以内に血栓溶解療法を受けた患者では、ASPECTSが3か月後の機能予後や症候性頭蓋内出血を予測したと報告されています。ASPECTSは血栓回収療法の適応判断にも使われます。日本のRESCUE-Japan LIMIT試験では、ASPECTS 3〜5の広い梗塞を伴う主幹動脈閉塞例でも、血栓回収療法で90日後にmRS 0〜3となった割合が31.0%(内科治療のみ12.7%)と改善しました。
発症時刻がわからない脳梗塞:DWI-FLAIRミスマッチと血栓回収の画像
救急では「いつ発症したか」がわからない脳梗塞が少なくありません。発症時刻から4.5時間以内という従来の条件に合わない人にも、画像で「まだ助かる脳が残っているか」を調べて治療を考える流れが広がっています。
DWI-FLAIRミスマッチ
- 見かた:DWIで高信号の梗塞があるのに、同じ場所にFLAIRの高信号(実質の高信号)がない状態です。FLAIRで変化が出るには時間がかかるため、この組み合わせは発症からおよそ4.5時間以内を示します(Thomalla 2018)。
- 治験の結果(WAKE-UP試験):発症時刻不明でDWI-FLAIRミスマッチのある503人では、90日後に障害がほとんどない状態(mRS 0〜1)になった割合は、アルテプラーゼ群53.3%、プラセボ群41.8%でした(調整オッズ比1.61)。症候性頭蓋内出血は2.0%と0.4%、死亡は4.1%と1.2%でした(Thomalla 2018)。
- 灌流画像を使う方法(EXTEND試験):発症4.5〜9時間、または起床時に発症が気づかれた人で、灌流画像で助かる脳が残っている場合、mRS 0〜1の割合はアルテプラーゼ群35.4%、プラセボ群29.5%でした(調整リスク比1.44)。症候性頭蓋内出血は6.2%と0.9%でした(Ma 2019)。
- まとめた解析:発症時刻不明の4試験(843人)の個人データの解析では、mRS 0〜1の割合は、アルテプラーゼ群47%、対照群39%(調整オッズ比1.49)で、死亡は6%と3%でした(Thomalla 2020)。
血栓回収療法と画像
- 6〜24時間の血栓回収:最後に元気だった時刻から6〜24時間たった内頸動脈または中大脳動脈近位部の閉塞で、症状の重さに比べて梗塞が小さい(臨床と梗塞のミスマッチ)人では、90日後に自立できた割合が血栓回収群49%、対照群13%でした(DAWN試験:Nogueira 2018)。
- 灌流画像で選ぶ場合:6〜16時間で、梗塞が70mL未満、かつ虚血の領域が梗塞の1.8倍以上の人では、自立できた割合が血栓回収群45%、対照群17%でした(DEFUSE 3試験:Albers 2018)。
- 梗塞が広い場合:ASPECTS 3〜5の広い梗塞でも、発症12時間以内なら、血栓回収群で90日後の機能が良好な方向にずれ、死亡も少なくなりました(TENSION試験:Bendszus 2023)。この試験は、単純CTを主な画像として選んでいます。日本のRESCUE-Japan LIMIT試験(上述)は、最後に元気だった時刻から6時間以内、またはFLAIRで早期の変化がなければ24時間以内の人が対象でした(Yoshimura 2022)。
| 状況 | 使う画像 | 見ること |
|---|---|---|
| 発症時刻不明・血栓溶解 | MRI(DWI、FLAIR) | DWIの高信号があり、FLAIRの高信号がない(DWI-FLAIRミスマッチ) |
| 発症後4.5〜9時間・血栓溶解 | 灌流画像(CTまたはMRI) | 助かる脳(虚血だがまだ梗塞でない領域)が残っているか |
| 6〜24時間・血栓回収 | MRI(DWI)または灌流画像、MRA・CTA | 梗塞の大きさと症状の重さのミスマッチ、または灌流画像のミスマッチ、主幹動脈の閉塞 |
| 広い梗塞・血栓回収 | 単純CT(ASPECTS)、MRI | ASPECTSの点数、梗塞の広がり |
実際の適応は、施設の体制と現行の診療ガイドラインにそって決めます。症状が出たときは、時刻を記録して、すぐに救急車を呼んでください。
CTによる脳梗塞の診断は?急性期は?慢性期は?
ここでは、主に急性期の脳梗塞のお話をしていますが、古い脳梗塞はCTでもわかることが多いです。
急性期の脳梗塞、慢性期の脳梗塞がCTでわかるのかは以下の通りです。

- 新しい脳梗塞:サイズが大きいものはCTでわかることがある。サイズが小さいものはほぼわからない。
- 古い脳梗塞:サイズが小さい場合でもCTでわかることが多い。
ということです。
それでは実際の古い梗塞の症例を見てみましょう。
症例 80歳代男性 頭部CT画像

たとえば上の画像ですと、両側の基底核や左の視床に多数の低吸収域(黒い抜け)を認めます。いずれも古い梗塞(陳旧性脳梗塞)を疑う所見です。
脳梗塞の診断に大事なのは臨床症状
新しい脳梗塞の場合、一方でMRIの特に拡散強調像といわれる撮像では、早期脳梗塞を非常に明瞭に描出します。
早期の脳梗塞の診断に最も優れた画像検査です。
脳卒中が疑われた356人でCTとMRIを比べた研究では、発症3時間以内に検査した人で急性期脳梗塞が見つかったのはMRIで46%、CTで7%でした。最終診断が急性脳卒中だった217人に対する感度は、MRI 83%に対しCT 26%でした(Chalela 2007)。
ですので、CTを撮影したけども、特に異常はない。しかし、それでも脳梗塞が疑われるという場合には、MRIを撮影することがすすめられます。
ただし、最初に申し上げたようにMRIはCTほど簡便に撮影できるというものではありません。
- 撮影までに時間がかかる。
- 酸素ボンベを持ち込めない。
- 金属を持ち込めない
- 撮影できる技術をもった検査技師が必要。
こういった条件を全てクリアできなければ、撮影することができないからです。
そもそも、MRIがない施設や、夜間・休日にすぐMRIを撮影できない施設もあります
その場合は、CTで脳出血を除外できたら、臨床的に脳梗塞として治療を開始することもありますし、MRIが撮影できる施設へ転送することもあります。
CTで脳梗塞を診断しにいくことも大事ですが、CTで脳梗塞がない!なんて診断はできないわけです。本当に大事なのは臨床症状です。
CTで何もないといわれたけど、明らかにおかしい、麻痺がある、しゃべりにくいなどの症状があるのならば、脳梗塞の可能性があります。
脳梗塞のCT画像所見の変化
下のイラストのように、脳梗塞が生じるとその部位はCTでは、経時的に黒くなっていきます。
ただし、2〜3週間前後で一旦等吸収に戻るので注意が必要です(Müller 2026)。

発症直後(0-1時間)
所見なし。
つまりCTではほぼ脳梗塞は指摘できません。
超急性期(1-24時間)
上に述べたように、特に中大脳動脈領域の脳梗塞の場合は早期虚血サイン(Early CT sign)として描出されることがあります。
症例 70歳代男性

上のCT画像は脳梗塞発症から数時間後のCT検査です。
上で提示した症例と同じものです。
一見左右差がないようにも見えますが、よく見ると左側(向かって右側)の皮質と髄質の境界が不明瞭化しており、浮腫性変化を認めています。
これがearly CT signと呼ばれるものです。
非常に微細な所見ですね。
急性期(1-7日間)
脳梗塞部位は低吸収として描出され、周囲には低吸収の浮腫性変化を認めます。

上と同じ症例の翌日のCT検査です。
治療はすでに始まっていますが、脳の低吸収化(黒くなる)及び浮腫の増大が目立ちます。
ここまで脳梗塞が進行した状態で、脳梗塞と診断するのではなく、早期虚血サイン(early CT sign)の状態で気がつかなければなりません。
亜急性期(1-4週間)
脳梗塞部位は低吸収として描出される時期と、等吸収として描出される時期があります。
発症から2〜3週間前後で、血管性浮腫の消退に伴い梗塞部位が周囲の正常脳実質と同じくらいの濃度を示し、あたかも正常のように見えます。
これをfogging effectと言います。
この時期を挟むように、脳梗塞部位は低吸収として描出されます。
慢性期(1ヶ月~)
脳脊髄液と同じ程度の低吸収域となり、上の症例のようにいわゆる古い梗塞(陳旧性脳梗塞)と分類されるようになります。
陳旧性脳梗塞とは?CT所見と意味
陳旧性脳梗塞とは、発症から時間がたって落ち着いた古い脳梗塞のことです。CTでは次のように見えます。
- 脳脊髄液(髄液)と同じくらい黒い低吸収域になる
- 脳がやせて、となりの脳溝や脳室が引っぱられるように広がる(むくみではなく、組織が減った変化)
- 基底核や視床、大脳白質の小さな丸い黒い点はラクナ梗塞(細い血管の梗塞)の古いもの、脳の表面を含む広いくさび形の黒い部分は太い血管の古い梗塞
小さな黒い点は、古い梗塞のほかに血管周囲腔(脳の中の血管のまわりのすき間)が広がったものとも似ているため、形や場所、MRIのFLAIR像も合わせて区別します。
症状がないのに画像で見つかる脳梗塞(無症候性脳梗塞、いわゆる隠れ脳梗塞)は、MRIでは健康な高齢者の約20%に見つかり、多くはラクナ梗塞です。こうした梗塞があると、その後の脳卒中や認知症のリスクが2倍以上になると報告されています(Vermeer 2007)。
脳梗塞のCTでよくある疑問(Q&A)
Q1. 陳旧性脳梗塞と言われましたが、症状はありません。治療は必要ですか?
古い梗塞そのものは元に戻りませんが、次の脳梗塞を防ぐことが大切です。高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動・喫煙などの危険因子があるかどうかを確認し、かかりつけ医や脳神経内科で相談してください。
Q2. CTで「異常なし」なら脳梗塞は否定できますか?
否定できません。発症早期や小さな梗塞はCTに写らないことが多いため、症状から脳梗塞が疑われるときはMRI(拡散強調像)で確認します。
Q3. fogging effect(フォギング効果)とは何ですか?
発症から2〜3週間ごろ、梗塞の部分が一時的に周りの脳と同じ濃さに戻り、CTで見えにくくなる現象です(Müller 2026)。この時期のCTだけで判断すると梗塞を見落とすことがあります。
Q4. 視床や基底核の小さな黒い点は何ですか?
多くは古いラクナ梗塞ですが、血管周囲腔の拡大でも似た見え方になります。大きさや形、MRIの所見を合わせて判断します。
Q5. 朝起きたら半身が動かないとき、CTで梗塞がなければ治療できませんか?
CTで見えなくても治療の対象になることがあります。発症時刻がわからないときは、MRIでDWI-FLAIRミスマッチがあるか、灌流画像で助かる脳が残っているかを調べ、血栓溶解療法や血栓回収療法の可否を考えます(Thomalla 2018、Ma 2019)。すぐに救急車を呼んでください。
Q6. DWI-FLAIRミスマッチとは何ですか?
DWIで白い梗塞が、FLAIRでは同じ場所に白く出ていない状態です。FLAIRに変化が出る前の、発症からおよそ4.5時間以内の梗塞を示す目印とされています(Thomalla 2018)。
最後に
CTで脳梗塞はわかることもあるが、多くはわからない。
というのが正しい表現になります。
特に新しい、急性期の脳梗塞で、小さな脳梗塞ほどCTではわからないことが多いのです。
CTでわかるような脳梗塞は相当範囲が広いことが多く、明らかな症状として医師の目にもわかることが多いのです。
一方小さなラクナ梗塞といわれる梗塞では、症状があっても、CTではわからないことがほとんどです。
もしあなたが、普段と違う、何かおかしい、症状があると思えば、MRIを設備した施設を受診することも考慮してください。
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