上鼓室型(弛緩部)真珠腫
- 真珠腫の中で最も頻度が高い。
- 真珠腫の白色塊が鼓膜弛緩部に顔を出しており、鼓膜緊張部は正常にみえる。
- 鼓膜弛緩部の内陥から始まる。debrisの産生が過剰となると貯留し、真珠腫となる。
上のイラストのように上鼓室型(弛緩部)真珠腫は鼓膜の弛緩部のところから入り込んでいき、鼓室の上の方(鼓室天蓋から乳突蜂巣へとかけて)へ進展していくのが特徴です。
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上鼓室型真珠腫進展度分類案2008(日本耳科学会)
Stage Ⅰ
真珠腫が上鼓室に限局
StageⅠの亜分類 (陥凹部の性状)
a:陥凹内の自浄能が保たれている (上鼓室陥凹)
b:陥凹内に貯留したdebrisの清掃が困難
(記載例:Stage Ⅰaなど)
Stage Ⅱ
真珠腫が上鼓室を超えて乳突部(M)や鼓室内(T)に進展
StageⅡの亜分類 (真珠腫進展範囲)
A (attic):上鼓室(初発部位)
M (mastoid):乳突部
T (tympanic cavity):鼓室
P (protympanum):前鼓室
(記載例:StageⅡM, StageⅡMTPなど)
Stage Ⅲ
次のような合併症・随伴病態を伴う
- 顔面神経麻痺:FP
- 頭蓋内合併症:IC
- 迷路瘻孔(膜迷路と母膜が接しているもの):LF
- 高度内耳障害(会話領域いずれかの骨導値がスケールアウト):LD
- 外耳道後壁の広汎な破壊(骨部外耳道長の約1/2以上):CW
- 鼓膜全面の癒着病変(atelectatic ear):AE
(記載例:StageⅢLF/CWなど)
鼓室型(弛緩部)真珠腫の治療
- stage Ⅰa:外来における治療でも対応できる時期
- stage Ⅰb:内視鏡を併用した上鼓室形成術が適応できる時期
- stageⅡ:外耳道保存、段階的鼓室形成術の適応
- stegeⅢ:外耳道削除鼓室形成術の適応となる時期。