激しい耳痛を伴い、子供の場合では高熱が出ることもある急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん)。
よく耳にする病名でもありますが、どのような症状が出て、原因は何なのでしょう?
今回は、急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん、英語表記で「Acute otitis media」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
を図(イラスト)や実際のCT画像を用いてわかりやすくまとめましたので、参考になさってください。
急性中耳炎とは?
中耳に生じた急性の感染症を、急性中耳炎といいます。
中耳に感染が起こるルートとは?
そして、感染症というと、何らかの病原体が原因で起こるものですが、中耳炎の場合、
- 上咽頭→耳管→中耳へ(中から中耳へ至るルート)
- 外耳道→鼓膜→中耳へ(外から中耳へ至るルート)
のいずれかのルートで到達するものですが、急性中耳炎の大半は、上咽頭→耳管経由です。
とくに子供ほど耳管の角度が浅いため、この傾向があります。
つまり、呼吸器症状が出た時に上咽頭で病原菌が増殖しており、これが耳管を通って引き起こされるというわけで、急性上気道炎に続発します。
急性中耳炎の原因は?
ウイルスや細菌感染が原因となりますが
- 肺炎球菌
- インフルエンザ桿菌
- レンサ球菌
- ペニシリン耐性肺炎球菌
- インフルエンザウイルス
- 麻疹ウイルス
- マイコプラズマ
などがあります。
子供の場合は、副鼻腔炎が原因となって起こることが多くあります。
急性中耳炎の症状は?
症状は、
- 激しい耳痛
- 伝音難聴
- 耳鳴り
- 耳漏
- 耳閉塞感
- 高熱
とにかく激しく耳が痛みますが、外耳炎のように引っ張っても痛みは変わりません。
また、子供の場合、高熱を伴うこともありますが、めまいは起こりません。
まだ言葉を話せない乳児の場合は、以下のような症状で気づきます。
- 泣き止まない
- 耳を頻繁に触る
- 熱が出る
- 機嫌が悪い
など、とくにこのような症状がある場合は、中耳炎も疑い耳鏡検査をオススメします。
急性中耳炎の診断は?
鼓膜の観察(耳鏡検査)を行いますが、ガイドラインによると、以下のような際に、診断されます。1)
- 鼓膜の発赤
- 膨隆
- 光錐減弱
- 肥厚
- 水疱形成
- 混濁
- 穿孔
- 中耳腔の貯留液
- 耳漏
- 中耳粘膜浮腫
など。
症例 30歳代男性 左耳漏、耳痛。耳鏡検査で外耳道炎あり。
大人の症例です。
耳鏡検査で左外耳道炎があり、CT検査が施行されました。
CT検査(冠状断像)で左の外耳道〜中耳に壁肥厚・軟部陰影を認めています。
外耳道炎に加えて、左の急性中耳炎を疑う所見です。
この症例の場合、外耳道→中耳炎を合併したと考えられました。
細胞診にて、肺炎球菌(ムコイド型)が検出されました。
肺炎球菌による、左外耳道炎及び中耳炎と診断されました。
抗生物質内服にて軽快しました。
また、急性中耳炎は、軽症から重症と、重症度分類されます。
急性中耳炎の重症度
- 臨床所見(耳痛・不機嫌・発熱は37.5度未満、37.5度〜38.5度、それ以上で分類)
- 鼓膜所見(発赤・膨隆・耳漏・光錐/混濁)
- 年齢条件(2歳未満)
などにより、軽症・中等症・重症に分類されます。2)
急性中耳炎の治療法は?
- 分泌物の吸引
- 鼓室洗浄
- 解熱鎮痛薬の内服
- 抗生物質の内服・点耳
などを行い、改善を待ちますが、2歳未満の乳幼児は軽症や中等症であっても悪化しやすいので、経過観察であっても改善するまで診察を頻繁に行わなければいけません。
また、重症例や、ひどくなった場合、鼓膜切開術が選択されます。
鼓膜切開術
鼓膜切開とは、そのまま鼓膜にメスを入れ切開するものですが、排膿を図れ、圧も下がるので痛みも取れて解熱します。
1)参考サイト:小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版
2)参考サイト:小児急性中耳炎ガイドラインについて
参考文献:
耳鼻咽喉科疾患 ビジュアルブックP65〜67
100%耳鼻咽喉科 国試マニュアル 改訂第4版P47
まとめてみた 耳鼻咽喉科P4
STEP SERIES 耳鼻咽喉科 第3版P53・54
最後に
急性中耳炎について、ポイントをまとめます。
- 中耳に生じた急性の感染症を、急性中耳炎という
- ウイルスや細菌感染が原因となる
- 激しい耳の痛みが特徴
- 鼓膜の観察(耳鏡検査)を行い、重症度分類される
- 抗菌薬を投与しながら回復を待つが、ひどい場合には鼓膜切開術を行う
うちの子供も、1歳までに5回急性中耳炎になりました。
はじめは「どうしてこんなに泣き止まないの?」とわからず小児科を受診しましたが、泣き続ける際に耳を触ったり、耳を布団に擦り付けるなどの動作をすることから、次からは早めに異変に気づき耳鼻科を受診できるようになりました。
このような、いつもと違う泣き方には注意が必要です。