症例12 解答編

症例12

【症例】50歳代女性
【主訴】右下腹部痛、発熱
【身体所見】体温37.2度、血圧97/72、右下腹部に圧痛・硬結あり。反跳痛なし。
【データ】WBC 17900、CRP 12.8

画像はこちら

右下腹部に辺縁に造影効果を有する液体貯留を認めています。
この所見から膿瘍形成が疑われます。

この液貯留と連続する右上方に管状構造があります。これが虫垂です。
虫垂の先端には高吸収を認めており、糞石が疑われます。

その左前方には回腸末端が認めており、壁が著明に肥厚しています。炎症が波及している影響と考えられます。
この症例のイメージは上のような感じです。

虫垂炎が穿孔して、膿瘍形成を起こしていることが考えられます。

ちなみに膿瘍内には、虫垂との連続性がはっきりしない糞石があります。
虫垂が先端で穿孔して、漏れ出た糞石なのか、はたまた虫垂の先端は膿瘍腔の中にまであるのかはさだかではありません。

診断:虫垂炎穿孔による膿瘍形成

※外科コンサルトし、(腹膜炎の状態ではないため、抗生剤加療の上、待機的に)手術となります。

関連:急性虫垂炎のCT画像診断、症状、治療、鑑別診断

その他所見:左腎嚢胞あり。

症例12の解説動画

虫垂炎の画像診断のポイント


症例12のQ&A
症例12で虫垂炎穿孔による膿瘍形成なのか憩室炎穿孔による膿瘍形成なのか最初迷いました。何回か見返すと虫垂と糞石が確認出来たので診断に至りましたが瞬発力も身につけたいです・・・
12はかなり難易度が高いと思います。
まず膿瘍があることに気付くこと
→どこが破れているのかをさがし、虫垂であることに気付くこと。がなかなか難しいと思います。周囲に炎症がかなり広がっており、回腸末端も肥厚していますので、
主座がどこなのかが難しいですね。

12ですが、ここにきてかなり難易度上昇を感じました。
膿瘍部を腸管拡張のように思えてしまいました。しかし、腸管拡張にしてはやけに限局していること、壁がやけにスムースであることに違和感を感じていました。また子宮・卵巣とも連続性があるかのように見えるところがあり
、卵巣膿腫?のようなものも一瞬考えました。
とても勉強になりました。今後も楽しみにしています。

おっしゃるとおりですね。
卵巣も考えなければなりません。
違和感を感じることがまずは大事ですね。
貴重な画像ありがとうございました。
膿瘍形成か粘液腫が迷いました。
そうですね。虫垂の場合は、粘液腫やその破裂も考えなければならないですね。
かなり基本的なところなんですが、炎症が激しくても腹水が少ないことはよくありますか?
そうですね。腹水がないからといって炎症が激しくないとは言えないですね。
今回もそのケースですね。
解答を見て、「確かにな」と思うことがとても多く大変勉強になっております。12番の問題は、右側の腸管に何か問題が起きていることが分かったのですが、何が何だかわかりませんでしたが、解答を見て、スッキリしました。ありがとうございました。
12は難易度が高いですね。
こういうケースもある経験になってよかったです。
上行結腸が途中から(口側に)追えなくなり虫垂が確認できませんでしたが、病変部は腸管と連続性がないと判断してしまい、女性ということもあり卵巣と考えてしまいました。
腸管を追うのはやはり難しいですが、この数日で大分慣れてもきており楽しさを感じております。症例⑧のYouTube動画、大変わかりやすかったです。以降、全結腸を追う練習をするようにしています。
そうですね。慣れも大事ですね。
追うのを諦めたら閉塞機転はわからないですからね、
結腸は基本追うことができます(たまに困難なものもありますが)ので、練習してみてください。
虫垂炎穿孔による腹腔内膿瘍と迷いつつ最終的に虫垂根部との連続性ありとして穿孔なしと読んでしまいました
解説のシェーマがわかりやすくて助かります
この問題だけ難易度が一段上がった感じがあります、面白かったです
おっしゃるとおりですね。ちょっと難易度の高い問題でした。
12以前の虫垂炎も分からず、今回も炎症部分はわかっていてもどこが虫垂なのか分らなかったです。しかし解説を見ることができて勉強になりました。
腸管を追うのは難しいですが、拡張した部分を追う癖をつけましょう。
12は難しかったですね(^_^;
虫垂の糞石については、小腸のみ拡張がみられたので、回盲部辺りの問題で閉塞が起きているのだろうとはおもいましたが、膿瘍として解釈できなかったです。
ちょっと難しい症例ですが、なんかやばそうと思えるかどうかがまずは重要ですね。
後腹膜への膿瘍形成でしたか。所見が派手な割にはなんか影響がとどまっているな~、
と思っていましたが、やっぱり理由はあるものですね(^^;)
最近、画像というものと臨床所見をリンクして考えられるようになってきました。
また、診察の数も増え、臨床所見もなんとなく身についてきました。
この患者さんの症状の原因は何なんだろう、これは画像をとっても異常は出ないな、これは画像(心電図やエコーも含む)が見てみたいな、というように考えながら診察できるようになり、
だんだんと総合的に臨床力が上がってきているような気がしています(まだまだ分からないことの方が多いですが)。
そうですね、一部腹膜炎を疑う所見もありますが、基本的に後腹膜内にとどまっています。
膿瘍を腸管拡張と間違え、内ヘルニアとしてしまいました。虫垂炎穿孔による膿瘍形成だとは考えが及びませんでした。
一度経験をすると、次から疑うことができますので、覚えておいてください。
腸管との連続性が分からず、付属器の膿瘍かと考えてしまいました。付属器膿瘍の場合にはあのように膿瘍内にガス貯留は認めないものでしょうか。
膿瘍内のガス貯留は嫌気性感染では認めることがありますので、
付属器膿瘍であっても認めることがあります。
ガス貯留がある→消化管由来であろう というわけではありません。
イレウスと間違えたのですが、イレウスなら腸管内腔にヒダが見える(今回は膿瘍なのでヒダが見えない)という認識でよろしいでしょうか。
イレウスでもひだは見えないこともあります。

・今は腸管の拡張像やニボー像ははっきりしません。
・盲端となっていてその後の連続性がない壁の染まる液貯留→膿瘍

です。

膿瘍形成が後腹膜内なのか,腹腔内なのかの判断はあまりできていませんでした.確かに広がりが限局的であることからも後腹膜内での膿瘍なのですね.
そうですね。右の腹膜などにも炎症はおよんでいますが、腹腔内に広範には広がっていません。
後腹膜内に限局していますね。
虫垂炎穿孔→膿瘍形成までは診断できましたが、後腹膜腔への穿孔とはわかりませんでした。
腹腔内か、後腹膜かの鑑別は外科コンサルトするという意味でやることは変わらないので、
そこまで重要ではないかもしれませんが、膿瘍が限局的である理由として意識してもいいかもしれません。
虫垂炎だろうなとは思ったのですが、膿瘍形成という考えは浮かびませんでした。虫垂の穿孔から汚物が出たかもと思ったのですが、腸管のように周囲の輪郭がはっきりしてたのが不思議に思っていました。膿瘍を形成していたのですね。
虫垂と綺麗に連続性を持ち、綺麗な膿瘍形成ならばわかりやすいですが、
今回の症例のように虫垂の構造がわかりにくい症例もたくさんありますので、
今回のような所見を見た際に、虫垂炎からでは?と意識してみてください。
膿瘍構造の指摘はできたものの、虫垂の穿孔を指摘することができず、卵管留膿腫と診断してしまいました。大きな膿瘍があって虫垂を同定することを勝手に諦めてしまっていました。また、腸管外ガスが見受けられなかったので、腸管の穿孔もなさそうだな、と早々に判断してしまい、虫垂炎の鑑別が盲点になってしまった気がします。
>虫垂の穿孔を指摘することができず、卵管留膿腫と診断してしまいました。

膿瘍が虫垂由来なのか、卵巣由来なのかわかりにくいこともありますが、
今回は連続性がありましたね。

>腸管外ガスが見受けられなかったので、腸管の穿孔もなさそうだな、と早々に判断してしまい、虫垂炎の鑑別が盲点になってしまった気がします。

後腹膜に膿瘍を作る場合は、腸管外ガスが見られないことがあるので要注意ですね。

卵巣とのつながりだと思ってしまい卵管炎と判断してしまいました。右下腹部の腸管周囲の脂肪織濃度上昇はわかったのですが、ぐじゃぐじゃすぎて思考が停止してしまいました・・・。
実際、卵巣ー卵管からなのか、虫垂からなのか、術前に判定できず、
外科ー婦人科で手術したという症例もあります。今回もかなりぐちゃぐちゃで見えにくいですが、虫垂との連続性を追うことができます。
また糞石もヒントになりますので覚えておいてください。
腸管との連続性には乏しいと考えたのですが、膿瘍が鑑別に浮かばずに口側と肛門側に狭窄を認めたclose loop状の病変を来たいしていると考えていました。
辺縁に造影効果を有する液貯留を認めた場合は必ず膿瘍も鑑別に挙げましょう。
膿瘍形成の横にある糞石を血管と勘違いしてしまい、虫垂炎で膿瘍形成を来しているとは分かったのですが穿孔しているとはきちんと走行を確認するのは重要だと反省しました。
そうですね。今回のように少し虫垂を追いにくいケースもありますが、糞石などを手かがりに想像したいですね。
膿瘍内の液体貯留が小腸の内容物に見えたのですが、小腸の拡張にしては大きすぎると思い、苦し紛れに結腸の拡張と読んでしまいました。虫垂が探せず諦めてしまいました。膿瘍は画像上では肝膿瘍しか見たことがなかったので勉強になりました。
>膿瘍内の液体貯留が小腸の内容物に見えたのですが、小腸の拡張にしては大きすぎると思い、苦し紛れに結腸の拡張と読んでしまいました。

おっしゃるように小腸の拡張とすると拡張しすぎですので、結腸の拡張の方がストーリーとしては正しそうです。
その場合はとくに結腸は追うことができますので、本当に結腸なのか追ってみることが大事ですね。
小腸だったとしても腸管であると想定するならば拡張が激しいので前後を追ってみてください。
今回は追えないということがわかりますね。

>膿瘍は画像上では肝膿瘍しか見たことがなかったので勉強になりました。

膿瘍はあらゆる臓器にできますので、リング状に造影される液貯留を見れば膿瘍も鑑別に挙げてみてください。

おそらく虫垂炎→膿瘍形成だろうとは思ったのですが、女性となると苦手意識があります。すなわち、卵巣捻転などの婦人科疾患ではないかと、考えてしまいます。今後、婦人科系疾患は提示ありますが?なければ、何か卵巣捻転などの婦人科疾患症例提示があると大変勉強になります。よろしくお願いいたします。
>おそらく虫垂炎→膿瘍形成だろうとは思ったのですが、女性となると苦手意識があります。

おっしゃるようにややこしくて結局、虫垂炎破綻なのか、卵巣由来なのか術前に決定できない症例もたまにあります。

>今後、婦人科系疾患は提示ありますが?

婦人科系疾患もありますので、楽しみにしておいてください(^^)

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。