先に結論:大腿骨頭壊死症とMRI

  • 大腿骨頭壊死症は、股関節の大腿骨頭への血流が途絶えて骨が死んでしまう病気で、ステロイドの使用・大量飲酒が二大要因です(日本では特発性大腿骨頭壊死症として指定難病)。男性は40歳代、女性は60歳代に多く、両側に起こることも多いです。壊死しただけでは症状がなく、骨頭がつぶれる(圧潰)と股関節が痛みます
  • MRIが最も早く見つけられる検査で、T1強調像で壊死部分を縁取る帯状の低信号(バンド像)が特徴です。レントゲンは初期には異常が出ず、進むと骨硬化や軟骨の下の骨折線(crescent sign)、骨頭の圧潰が見られます
  • 壊死の範囲が大きく体重のかかる部分にあるほどつぶれやすく、痛みが強い場合は骨切り術や人工関節などの手術を検討します。似た病気に軟骨下脆弱性骨折があります

※ステロイド治療中・飲酒の多い方で股関節や足の付け根が痛むときは、整形外科で相談してください。

大腿骨頭壊死って、骨が死んでしまうの?
太ももの骨の、股関節に入る丸い部分(骨頭)への血流が悪くなり、骨の一部が死んでしまう病気です。ステロイドの薬やお酒の飲みすぎが関係することがあるんですよ。

大腿骨頭壊死(AVN:avascular necrosis of the femoral head)

  • 成人の大腿骨頭が阻血性壊死を起したもの。骨端の骨壊死では、病変に二次性の骨折や骨吸収が生じ、関節破壊に至ることがあるため臨床的に重要。(骨幹部の場合は臨床上大きな問題となることは少ない。)
  • 原因は、ステロイド、アルコール多飲、全身性エリテマトーデス(SLE)、高脂血症、高尿酸血症、大腿骨頸部骨折、放射線治療など。
  • 大腿骨頸部骨折や放射線治療など先行する原因がはっきりしているもの(症候性大腿骨頭壊死)と、ステロイドやアルコール多飲といった特発性のものに分けられる。
  • 日本の指定難病の登録データでは、男女比は1.2〜1.4とやや男性に多く、年齢のピークは男性で40歳代、女性で60歳代であった。誘因はステロイド関連が39%、アルコール関連が30%、両方が4%、どちらもないものが27%であった。
  • 大腿骨頭の血流障害を来すメカニズムとして、動脈損傷、塞栓、骨髄内圧の上昇、血管炎、静脈灌流の障害などいくつもの説が提唱されているが確立されたものはない。
  • 両側発生が少なくない。しばしば急性疼痛で発症。
  • 骨端病変を壊死といい、骨幹端や骨幹の場合は梗塞と表現されることが多いが両者は同じものを見ていると考えられている。
  • 骨頭の圧潰が進むと、変形性股関節症に至ることがある。
  • 治療は壊死の範囲・部位や症状により、経過観察から大腿骨頭回転骨切り術などの骨切り術、人工骨頭・人工股関節置換術まで選択される。
  • 大腿骨術後に大腿骨頭壊死を起こすことがあり、大腿骨頚部の内側骨折・転位が大きいタイプ、骨接合術で手術されたタイプで多い。他、高齢者、喫煙者、大量飲酒、ステロイド使用、DMやASOなどの血管障害を持っている患者でより頻度が多くなる。

骨頭がつぶれて変形性股関節症へ進む流れ

日常生活で負荷がかかると→壊死部分が骨折し→圧潰(あっかい)→骨頭が球状でなくなると→骨盤側の臼蓋と適合しなくなり→関節軟骨が磨耗→変形→変形性股関節症へと進行します。

大腿骨頭壊死の症状は?

壊死を生じただけでは自覚症状はありません。

圧潰が生じると疼痛が出現し、進行するにつれ

  • 股関節痛
  • 腰痛
  • 膝痛
  • 殿部痛

などがあらわれ、さらに進行すると股関節の可動域が制限されるため、跛行(はこう)といった足を引きずって歩くような歩行異常が出てきます。

症状の出現には個人差があり、壊死から数ヶ月で症状をともなうようになる人もいれば、数年後に出て来る人もいます。

特発性大腿骨頭壊死の3つのタイプ

明らかな先行原因のない特発性大腿骨頭壊死(英語でIdiopathic Osteonecrosis of Femoral Head、略してION)は、

  • ステロイド性:副腎皮質ステロイド薬の大量投与により血流障害が起こると考えられています
  • アルコール性:長期間にわたる大量のアルコール摂取が大腿骨頭の血流障害に関与すると考えられています
  • 狭義の特発性:明らかな危険因子がなく起こるもの

の3つに分けられます。いずれも、血流障害が起こる詳しい仕組みは分かっていません。

大腿骨頭壊死の画像所見は?

レントゲン所見

  • 早期は診断困難。
  • ある程度進行すると骨壊死に対する骨頭内の帯状骨硬化像、壊死部の骨吸収(透亮像あるいは嚢胞性変化)、壊死部の脆弱化による骨折および圧潰を来す。
  • 壊死に伴う骨折は関節面直下の軟骨下に起こりやすく、軟骨下骨に円弧状に走向する線状透亮像として認められる(crescent sign)。

症例 20歳代男性 右股関節痛

右大腿骨頭に骨硬化あり、その内部は骨吸収を認めています。

症例 31歳男性 左股関節部痛

膠原病のため副腎皮質ステロイドを6年間服用していました。ステロイド性大腿骨頭壊死と考えられる症例です。

(出典:医師国家試験過去問108I53)

症状が進んだものには単純X線検査も役立ちますが、初期の診断にはMRIが有用です。

CT所見

  • 骨頭の帯状硬化像、骨透亮像
  • 軟骨下骨の線状透亮像(Crescent sign)

MRI所見

  • 早期の診断に有用。
  • 脂肪抑制T2WIやSTIRで骨頭~頚部骨髄浮腫を伴うことがしばしばある。壊死骨周囲に見られ、壊死骨には認められない(壊死骨をspareして認められ、その点が他の疾患との鑑別点ともなる)。骨髄浮腫は股関節痛、関節液貯留と相関があり、壊死骨圧潰、その進行に先行することがわかっている。
  • T1WI、T2WIでは骨頭内帯状低信号域として認める。壊死を取り囲むようにできた修復反応層を見ている。日本の診断基準でも、T1強調像の帯状低信号域は重要な診断項目の一つとされている。国際的には2019年に改訂されたARCO病期分類が用いられ、MRIまたは骨シンチのみ陽性をstage Ⅰ、X線で異常があり骨折・圧潰がないものをstage Ⅱ、軟骨下骨折や壊死部の骨折があるものをstage Ⅲ(骨頭の陥凹2mm以下をⅢA、2mmを超えるものをⅢB)、変形性関節症に至ったものをstage Ⅳとする。
  • T2WIでは低信号縁の内側に高信号縁が見られ、二重線縁(double line sign)を認めることがあり、大腿骨頭壊死に特徴的。(高信号は肉芽組織を低信号は硬化性変化を反映している。ただしChemical shift artifactも関与していると報告あり。)MRIの原著研究では、double line signは大腿骨頭壊死56病変のうち45病変(80%)で認められた。
  • 造影MRIで壊死部に造影効果を認めない。この点は大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折との鑑別にも重要。

症例 20歳代男性 右股関節痛 上記レントゲンと同一症例

両側大腿骨頭部にT1WIおよびT2WIにて異常な低信号の線あり。

T2WIにおける二重線縁(double line sign)ははっきりせず。

STIRには大腿骨頭部に高信号あり、骨髄浮腫あり。

両側の大腿骨頭壊死と診断されました。

症例 30歳代女性

両側の大腿骨頭に、T1WIにて低信号、T2WIにて低信号縁の内側に高信号縁を認めています。

またSTIRでは異常な高信号の線を認めています。

両側に大腿骨頭壊死と診断されました。

症例 70歳代男性

T2強調像で左大腿骨頭に低信号の縁を認めています。Double line signは認めません。

大腿骨頭壊死を疑う所見です。

症例 40歳代男性

T1強調像及び、T2強調像で両側の大腿骨頭に低信号の縁を認めています。
左側でDouble line signを認めています。

大腿骨頭壊死を疑う所見です。

単純X線で異常を認められない時にも、MRIで診断することができます。

大腿骨頭~頚部骨髄浮腫の鑑別診断

大腿骨頭の浮腫性変化の鑑別診断

大腿骨頭壊死の治療は?

初期で症状が軽い場合は、保存療法として

  • 杖を使い負担を減らす
  • 投薬
  • 安静

で経過をみます。

自覚症状をともない、圧潰の進行が予想される場合は手術療法を選択します。治療方針は、荷重部に占める壊死域の広さ(病型)と、圧潰の有無などの進行度(病期)をあわせて決めます。

大腿骨頭壊死の手術

壊死の広がりが狭い場合は骨切り術を選択します。

  • 内反骨切り術・・・健常部が外側にある場合
  • 前方回転骨切り術・・・健常部が後方にある場合

壊死が広範囲で骨頭が圧潰している場合・変形性関節症まで進行している場合には、人工股関節置換術が選択されます。

変形性関節症・手術について詳しくはこちら→変形性股関節症の手術や費用は?痛みの原因など徹底まとめ

予後は、壊死の状態(大きさや位置)、治療の内容、年齢によって異なります。初期の段階に治療を開始し、圧潰を予防することが重要です。

大腿骨頭壊死(特発性)は国の指定難病で、認定されると医療費助成の対象となります。

 

あわせて読みたい:大腿骨頭すべり症(SCFE)のレントゲン

参考文献+引用)骨軟部疾患の画像診断第2版P24-25,29
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P364・365
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P302・303

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  2. Sugano N, Atsumi T, Ohzono K, et al. The 2001 revised criteria for diagnosis, classification, and staging of idiopathic osteonecrosis of the femoral head. J Orthop Sci. 2002;7(5):601-5. PubMed
  3. Mitchell DG, Rao VM, Dalinka MK, et al. Femoral head avascular necrosis: correlation of MR imaging, radiographic staging, radionuclide imaging, and clinical findings. Radiology. 1987;162(3):709-715. PubMed
  4. Yoon BH, Mont MA, Koo KH, et al. The 2019 Revised Version of Association Research Circulation Osseous Staging System of Osteonecrosis of the Femoral Head. J Arthroplasty. 2020;35(4):933-940. PubMed
  5. Sato R, Ando W, Fukushima W, et al. Epidemiological study of osteonecrosis of the femoral head using the national registry of designated intractable diseases in Japan. Mod Rheumatol. 2022;32(4):808-814. PubMed

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