先に結論:真珠腫性中耳炎とCT・MRI

  • 真珠腫は、鼓膜の皮膚(角化上皮)が中耳に入り込んで袋状に増えていく病気で、まわりの骨を少しずつ壊します。耳だれ・難聴が続き、進むとめまい(迷路瘻孔)・顔面神経まひ・髄膜炎などを起こすため、多くは手術が必要です
  • 多いのは鼓膜の上の部分から入る上鼓室型(弛緩部型)で、CTではPrussak腔(上鼓室の外側)の軟部陰影と、scutumや耳小骨の骨破壊が特徴です
  • CTは骨の壊れ方と広がりの評価に優れ、MRIの拡散強調像(non-EPI)では真珠腫が白く(高信号)写るため、術後の再発の確認や中耳炎・肉芽との区別に役立ちます

※耳だれ・聞こえにくさが続くときは、耳鼻咽喉科を受診してください。

真珠腫性中耳炎の分類は?

Cholesteatoma classification

真珠腫は先天性、後天性にまず分けられる。

後天性は、

  • 上鼓室型(弛緩部)真珠腫
  • 癒着型(緊張部)真珠腫

という一次性真珠腫と、二次性真珠腫(鼓膜の穿孔縁より鼓膜または外耳道上皮が中耳に侵入して形成される真珠腫)にさらに分けられます。

臨床的に重要な真珠腫としては、弛緩部型(上鼓室型)真珠腫と緊張部型真珠腫です。

上鼓室型(弛緩部)真珠腫

Cholesteatoma figure1

上鼓室の耳小骨外側(Prussak腔)にまず真珠腫が形成されます。

Prussak腔(プルサック腔)とは、上鼓室の外側にある小さなすき間で、外側は鼓膜弛緩部(Shrapnell膜)とscutum、内側はツチ骨頸部に囲まれています。冠状断CTで、scutumの先端とツチ骨頸部の間の空気のスペースとして見え、ここが軟部陰影で埋まることが弛緩部型真珠腫の早期所見になります。

鼓膜弛緩部の陥凹(pocket formation,retraction pocket)に伴って発生すると考えられています。

  • 早期:上鼓室外側のPrussak腔を中心とした軟部組織濃度。
  • 進行すると:scutum(上鼓室外側壁の骨の突起)の鈍化・脱灰、ツチ骨・キヌタ骨の上部構造の脱灰、内側への偏位、さらに上鼓室から乳突洞への後方進展を来す。

症例 10歳代 男性

CT findings of Cholesteatoma

右側のPrussak腔から鼓室天蓋にかけて軟部陰影を認めています。

Scutumの鈍化は認められません。

耳鏡所見と合わせて、右上鼓室型(弛緩部)真珠腫と診断されました。

症例 50歳代 男性

cholesteatoma CT findings2

左の鼓膜の肥厚及び、Prussak腔の軟部陰影を認めています。
上鼓室型(弛緩部)真珠腫に矛盾しない所見です。

cholesteatoma CT findings3

右側においてもPrussak腔の軟部陰影を認めています。
鼓室天蓋の軟部陰影。鼓室天蓋の骨は菲薄化〜脱灰を認めています。
上鼓室型(弛緩部)真珠腫に矛盾しない所見です。

耳鏡所見と合わせて、両側の上鼓室型(弛緩部)真珠腫と診断されました。

癒着型(緊張部)真珠腫

Cholesteatoma figure2

鼓膜緊張部が鼓室の岬角に癒着し、後鼓室の顔面神経陥凹近傍にまず真珠腫が形成されることが多いタイプです。

真珠腫性中耳炎の画像所見は?

真珠腫性中耳炎の画像所見で着目すべきポイント

  • 真珠腫の大きさ
  • 進展範囲
  • 骨破壊の程度
  • 鼓室、特に上鼓室のmass
  • 外耳道骨欠損の有無と程度
  • 乳突洞と蜂巣の発育程度
  • 鼓室・乳突洞・乳突蜂巣の病的陰影と含気性
  • 頭蓋底骨破壊の有無
  • 迷路瘻孔の有無
  • 耳管の開存程度

真珠腫の診断では骨変化の評価が重要

  • 耳小骨
  • scutum
  • Prussak腔をはじめとする鼓室壁
  • 乳突洞口
  • 鼓室天蓋
  • 骨迷路
  • 顔面神経管

※真珠腫の内容が自然に排出され、周囲の母膜のみが残る場合がある、CT上は乳突洞削開術後に類似した鼓室壁の変化が認められる。Spontaneous mastoidectomyあるいは、automastoidectomyとよばれている。

中耳炎の種類とCTの違い

「中耳炎のCT」では、中耳に影があることよりも骨が壊れているかどうかが見分けのポイントです。

病気 CTの主な所見 骨の変化
滲出性中耳炎 鼓室・乳突蜂巣の液体(液面形成を伴うことも) なし
急性中耳炎 鼓室・乳突蜂巣の液体や軟部陰影 通常なし(乳突蜂巣の隔壁が壊れると急性乳様突起炎を考える)
慢性中耳炎 鼓膜の穿孔、粘膜の肥厚や肉芽、乳突蜂巣の発育不良・硬化 耳小骨の部分的な吸収はありうるが、塊状の骨破壊は少ない
真珠腫性中耳炎 Prussak腔・上鼓室などの塊状の軟部陰影 scutumの鈍化、耳小骨の破壊・偏位、外側半規管や鼓室天蓋の骨欠損

ただしCTでは軟部陰影の性状(真珠腫か、液体・肉芽か)までは区別できないため、迷うときはMRIの拡散強調像を追加します(Baráth 2011)。

真珠腫における耳小骨

上鼓室型 癒着型
破壊・脱灰 ツチ骨頭部やキヌタ骨体部 キヌタ骨の長脚および豆状突起
偏位 内側へ 外側へ

※耳小骨の偏位は、早期真珠腫の所見として重要である。

真珠腫の主たる合併症

  • 耳小骨の脱灰、破壊
  • 迷路瘻孔および迷路炎
  • 顔面神経麻痺
  • 頭蓋内合併症(髄膜炎、脳炎、脳膿瘍、静脈洞血栓症)

術後の評価

  • 削開腔の含気の評価
  • 耳小骨連鎖の評価
  • 異常軟部組織の有無および性状
  • 顔面神経の状況
  • 内耳の評価

※真珠腫の再発と遺残は区別して考える病態であるが、両者の鑑別が困難な場合も少なくない(特にCTにおいては)。CTは空間分解能に優れ小さな軟部病変も描出できるが、軟部組織の性状は区別できない。術後の遺残・再発の診断にはnon-EPI拡散強調像が有用で、26研究のメタ解析では感度0.91・特異度0.92と高く(Lingam 2017)、second-look手術の代替となりうるかが検討されている。

真珠腫性中耳炎でよくある疑問(Q&A)

Q. 外耳道真珠腫とは何が違うのですか?

A. 外耳道真珠腫は、耳の穴(外耳道)の皮膚の下に角化物がたまり、外耳道の骨の壁(特に下壁や後壁)を削る病気です。CTでは外耳道の骨のくぼみと、その中の軟部陰影が見えます。中耳の真珠腫とは発生する場所が違いますが、進むと中耳や乳突洞へ広がることがあります。

Q. CTだけで真珠腫と診断できますか?

A. CTは小さな軟部病変や骨の壊れ方の評価に優れますが、影が真珠腫なのか液体や肉芽なのかは区別できません(Baráth 2011)。耳の診察(耳鏡所見)と合わせ、必要に応じてnon-EPI拡散強調像で高信号かどうかを確認します(Lingam 2017)。

関連記事:真珠腫性中耳炎におけるMRI拡散強調像(DWI)の有用性

あわせて読みたい:乳様突起炎(乳突蜂巣炎)とは?乳様突起・乳突蜂巣の場所と原因・症状・治療をCT・MRI画像で解説、急性中耳炎の原因・症状・CT画像と治療法を解説

参考文献

  1. Tono T, Sakagami M, Kojima H, et al. Staging and classification criteria for middle ear cholesteatoma proposed by the Japan Otological Society. Auris Nasus Larynx. 2017;44(2):135-40. PubMed
  2. Baráth K, Huber AM, Stämpfli P, et al. Neuroradiology of cholesteatomas. AJNR Am J Neuroradiol. 2011;32(2):221-9. PubMed
  3. Yung M, Tono T, Olszewska E, et al. EAONO/JOS Joint Consensus Statements on the Definitions, Classification and Staging of Middle Ear Cholesteatoma. J Int Adv Otol. 2017;13(1):1-8. PubMed
  4. Lingam RK, Bassett P. A Meta-Analysis on the Diagnostic Performance of Non-Echoplanar Diffusion-Weighted Imaging in Detecting Middle Ear Cholesteatoma: 10 Years On. Otol Neurotol. 2017;38(4):521-528. PubMed

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