
症例4
【症例】40歳代女性
【主訴】下腹部痛、血便
【身体所見】下腹部圧痛軽度、直腸診にて暗褐色〜赤色付着
【データ】WBC 8300、CRP 1.29、Hb 13.6
画像はこちら
下行結腸〜S状結腸に3層構造を保った壁肥厚を認めています。
肥厚しているのは低吸収である粘膜下層です。
冠状断像では、下行結腸に広範な壁肥厚があることがわかります。
症状と合わせて虚血性腸炎と診断されました。
診断:虚血性腸炎
※保存的に加療となります。
関連:左側結腸の腸炎の鑑別診断は?虚血性腸炎、偽膜性腸炎とは?
その他所見:Douglas窩に少量腹水を認めますが、生理的範囲内です。
症例4の解説動画
3層構造を保った壁肥厚と鑑別
腸管の壁肥厚・腸炎の部位による鑑別疾患
症例4のQ&A
- 粘膜下層が肥厚する画像が印象的でした。3層構造になるのですね
- そうですね、低吸収の部分が厚くなります。
- 虚血性腸炎と潰瘍性大腸炎を画像所見から鑑別するにはどこに注目したらいいでしょうか?
- 臨床像がまず異なるのと、潰瘍性大腸炎の場合は粘膜の肥厚と狭小化を認めるのが一般的です。
- 3層構造、細かく見ていませんでした。aboutな読影でした。丁寧に画像を論理的に読むことに気付きました。
- 3層構造意識してみてください。3層構造が全く追えない場合は腫瘍の可能性があります。
- 所見はわずかに正解していた感じです。たしかに、炎症部位からは虚血性腸炎を考えるべきでした。腸間膜動脈閉塞と虚血性腸炎があたまの中でごっちゃになり、動脈閉塞がない⇒虚血性腸炎ではないという混乱した解釈になってしまいました。
昨日からcoronalのよさを感じています。腸管系の疾患を疑ったらcoronalもオーダーするべきですか? - そうですね。虫垂炎でもそうですが、coronalは基本あった方がよいですね。
- 左右の腸の炎症でも種類が異なることを知りました。
- 部位によって種類が異なります。
とくに今回のケースは部位が特徴的です。
- 虚血性腸炎はいつも自信がなく、診断を誤ってしまいます、、
- 左半結腸に広範な粘膜下層の肥厚を認めるので、症状と合わせて診断は比較的しやすい疾患です。
- 虚血性大腸炎で処置が必要な腸管虚血までいった症例など経験されたことはありますか?(文献では探しきれませんでした)
- これが経験がありません。
教科書的には、虚血性大腸炎は・一過性
・狭窄型
・壊死型と分類されますが、ほとんどが一過性型かと思われます。壊死型はもしかしたらNOMIなどと診断している症例に含まれている可能性はありますが、
壊死型の虚血性大腸炎が疑われるとレポートに記載したことはありません。
- 40歳代(女性)の虚血性腸炎ということですが…何か基礎疾患があるのでしょうか? 虚血性腸炎と言えば高齢者と勝手に思い込んでいましたが…日常でも良く見かけるものなのでしょうか?
- おっしゃるようにやや若いですかね。
50代60代70代というイメージですね。この方の年齢は46歳でした。
- 病歴から虚血性腸炎を鑑別に挙げましたが、画像がわかりませんでした。小腸内に著明にガスを認めるのを異常だと思ってサブイレウスとしてしまいました。
- 非常に典型的な虚血性腸炎ですので、この機会に覚えておきましょう。
- 今まで腸管を3層構造として捉える習慣がなかったので、「下行結腸から直腸S状部あたりが壁肥厚して炎症っぽい」といった感じでしか見れてませんでした。これからは解剖をもっと意識して画像を見ていこうと思います。上部直腸壁は濃染しているように見えますが正常でしょうか?
- >上部直腸壁は濃染しているように見えます
おっしゃるようにここにも炎症があるのかもしれませんが、やはりメインは下行結腸、S状結腸であり、有意ではないと考えます。
- 虚血性腸炎に関して造影効果が不良になるのではなく、粘膜下浮腫のため腸管の3層構造が明瞭になるという認識でよいでしょうか?
- そうですね。おっしゃるとおりです。
結腸炎の場合は、虚血性であっても感染性であっても、粘膜下層の低吸収部分が肥厚するのが特徴です。
- 下行結腸の区域性の炎症性病変ということまでは指摘できたのですが、虚血性腸炎と確定診断するに至れませんでした。また、横断像の32枚目の写真の肝門部にみられる腸管内のガス?を腸管外のガスと勘違いして、ひょっとしたら炎症部位のどこかで穿孔しているのではないのか心配になってしまいました。他の受講生の方へのごろ〜先生のコメントにもある通り、ガスの連続性を意識して、今後はしっかり区別しながら読影したいです。
- そうですね。上下のスライスとの連続性が大事ですね。
- 腸管にガスがたまっているようにみえてそこばかりに目がいってしまいました。腸管を追っていく習慣を身に付けたいです。
- >腸管を追っていく習慣を身に付けたいです。
なかなか現場では時間がないこともありますが、後日でもいいので、時間を見つけてしっかり追うという体験は大事ですね。
- 虚血性腸炎の画像について、左半結腸、3層構造以外にも何か特徴的な所見はありませんか。20代で血便は外来でもたまに来ますが、60代ならまだしも、20代では当日になかなか診断までたどり着かず、抗菌薬と食事指導で最診指導で返してしまうこともあります。
- 画像ではこれくらいしかないですね。むしろこれを見たら決まりに近いかと思います。
あとは特徴的な症状と性別年齢との組み合わせですかね。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
以前のコメント内にもあるのですが、直腸〜S状結腸の壁肥厚、炎症だと解答してしまいました。3層構造が大事ですね!さらに部位別に鑑別できるようにそれぞれ確認しておきます!
そもそもな話ですが、造影できない人は腸管の壁肥厚とその周囲の炎症波及を見るしかないですよね、、
アウトプットありがとうございます。
造影をすると3層構造はより明瞭に見やすくなりますが、単純でも壁肥厚や周囲の炎症所見は同定できます。
壁肥厚は造影しないとわからないのでしょうか?
参考症例を一例提示します。
こちらは単純CTですが下行結腸の下部からS状結腸にかけて3層構造を保った壁肥厚を確認できます。
https://imaging-diagnosis.com/view/Z2eUyauz
※今回たまたま参考症例を提示しましたが、基本はできないのでご注意ください。
「症状と合わせて虚血性腸炎と診断されました。」と解説にありますが、画像だけから感染性腸炎をr/oするのは難しいのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>画像だけから感染性腸炎をr/oするのは難しいのでしょうか。
左半結腸という腸管肥厚部位からも、より虚血性腸炎が疑われますが、やはり血便といった症状も重要ですね。
画像だけで感染性腸炎は除外できませんね。
現症とは関連ありませんが、横断像の29枚目前後にみられるSMAのすぐ腹側の不均一に造影される領域に目がいって、占拠性病変かと思ってしまいました。早期相で不均一に造影されている門脈でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>横断像の29枚目前後にみられるSMAのすぐ腹側の不均一に造影される領域
おっしゃるようにこの段階では一部しか造影剤が行き届いていない門脈ですね。
次の層では均一に造影されています。
毎回ワクワクしながら解答編を動画含めて観させて頂いています。また、画像は上下や冠状断など総合して判断しないといけないことがよくわかりました。
最初横断像で69枚前後で子宮?が造影されているのと、横断像74枚目で直腸内?に壁外から突出するように見えたため、最初は婦人科系の疾患かと考えてしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>最初横断像で69枚前後で子宮?が造影されているのと、横断像74枚目で直腸内?に壁外から突出するように見えたため、最初は婦人科系の疾患かと考えてしまいました。
子宮の造影効果は正常範囲です。
>横断像74枚目で直腸内?に壁外から突出するように見えたため
確かにそうも見えますね。結腸については虫垂同定ブートキャンプでしっかり追う訓練をしていきましょう。
サイズがある程度ないと結腸癌とCTでは同定できません。逆に言えばCTでは結腸癌の除外は行えません。
3層構造を保った壁肥厚から、下降結腸〜S状結腸の炎症と判断して虚血性腸炎と大腸型の感染性腸炎を鑑別にあげましたが、年齢から感染性腸炎かと考えてしまいました。感染性腸炎でも血便が出うると思いますし、虚血性腸炎では排便後からの腹痛・血便が特徴かと思うので、決め手にかけたというのが正直なところです。今回の場合、炎症部位の分布から両者の重み付けをするしかないのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>今回の場合、炎症部位の分布から両者の重み付けをするしかないのでしょうか?
確かに年齢は今回やや若めですが、女性であり、症状と腸管の肥厚部位から虚血性腸炎を疑います。
もちろん感染性腸炎を除外はできないですが、感染性腸炎の場合は右側結腸に認めることが多く、おっしゃるように炎症の部位から重み付けを行います。
画像所見よりは臨床症状から腹痛+血便で虚血性腸炎or感染性大腸炎かなと思い、よくよくみると下行結腸がむくんでいるようにみえ、なんとなく虚血性腸炎かなと曖昧な感じで答えてしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>よくよくみると下行結腸がむくんでいるようにみえ、なんとなく虚血性腸炎かなと曖昧な感じで答えてしまいました。
虚血性腸炎は場所と症状との組み合わせが重要ですので、この思考で問題ありません。
虚血性腸炎で、腸管の造影効果が不良になることはあるのでしょうか。「虚血」というネーミングから、造影効果が低下するような印象を受けてしまいますが、今回の症例では造影不良域はないということで宜しいですか。
アウトプットありがとうございます。
>「虚血」というネーミングから、造影効果が低下するような印象を受けてしまいますが、今回の症例では造影不良域はないということで宜しいですか。
確かに虚血という名前からは造影効果が落ちるイメージがありますね。
虚血性大腸炎は、一過性型、狭窄型、壊死型の3つに分けられ、今回の症例含め多くは一過性型です。
この場合は、壁の肥厚は認めますが、造影CTでの造影不良は通常認めません。
一方で、まれではありますが壊死型の場合は造影不良になり、手術が必要となるケースが多いです。
まれですので頭の片隅に覚えておく程度で大丈夫です。
下行結腸~S状結腸の壁肥厚を理解できました。このために横行結腸や小腸に通過障害があり、腸管ガスが多くなっているのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
下行結腸~S状結腸の壁肥厚により、これが閉塞機転となり口側の腸管が拡張しているという状態ではありません。
ガスはやや多く見えますが腸管の拡張や腸閉塞所見は認めないので特に気にするレベルではありません。
腸管にガスが溜まっているように見えるのですが、異常所見でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
確かに少し目立ちますが、腸管拡張や腸閉塞を来しているわけではありませんので、特に指摘するほどではないです。
いつも楽しく勉強させて頂いております。
横断像203/216の子宮頸部腹側にある、膿瘍の時のような周囲が縁取られた低吸収域はなんでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
子宮の腹側にあるのは膀胱ですね。
大変勉強になりました。ありがとうございます。
Douglas窩の少量腹水が確認できますが、これは女性だから正常ということでしょうか。
男性と女性の違い、生理的と判断する場合の判断基準などありましたら御教示願いたいです。
アウトプットありがとうございます。
>Douglas窩の少量腹水が確認できますが、これは女性だから正常ということでしょうか。
おっしゃるとおりです。男性ですと通常認めないので指摘する必要があります。
生理的範囲はどの程度かは難しいところですが、症例1のコメント欄に記載しています。
本題とはずれてしまい申し訳ないのですが、3つ目の動画「腸管の壁肥厚・腸炎の部位による鑑別疾患」の動画の虚血性腸炎の症例で右腎の頭側に高吸収の円状構造物があるとおもうのですが、なんでしょうか?巨大な胆石かともおもったのですが胆のうはその左側にあるとおもい、それが一体なんであるのか気になっています。教えてください。
胆石ですね。胆嚢が2房性になっており、その底部側に胆石があるという状態です。
おそらく胆のう腺筋腫(分節型)があるのだと考えられます。
関連
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