心嚢液貯留
- 悪性腫瘍や心膜炎、外傷や解離により貯留をきたす。
- 心室拡張障害や静脈灌流の低下をきたす場合、心タンポナーデと呼ばれる。
- 心タンポナーデでは、Beckの3徴(収縮期血圧低下、頸静脈怒張、心音減弱)を認める。ただし全部揃うのは10%程度と言われる。
- CTでは心外膜下の心膜腔に液体貯留として認められる。心不全や腎不全などでは水に近い濃度を呈するが、解離など出血を伴う場合はCT値が40HU前後と高くなる。
ややこしい心膜の解剖や心嚢液がどこに貯留しやすいかについてはこちらにまとめました。→【保存版】心膜の構造の解剖は?心膜腔とは?イラストでわかりやすく!
症例 60歳代男性 心膜炎による心嚢液貯留
心嚢液が著明に貯留しています。
心膜炎による心嚢液貯留と診断されました。
心嚢水の貯留しやすい部位、しにくい部位
- 心嚢液は、pericardial recessにおいても正常でも少量貯留することがある。少量心嚢液やこれらのrecessに貯留する液体を腫瘤性病変と誤ってはいけない。
- 少量の心嚢液が貯留する場合には、心嚢液は左心室の後壁に接する部分よりも前胸壁下の胸骨直下の部分に最も貯留しやすい。
- また心嚢液は心尖部には最も貯留しにくい。
- このことは、心嚢液が重力依存性に左室後壁部に最も貯留しやすいとする予測に反する。心拍動や呼吸運動の影響で生じる心膜腔内圧の変化などにより、前胸壁下に最も早く貯留しやすいものと考えられている。
(Radiology 162:171-174,1987)