脳梗塞は一般的にMRIで診断しますが、CTが最初に撮られる施設がまだまだ多く、CTしかないという施設も多いというのが現状です。
CTで脳梗塞を否定することはできませんが、脳梗塞の初期像を捉えることができることがあります。
今回は、その初期像=早期虚血サイン、いわゆるearly CT signといわれるCTで見ることができる脳梗塞のサインについてまとめました。
先に結論:early CT sign(早期虚血サイン)とは
- 脳梗塞は発症直後のCTではわかりにくいですが、発症数時間でも見えることがあるわずかな変化をearly CT signと呼びます。代表的なのは、島皮質やレンズ核(被殻など)の輪郭がぼやける(灰白質と白質の境目が不明瞭)、脳溝が浅くなる、中大脳動脈が白く見える(hyperdense MCA sign:血栓)です
- 中大脳動脈領域の変化の広がりはASPECTS(10点から変化のある領域を引く)で点数化し、血栓溶解療法(t-PA)や血管内治療(血栓回収)の適応を判断する材料になります。点数が低い(変化が広い)ほど出血や転帰不良のリスクが高くなります
- hyperdense MCA signは、詰まった血栓のために中大脳動脈が反対側やほかの血管より白く見える所見です。動脈硬化の石灰化や、血液が濃い(ヘマトクリットが高い)ときの見かけ上の高吸収と区別して読みます
- CTで異常がなくても脳梗塞は否定できないため、疑えばMRI(拡散強調像)やCTAで確認します
※急な手足のまひ・ろれつが回らない・顔のゆがみがあれば、すぐに救急車を呼んでください。
early CT sign(早期虚血sign)とは?
CTでは脳梗塞は発症から時間がたったものはわかりやすいのですが、発症して間もないものはなかなかわかりません。
ただし、発症数時間でCTでも脳梗塞がわかることがあります。これを示唆する所見をearly CT signといいます。
特徴的な部位と所見を覚えましょう。
・CT上、正常脳実質では皮質とレンズ核(被殻、淡蒼球=深部灰白質)は白質よりも常に少しだけhigh densityとして認識される。
・early CT signとは、動脈閉塞による虚血性変化によりこの関係がはっきりしなくなった所見である。
・頭蓋内主幹動脈のうち、最も脳梗塞が多いのはMCA領域。血栓溶解療法の対象となりやすい血管MCA領域はVA・BA系の領域に比べて骨からのartifactが少なく読影しやすい。
- 発症6時間以内のCTで、レンズ核を含む中大脳動脈・内頸動脈領域の塞栓性梗塞25例中23例(92%)に早期所見を認めたとの報告がある(Tomura 1988)。
- MCA領域で障害されやすい部位&所見の検出されやすい部位=島皮質&レンズ核
- early CT signはこういうareaをはじめとする脳実質での淡いlow densityのこと。
MCA領域以外のearly CT signを検出するのは非常に難しいです。
後に紹介するASPECTsでもMCA領域のearly CT signを点数化するものです。
ですので、とにかくMCA領域をまずはしっかり見極められるようにして、他の部位はわかればラッキー程度と認識して読影しましょう。
early CT signのチェックポイント
①皮質・白質の境界消失(皮髄境界消失) (loss of gray-white matter differentiation)
※島皮質はMCAが閉塞した場合、ACAとPCAからのcollateralから最も遠く、分水嶺となる。そのため、この部位の皮髄境界消失を特に、「loss of the insular ribbon」と呼ぶ。また、表示Window幅を十分狭くしないと皮髄境界は明瞭とならない。
②Sylvius裂の狭小化、脳溝の狭小化・消失(effacement of the cortical sulci)
③レンズ核の不明瞭化(obscuration of the lentiform nucleus)
④hyperdense MCA sign(MCAにひっかかった塞栓性血栓による所見)
- どの血管と比較しても高濃度
- 石灰化ではない。
early CT signの4つの所見 一覧
| 所見 | CTでの見え方 | 意味・読むときのコツ |
|---|---|---|
| 皮髄境界の消失(島皮質のloss of the insular ribbon) | 皮質(灰白質)と白質の濃さの差がなくなり、境目がぼやける | 虚血によるむくみ(細胞性浮腫)で灰白質の濃度が下がった状態。左右を見比べ、表示Window幅を狭くして見る |
| レンズ核の不明瞭化 | 被殻・淡蒼球の輪郭がぼやけて、周りの白質と区別しにくくなる | MCAの穿通枝領域の虚血。島皮質と並んで早く出やすい部位 |
| 脳溝・Sylvius裂の狭小化 | 病側の脳溝が浅く・細くなり、反対側より見えにくい | 脳実質のむくみで脳溝が押しつぶされた状態。高齢者では左右差で判断する |
| hyperdense MCA sign | 中大脳動脈(M1)が反対側やほかの血管より白く見える | 血管の中の血栓そのものを見ている。脳実質の変化ではなく、閉塞血管の手がかり |
hyperdense MCA signとは?石灰化・血液の濃さとの見分け方
- hyperdense MCA signは、中大脳動脈の中に詰まった新しい血栓が、周りの血液より白く(高吸収に)見える所見です。Sylvius裂の中の枝(M2など)が点状に白く見えるものはMCA dot signと呼ばれます。
- ただし、白く見える中大脳動脈がいつも閉塞を意味するわけではありません。片側または両側のM1が白く見えた13例の検討では、片側の高吸収MCAが臨床的な脳梗塞と同じ側にあった例はなく、これらの患者は対照群よりヘマトクリットが高く、高血圧・糖尿病も多かったと報告されています(Rauch 1993)。血液が濃い・血管壁の石灰化でも白く見えることがあるため、左右差があるか・症状のある側かで判断します。
- 目で見る判定にCT値の測定を加えると見逃しが減るとの報告があり、MCA閉塞の検出は目視だけで感度63%・特異度91%、目視とCT値測定(42.5HU超)の組み合わせで感度75%・特異度78%でした(Ernst 2014)。
- 石灰化は動脈の壁に沿って非常に高い濃度で見え、両側性・多発性のことが多いのに対し、血栓は血管の内腔に沿って伸びる形で片側に見えます。迷うときはCTAで確認します。
関連記事)脳出血のCT所見の経時的変化とCT値の関係(石灰化との鑑別)
※hyperdense MCA signは広義のearly CT signに入れるが、血栓溶解療法の決定に影響は与えない。
脳の正常解剖は、頭部画像診断ツールでチェックください。
症例 動画で学ぶearly CT sign
まず日本ではまだまだCT firstですから、早期脳梗塞がCTでわかれば、MRIを続けて撮影しようと持って行けます。
また、このearly CT signで梗塞範囲を評価することが、治療に繋がります。
血栓溶解療法の前に、頭部CTで確認すること
血栓溶解療法を検討する場面で、頭部CT(単純)に求められるのは「脳梗塞を見つけること」よりも、次の3点を短時間で確認することです。
| 確認すること | CTで見るところ | ポイント |
|---|---|---|
| ① 出血がないか | 脳実質内・くも膜下腔・硬膜下など、白く(高吸収に)見える部分 | 脳出血やくも膜下出血では血栓溶解療法は行えません。急性期の出血の検出は、MRIがCTと同程度でした(Chalela 2007) |
| ② 早期虚血変化の広がり | 島皮質・レンズ核・皮髄境界・脳溝(ASPECTSの10領域) | 変化が広いほど、血栓溶解療法に伴う脳実質内血腫のリスクが高くなる(下記) |
| ③ 太い動脈に血栓がないか | hyperdense MCA sign(中大脳動脈の高吸収) | 主幹動脈の閉塞を示す手がかり。迷うときはCTAで確認する |
早期虚血変化の広がりと血栓溶解療法
- 発症6時間以内にrt-PAまたはプラセボに割り付けられた800例のECASS II試験のCTをあとから評価した研究では、ASPECTSが7点以下の231例で、血栓溶解療法に関連した脳実質内血腫(PH1またはPH2)の可能性が「かなり高い」ことが示されました。一方で、90日後の機能予後(mRS 0〜2)に対するrt-PAの効果は、ベースラインのASPECTSで変わりませんでした(Dzialowski 2006)。
- つまり、ASPECTSの点数だけで治療の可否は決まらず、点数が低いほど出血のリスクが高いことを理解したうえで、症状・時間経過・施設の基準に沿って判断されます。
間違えやすいポイント
- CTで早期変化が見えなくても、脳梗塞は否定できません。逆に、軽い変化を過大に読んで、むくみのない古い梗塞や別の疾患と取り違えないようにします。
- hyperdense MCA signは、血液が濃い・石灰化でも白く見えるため、左右差と症状のある側を合わせて判断します(前述のとおり)。
- 脳卒中のような症状を示す別の病気(脳卒中の「そっくりさん」、stroke mimics)もあります。血栓溶解療法を受けた脳梗塞患者のレジストリ(10,436例)では、そっくりさんが429例(4.1%)で、内訳は機能性(30.8%)、片頭痛(17.5%)、てんかん発作(14.2%)が多く、治療後の症候性頭蓋内出血はそっくりさんで少ない(NINDS基準で0.5%対3.9%)結果でした(Keselman 2019)。CTでは出血のほか、腫瘍や硬膜下血腫など、治療方針が変わる病変がないかも見ます。
※ASPECTSの点数のつけ方と治療方針の関係は、このあとの「ASPECTS」の節も参照してください。
1/3MCA rule
- MCA領域の1/3を超えるようなearly CT sign(+)のcaseでは出血のリスクが高いため血栓溶解療法の適応とならない。(1/3MCA rule)
- しかし、MCA領域の1/3という体積を定性的に判断するのも無理があり混乱する。
→いろいろな判断方法があるが、その一つがMELT-Japan基準。
MELT-Japan基準
画像上治療適応
- CTで全く変化なし
- Sylvius裂に限局する軽微なearly CT sign(島皮質、前頭側頭弁蓋部) or/and レンズ核の不鮮明化を示す例
治療非適応
Sylvius裂以外の皮質領域でearly CT signがある例。
ASPECTS(Alberta Stroke Program Early CT Score)
- MCA領域を半定量的に評価する方法。
- レンズ核と視床を通る軸位断
- それより上の断面(側脳室体部レベル)の2スライスでMCA領域を10の領域に分け早期虚血の有無を判断し、スコア化する評価法。
- スライスAで7領域、スライスBで3領域を設定する。

▶基底核レベル(スライスA)
- 中大脳動脈領域前3分の1(M1)
- 中大脳動脈領域中3分の1(M2)
- 中大脳動脈領域後3分の1(M3)
- 島皮質(I)
- 尾状核(C)
- レンズ核(L)
- 内包(IC)
▶側脳室体部レベル(スライスB)
- 中大脳動脈領域前3分の1(M4)
- 中大脳動脈領域中3分の1(M5)
- 中大脳動脈領域後3分の1(M6)
- Early CT signsのある領域を10点満点から減点法で評価する。
- 点数が低い症例ほど、血栓溶解療法後の転帰不良や症候性頭蓋内出血と関連することが報告されている(Barber 2000)。一方、日本のRESCUE-Japan LIMIT試験では、ASPECTS 3〜5の広範な虚血がある主幹動脈閉塞でも、血管内治療群は内科治療群より90日後のmRS 0〜3が多く(31.0% vs 12.7%)、頭蓋内出血は増加しました。2023年には、ASPECTS 3〜5などの広範な虚血を伴う前方循環主幹動脈閉塞(発症24時間以内)を対象としたSELECT2試験で、血栓回収療法群の90日後の機能的自立が20%と内科治療群の7%より多く、中国のANGEL-ASPECT試験でも血管内治療群の転帰が良好でした(症候性頭蓋内出血は6.1% vs 2.7%と増加)。ASPECTSが低いことだけで血管内治療の適応外とは言えなくなっています。
- 点数が低い(減点が多い)症例ほど、中大脳動脈領域の1/3を超えている可能性がある。
※ただしこの1/3という基準は、その後のガイドラインでは取り除かれ、「広範な」早期虚血性変化がある場合は血栓溶解療法は適応とならないとなっている。
参考&引用改変)
・月刊レジデント2009年8月内科医が知っておくべき救急医療 九州医療センター脳血管内科 湧川佳幸氏
early CT signの見つけやすさと意味(Q&A)
Q. early CT signはどのくらいの頻度で見つかり、どのくらい正確に読めるのか?
A. 発症6時間以内のCTを扱った研究の系統的レビューでは、early CT signの頻度は61%、検出の感度は平均66%(20〜87%)、特異度は87%(56〜100%)で、読影者間一致(κ)は0.14〜0.78とばらつきが大きかった。経験で検出は向上したが、症状を知っていても向上しなかった。またearly CT signがあると転帰不良のリスクが高かった(オッズ比3.11)(Wardlaw 2005)。
Q. hyperdense MCA signはどのくらい主幹動脈閉塞を当てられるのか?
A. 1mmの薄いスライスの単純CTでは、主幹動脈閉塞に対する感度67%・特異度82%で、MCA M1閉塞では感度76%、NIHSS 10点超では79%であった(Lim 2018)。5mmの厚いスライスでは感度45%に下がり、薄いスライスやMIP再構成で73%に上がったとの報告もある(Rosskopf 2020)。
Q. 皮髄境界(ひずいきょうかい)とは?
A. 脳の表面の灰白質(皮質)と、その内側の白質との境目のことです。正常のCTでは灰白質が白質よりわずかに白く見えるため境目がわかりますが、脳梗塞の早い段階ではむくみで灰白質の濃度が下がり、この境目が見えにくくなります(皮髄境界の消失)。島皮質やレンズ核で特に目立ちます。
Q. ASPECTSやearly CT signの読影はどう練習すればよいですか?
A. ①表示Window幅を狭くして灰白質と白質の差を強調する、②左右を見比べる、③ASPECTSの2つの断面(基底核レベルと側脳室体部レベル)で10領域を順番に確認する、の3点を毎回同じ手順で行うのが基本です。発症6時間以内のMCA領域脳梗塞21例と対照9例の検討では、標準の表示条件での検出感度57%が、Window幅と中心を調整して見ることで71%に上がり、特異度は落ちなかったと報告されています(Lev 1999)。この記事の動画やキー画像のように、後日のMRIや経過CTで梗塞が確定した症例で答え合わせをするのが上達の近道です。
Q. 血栓溶解療法の前の頭部CTでは、何を確認しますか?
A. 出血がないこと、早期虚血変化の広がり(ASPECTSなど)、太い動脈の高吸収(hyperdense MCA sign)の3点が基本です。急性期の出血の検出はCTもMRIも同程度でした(Chalela 2007)。ASPECTSが7点以下では血栓溶解療法に伴う脳実質内血腫が増える一方、機能予後に対するrt-PAの効果はASPECTSで変わらなかったという解析があります(Dzialowski 2006)。
Q. 頭部CTが「異常なし」なら、脳梗塞ではないのですか?
A. いいえ。発症早期のCTでは、早期虚血変化を検出する感度は平均66%でした(Wardlaw 2005、前掲)。発症早期の脳梗塞は、MRIで見つかる割合がCTより高く、疑う場合はMRI(拡散強調像)やCTAで確認します(Chalela 2007)。
※急な手足のまひ・ろれつが回らない・顔のゆがみなど、気になる症状があればすぐに医療機関(救急)を受診してください。
あわせて読みたい:頭部CTの低吸収域とは?正中・左右対称性病変の救急鑑別疾患(部位別)、脳梗塞の閉塞動脈の画像診断
参考文献
- Barber PA, Demchuk AM, Zhang J, et al. Validity and reliability of a quantitative computed tomography score in predicting outcome of hyperacute stroke before thrombolytic therapy. ASPECTS Study Group. Alberta Stroke Programme Early CT Score. Lancet. 2000;355(9216):1670-1674. PubMed
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- Sarraj A, Hassan AE, Abraham MG, et al. Trial of Endovascular Thrombectomy for Large Ischemic Strokes. N Engl J Med. 2023;388(14):1259-1271. PubMed
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- Wardlaw JM, Mielke O. Early signs of brain infarction at CT: observer reliability and outcome after thrombolytic treatment–systematic review. Radiology. 2005;235(2):444-53. PubMed
- Lim J, Magarik JA, Froehler MT. The CT-Defined Hyperdense Arterial Sign as a Marker for Acute Intracerebral Large Vessel Occlusion. J Neuroimaging. 2018;28(2):212-216. PubMed
- Rosskopf J, Kloth C, Dreyhaupt J, et al. Thin Slices and Maximum Intensity Projection Reconstructions Increase Sensitivity to Hyperdense Middle Cerebral Artery Sign in Acute Ischemic Stroke. Cerebrovasc Dis. 2020;49(4):437-441. PubMed
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- Lev MH, Farkas J, Gemmete JJ, et al. Acute stroke: improved nonenhanced CT detection–benefits of soft-copy interpretation by using variable window width and center level settings. Radiology. 1999;213(1):150-5. PubMed
- Dzialowski I, Hill MD, Coutts SB, et al. Extent of early ischemic changes on computed tomography (CT) before thrombolysis: prognostic value of the Alberta Stroke Program Early CT Score in ECASS II. Stroke. 2006;37(4):973-8. PubMed
- Chalela JA, Kidwell CS, Nentwich LM, et al. Magnetic resonance imaging and computed tomography in emergency assessment of patients with suspected acute stroke: a prospective comparison. Lancet. 2007;369(9558):293-8. PubMed
- Keselman B, Cooray C, Vanhooren G, et al. Intravenous thrombolysis in stroke mimics: results from the SITS International Stroke Thrombolysis Register. Eur J Neurol. 2019;26(8):1091-1097. PubMed
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