肝臓に小さな嚢胞のような病変が多数見られる場合、鑑別として挙がるものの一つに胆管性過誤腫(bile duct hamartoma)があります。
胆管性過誤腫は、von Meyenburg complex(フォン・マイエンブルグ複合体)とも呼ばれる良性の胆管系病変です。
多くは無症状で、腹部超音波検査、CT、MRIなどで偶然発見されます。画像上は、肝内に小さな結節・嚢胞性病変が多数散在して見えるため、特に悪性腫瘍の既往がある患者さんでは、多発肝転移との鑑別が問題になることがあります。
今回は、肝臓の胆管性過誤腫について、病態、画像所見、転移との鑑別ポイントを中心にまとめます。
先に結論:胆管過誤腫とは
- 胆管のもとになる組織が、生まれつき肝臓の中に小さく残った良性のもの(von Meyenburg complex)
- 数mm程度の小さな袋状の影が、肝臓の中にたくさん散らばって見えるのが特徴
- 症状はなく、治療は不要です
- 注意: 見た目が多発肝転移に似ることがあり、特にがんの治療歴がある方はMRI(T2強調像で強く白い・MRCPで胆管とつながっていない)で区別します
胆管性過誤腫(bile duct hamartoma)とは?
- 胆管性過誤腫は、von Meyenburg complexとも呼ばれます。
- 胎生期の胆管板(ductal plate)の発生異常、あるいは小葉間胆管の遺残に関連して生じると考えられています。
- 組織学的には、線維性間質の中に拡張した胆管様構造が集簇する良性病変です。
- 病変内には胆汁様物質を含むことがあります。
- 通常、胆道系とは交通しない小さな嚢胞性病変として見られます。
- 大きさは0.05〜1.5cmと幅がありますが(Lanser 2023)、数mm大の微小病変が多発することが多いです。
- 肝全体にびまん性に分布することがあります。
- 無症状で、画像検査や剖検で偶然発見されることが多いです。
剖検での頻度は報告により幅がありますが、おおむね0.6〜5.6%程度とされ、画像診断では約1%とされています(Sheikh 2022)。
胆管性過誤腫で重要な画像診断上のポイント
胆管性過誤腫は良性病変ですが、画像上は肝内に多発する小結節として見えるため、多発肝転移、肝膿瘍、微小嚢胞性病変、胆管周囲嚢胞、Caroli病などとの鑑別が必要になることがあります。
特に重要なのは、以下の3点です。
- 病変が肝全体にびまん性・多発性に分布すること
- MRI T2強調像で著明な高信号を示すこと
- MRCPで胆管との交通を認めないこと
胆管性過誤腫の超音波所見
腹部超音波検査では、胆管性過誤腫は肝内に多発する小結節として描出されます。
- 高エコー結節として見えることがあります。
- 低エコー結節として見えることもあります。
- 内部に小嚢胞成分を反映して、混在したエコーパターンを示すことがあります。
- comet-tail artifactやring-down artifactを伴うことがあります。
超音波のみでは、転移性肝腫瘍や小膿瘍との鑑別が難しいことがあります。そのため、肝内に多数の小結節を認めた場合には、CTやMRIでの追加評価が有用です。
胆管性過誤腫のCT所見
CTでは、胆管性過誤腫は肝内に多発する小さな低吸収域として描出されます。
- 多数の嚢胞状小病変として見られます。
- 病変は数mm大のことが多いです。
- 造影CTでは、周囲肝実質が造影されることで病変がより明瞭になることがあります。
- 典型例では明らかな充実性増強効果を認めません。
- 通常の単純肝嚢胞と比べて、辺縁がやや不明瞭、あるいは分葉状に見えることがあります。
CTでは小病変が多発しているため、多発肝転移のように見えることがあります。しかし胆管性過誤腫では、病変が非常に小さく、サイズが比較的そろい、肝内全体に散在する点が鑑別の手がかりになります。
胆管性過誤腫のMRI所見
胆管性過誤腫の診断では、MRIが非常に有用です。
- T1強調像では低信号を示すことが多いです。
- T2強調像では著明な高信号を示します。
- 小さな嚢胞性病変が肝内に多数散在するように見えます。
- 造影MRIでは、典型例では明らかな充実性増強効果を認めません。ただし、病理で確認された多発胆管過誤腫11例のMRI検討では、10例(91%)に嚢胞内へ突出する小さな壁在結節を認め、その大半で造影効果がみられました。この結節は線維性隔壁からなるポリープ状の突出に対応しており、知っておくと転移などとの誤診を避ける手がかりになります。
- 拡散強調像では目立つことがありますが、T2 shine-throughの影響も考慮する必要があります。
胆管性過誤腫はT2強調像で小さな高信号スポットが多数見られることが特徴です。肝全体に小さな高信号病変が散在するため、いわゆる「starry sky」あるいは「starry liver」のように表現されることもあります。
MRCPでのポイント:胆管との交通がない
MRCPでは、胆管性過誤腫は肝内に多数の小さな嚢胞性病変として描出されます。
重要なのは、これらの小嚢胞性病変が胆管と交通しない点です。
胆管性過誤腫は胆管系由来の病変ですが、通常は胆道系と交通しません。このため、MRCPで胆管拡張と連続して見えるCaroli病などとは鑑別しやすくなります。
症例 70歳代女性 スクリーニング

左側:腹部超音波検査で肝臓内に多数の高エコー結節あり。また嚢胞を疑う低エコー結節あり。
右側:MRIのT2強調画像の画像です。
肝内には多数のT2強調画像高信号結節あり。
サイズの大きなものは嚢胞を疑いますが小さいものは胆管性過誤腫を疑う所見です。
症例 70歳代男性 エコーにて微小な高エコーを多数認めた。

肝臓には多数のT2WI高信号結節を認めており、胆管性過誤腫を疑う所見です。
症例 80歳代男性

肝臓には多数のT2WI高信号結節を認めており、胆管性過誤腫を疑う所見です。
胆管性過誤腫と多発肝転移の鑑別
胆管性過誤腫で最も問題になる鑑別は、多発肝転移です。
特に、悪性腫瘍の既往がある患者さんで肝内に多発する小結節を認めると、まず転移を疑いたくなります。しかし、胆管性過誤腫には以下のような特徴があります。
| 項目 | 胆管性過誤腫 | 多発肝転移 |
|---|---|---|
| 大きさ | 数mm大が多く、比較的そろう | 大小不同になりやすい |
| 分布 | 肝全体にびまん性、多発性 | 不均一に分布することが多い |
| T2強調像 | 嚢胞様の著明な高信号 | 腫瘍性病変としての信号を示し、嚢胞様とは限らない |
| 造影効果 | 典型例では明らかな充実性増強効果に乏しい | 原発巣に応じて辺縁増強や内部増強を示すことがある |
| 経時変化 | 基本的に安定している | 増大、新出、数の増加を示すことがある |
胆管性過誤腫では、被膜下を含めた肝内全域に、門脈域に沿うような小病変が多数分布することがあり、この分布が鑑別の一助になります。
一方で、悪性腫瘍の既往がある場合や、病変に増大傾向・充実性増強効果・腫瘍マーカー上昇などがある場合には、安易に良性と判断せず、経過観察や追加検査が必要です。
鑑別に挙がる疾患
胆管性過誤腫と鑑別すべき疾患として、以下が挙げられます。
- 多発肝転移
- 多発肝嚢胞
- 胆管周囲嚢胞(peribiliary cyst)
- Caroli病
- 肝膿瘍、微小膿瘍
- 肝内胆管癌を含む悪性病変
多発肝嚢胞との鑑別
多発肝嚢胞では、比較的大きな嚢胞を複数認めることが多く、単純嚢胞としての形態を示します。一方、胆管性過誤腫では数mm大の微小嚢胞性病変が肝内に多数散在します。
胆管周囲嚢胞との鑑別
胆管周囲嚢胞は、肝門部や門脈域、胆管周囲に沿って見られる嚢胞性病変です。胆管性過誤腫のように肝内全体にびまん性に散在するというより、胆管周囲・肝門部優位の分布を示す点が鑑別に役立ちます。
Caroli病との鑑別
Caroli病では、肝内胆管の嚢状拡張を認め、MRCPで胆管との交通が確認されます。胆管性過誤腫では、MRCPで胆管との明らかな交通を認めない点が重要です。
成人型多嚢胞腎との関連
胆管性過誤腫は、常染色体顕性多発性嚢胞腎(ADPKD、旧称:成人型多発性嚢胞腎)や多発肝嚢胞、先天性肝線維症など、ductal plate malformationに関連する病態と合併することがあります。
そのため、肝内に胆管性過誤腫を疑う多発小病変を認めた場合には、腎嚢胞の有無や多嚢胞腎の合併にも注意して画像を確認するとよいです。
悪性化はあるのか?
胆管性過誤腫は基本的には良性病変であり、多くの場合、治療を必要としません。
ただし、胆管性過誤腫を背景に胆管癌や肝細胞癌が発生したとする症例報告があります。そのため、以下のような場合には注意が必要です。
- 病変が明らかに増大している場合
- 典型例より明らかに大きな病変を認める場合
- 充実成分や壁在結節を疑う場合
- 造影効果が目立つ場合
- CA19-9など腫瘍マーカーの上昇を伴う場合
- 体重減少、黄疸、発熱など臨床症状を伴う場合
典型的な胆管性過誤腫で、画像上安定している場合には過度な精査は不要ですが、非典型所見を伴う場合にはMRI、造影検査、経過観察、場合によっては病理学的評価を検討します。
胆管過誤腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 原因は何ですか?
A. 胎児期に胆管ができる過程(胆管板)がうまく整理されずに残ったものと考えられています。多くは単独で見つかりますが、多発性嚢胞腎・多発肝嚢胞などに合併することがあります。
Q. 治療や定期的な検査は必要ですか?
A. 典型的な胆管過誤腫は治療の必要がありません。139例を集めた系統的レビューでも治療の指針はなく、体重減少や病変の増大などの「危険なサイン」がある場合に精査・生検を考えるとされています(Sheikh 2022)。がんの治療中・治療後の方は、主治医の方針に沿って経過をみます。
Q. エコーで胆道気腫(胆道の空気)と紛らわしいことはありますか?
A. どちらも強く白い点とコメット様の多重反射を伴うことがあります(Zheng 2005)。胆道気腫は胆道の手術や内視鏡治療のあとに多く、肝門部寄りに門脈に沿った線状の高エコーとして見え、体の向きで位置が変わることがあります。胆管過誤腫は肝臓全体に散らばる小さな結節で、位置は変わりません。迷うときはCTで空気かどうかを確かめます。
※健診で指摘されて心配なときや、腹痛・発熱・黄疸などの症状があるときは、医療機関で相談してください。
参考文献
- Lanser HC, Puckett Y. Biliary Duct Hamartoma. StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; updated 2023. PubMed
- Sheikh AAE, Nguyen AP, Leyba K, et al. Biliary Duct Hamartomas: A Systematic Review. Cureus. 2022;14(5):e25361. PubMed
- Lung PF, Jaffer OS, Akbar N, et al. Appearances of von meyenburg complex on cross sectional imaging. J Clin Imaging Sci. 2013;3:22. PubMed
- Lev-Toaff AS, Bach AM, Wechsler RJ, et al. The radiologic and pathologic spectrum of biliary hamartomas. AJR Am J Roentgenol. 1995;165(2):309-13. PubMed
- Zheng RQ, Zhang B, Kudo M, et al. Imaging findings of biliary hamartomas. World J Gastroenterol. 2005;11(40):6354-9. PubMed
- Sato S, Watanabe H, Asano T, et al. Biliary hamartomas (von Meyenburg complex) complicated with microscopic polyangiitis. Mod Rheumatol. 2013;23(3):611-3. PubMed
- Röcken C, Pross M, Brucks U, et al. Cholangiocarcinoma occurring in a liver with multiple bile duct hamartomas (von Meyenburg complexes). Arch Pathol Lab Med. 2000;124(11):1704-6. PubMed
- Tohmé-Noun C, Cazals D, Noun R, et al. Multiple biliary hamartomas: magnetic resonance features with histopathologic correlation. Eur Radiol. 2008;18(3):493-499. PubMed
- Mortelé KJ, Ros PR. Cystic focal liver lesions in the adult: differential CT and MR imaging features. Radiographics. 2001;21(4):895-910. PubMed
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完敗です。むかし、胆道排泄造影剤を使用して、多発性肝嚢胞をなんたら症候群と書いてあったような気がしてますがナニ症候群だったか思い出せません。これのことでしたか?エコーでは無気肺様でしたかね?
転移性の肝腫瘍も胆道排泄の造影剤で意外と見えると思ってました。