先に結論:外傷性横隔膜損傷
- 外傷性横隔膜損傷は腹部の強い打撲(交通事故など)で腹圧が急に上がって起こり、左側に多いです(右は肝臓が守るため。CTでの検討では左約7割・右約3割)
- 胸部X線で胃泡や腸管が横隔膜より上にある・横隔膜の輪郭が不明瞭なら疑い、CTの冠状断・矢状断で横隔膜の途絶・臓器の脱出(collar sign・dependent viscera sign)を確認します
- 脱出がない小さな損傷や右側の損傷は見逃しやすく、後から横隔膜ヘルニアとして見つかることもあるため、多方向の再構成画像で丁寧に確認します
横隔膜破裂とは
横隔膜は胸とお腹を仕切るドーム状の筋肉です。交通事故などで腹部を強く打ったり、刃物などで刺されたりして横隔膜が裂けた状態を横隔膜損傷(破裂)と呼び、裂け目からお腹の臓器が胸の中へ出ると外傷性横隔膜ヘルニアになります。強い打撲のあとに息苦しさや腹痛が続くときは、すぐに医療機関を受診してください。
横隔膜損傷(破裂)
・鈍的外傷患者の0.8〜8%に見られると報告されている。
・通常腹部鈍的外傷に伴って起こる。
・腹腔内圧の上昇により、横隔膜に高い圧力がかかり、横隔膜が破裂する。
・腹腔内臓器が胸腔内に脱出し、緊急度が高い疾患。
・左側横隔膜破裂が多い(CTで診断された43例では左72%・右28%)。右側は肝臓で保護されているから。
・右側横隔膜破裂の診断は難しい事が多い。またヘルニアのない横隔膜破裂の診断も難しいことが多い。
▶︎日本外傷学会臓器損傷分類2008(横隔膜損傷)(日本外傷学会臓器損傷分類委員会 2008)
- Ⅰ型:挫傷(diaphragmatic contusion)
- Ⅱ型:非全層性裂傷(non-transmural laceration)
- Ⅲ型:全層性裂傷 (transmural laceration)
a:横隔膜ヘルニアを伴なわない。(without diaphragmatic hernia)
b:横隔膜ヘルニアを伴う。(with diaphragmatic hernia)
Ⅲ型では損傷部の長径を、2cm未満(R1)・2〜10cm未満(R2)・10cm以上(R3)として記載します。
横隔膜損傷(破裂)の画像所見
・胸部単純X線にて、胃泡が横隔膜よりも上方へ移動、他の消化管も上方偏位することが特徴。現在はMDCT(冠状断・矢状断の再構成)が診断の標準で、横隔膜の断裂そのものを示す直接所見と、collar signなどの間接所見を組み合わせて判断する。単一のサインで全例を診断できるわけではないため、すべての所見を総合して評価する。鈍的横隔膜破裂43例のCT検討では、dependent viscera sign・腹部臓器の脱出・横隔膜の肥厚・片側横隔膜の4cm以上の挙上がそれぞれ6割以上にみられた一方、横隔膜の途絶と胃の脱出はほぼ左側破裂に限られていた。右側では途絶が見えにくいため、これらの間接所見を手がかりにする。
| CT所見 | 内容 | 報告されている頻度 |
|---|---|---|
| 横隔膜の途絶(discontinuous diaphragm sign) | 横隔膜の線が途切れる直接所見 | 手術で確認された23例の95.7%(Panda 2014) |
| 横隔膜の肥厚 | 裂けた断端が厚く見える | 同69.6%(Panda 2014) |
| dependent viscera sign | 背側の肋骨に肝臓上部(右)や胃・腸(左)が直接接する | 左側破裂の100%・右側の83%、全体で90%を検出(Bergin 2001) |
| collar sign | 脱出した臓器が裂け目でくびれる | 鈍的外傷の例だけにみられた(Panda 2014) |
症例 20歳代男性 銃創

引用:Radiopaedia(Traumatic diaphragmatic rupture)
CT冠状断像で、左の横隔膜が途切れており(赤矢頭が裂けた横隔膜の断端)、その裂け目を通って腸管(青矢印)が胸腔内へ脱出しています。左胸腔はガスを含む脱出した消化管で占められ、左肺は虚脱し、縦隔は右へ偏位しています。
あわせて読みたい:先天性横隔膜ヘルニアの症状、合併症、画像診断
参考文献
- Desir A, Ghaye B. CT of blunt diaphragmatic rupture. Radiographics. 2012;32(2):477-98. PubMed
- Iochum S, Ludig T, Walter F, et al. Imaging of diaphragmatic injury: a diagnostic challenge? Radiographics. 2002;22 Spec No:S103-16. PubMed
- Chen HW, Wong YC, Wang LJ, et al. Computed tomography in left-sided and right-sided blunt diaphragmatic rupture: experience with 43 patients. Clin Radiol. 2010;65(3):206-12. PubMed
- Gao JM, Du DY, Li H, et al. Traumatic diaphragmatic rupture with combined thoracoabdominal injuries: Difference between penetrating and blunt injuries. Chin J Traumatol. 2015;18(1):21-6. PubMed
- Bergin D, Ennis R, Keogh C, et al. The “dependent viscera” sign in CT diagnosis of blunt traumatic diaphragmatic rupture. AJR Am J Roentgenol. 2001;177(5):1137-40. PubMed
- Panda A, Kumar A, Gamanagatti S, et al. Traumatic diaphragmatic injury: a review of CT signs and the difference between blunt and penetrating injury. Diagn Interv Radiol. 2014;20(2):121-8. PubMed
- 日本外傷学会臓器損傷分類委員会. 横隔膜損傷分類2008(日本外傷学会). 日外傷会誌. 2008;22:271. 日本外傷学会(PDF)
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
