血管周囲腔(Perivascular space)とは?
- 髄質動脈の血管拍動の影響により、周囲が拡大したものを血管周囲腔という。
- 血管拍動の影響の他、脳血液関門の障害に伴って血管透過性が亢進したり、アミロイドβタンパクが大脳皮質や軟髄膜の動脈壁に沈着して間質液の還流路が遮断され、その上流の血管周囲腔に間質液が貯留するためとも考えられている。
- 大脳白質(前頭葉、頭頂葉)、基底核、海馬、中脳に好発する。
- 正常変異であり、脳梗塞との鑑別が問題になることがある。
血管周囲腔のMRI画像所見
- 辺縁明瞭、整形で均質、通常大きさが3〜5mm未満。
- 穿通動脈や髄質動静脈の走行に沿う。
- 穿通枝領域などでは、時に内部に血管構造を確認することができる。
- T2強調像で高信号、T1強調像で等〜低信号、FLAIRで等〜低信号で、辺縁に高信号を伴わない。
- 血管周囲腔の拡大が集簇して、基底核全体にびまん性に淡い高信号=etat cribleと表現される。
- 稀に多房性の病変を含んで多発性に著明に拡大することがあり、嚢胞性腫瘤との鑑別を要することがある。
- 海馬では側脳室下角内側の歯状回とアンモン角CA1の間に好発する。しばしば多発性、両側性。
症例 60歳代女性 スクリーニング
左基底核下部にT2強調像で類楕円形の高信号あり。
MRAの元画像で内部に血管の走行を認めています。
典型的な血管周囲腔の所見です。
内部に血管が走行している様子を動画でチェックする。
ラクナ梗塞との鑑別方法
ラクナの場合、辺縁にFLAIRやT2強調像でグリオーシスを反映した信号上昇あり。
血管周囲腔ではなし。
また、血管周囲腔は被殻の下1/3に分布、ラクナ梗塞は上2/3に分布することが多い。
基底核下1/3、特に前交連外側の被殻外側下方では、5mmを超えることが少なくない。
※神経膠症(グリオーシス)とは?→外傷や虚血、感染などによって生じるグリア細胞の反応
症例 80歳代女性 陳旧性脳梗塞と血管周囲腔が同じスライスである症例。
血管周囲腔の鑑別診断
ラクナ梗塞 | 白質病変 | 血管周囲腔 | |
T1強調像 | 低信号 | 等〜低信号 | 等〜低信号 |
T2強調像 | 明瞭な高信号 | 高信号 | 高信号 |
FLAIR | 等〜高信号時に、低信号 | 明瞭な高信号 | 等〜低信号 |
周囲 | T2WI,FLAIRにて不規則な高信号 (グリオーシスを反映) |
周囲に高信号を伴わない。 | |
その他 | 最大径3mm〜15mm | 3mm以下 |
T2強調像でちょっとでも高信号を見ると、すぐに梗塞とレポートしてはいけません。FLAIRで高信号で、T1強調像で明瞭な低信号でない場合はleukoaraiosisとしましょう。
放線冠や半卵円中心などで血管周囲腔が目立つ症例(70代女性)
動画でチェックする
動画で学ぶetat crible
遺残海馬溝が見える症例
海馬では側脳室下角内側の歯状回とアンモン角CA1の間に好発する。しばしば多発性、両側性。=遺残海馬溝
動画で学ぶ海馬溝遺残
血管周囲腔拡大をきたす疾患1)
- ムコ多糖症
- 伊藤白斑
- Lowe症候群
- クリプトコッカスなど
関連記事:大脳皮質下に嚢胞性病変が集簇してみられるMVNTとは?
参考文献:
FLAIRでは同じ様に周りがLowでもT2*を撮ってみるとmicrobleedsだと分かることもあるよー
Mr.ひろしのMR様
ありがとうございます。おっしゃる通りです。
いつもお世話になっております。
海馬溝遺残と同様の位置の側脳室内側に有る血管周囲腔の、MRA元画像が無く内部に動脈が見えない時の、鑑別ポイントをご教示いただきたいです。この違いがよく分かりません。
MRA元画像などで内部の動脈はむしろ見えないことの方が多いです。
側脳室内側の血管周囲腔は場所から判断します。
ご回答くださりありがとうございます!