症例22 解答編

症例22

【症例】80歳代女性
【主訴】腹痛、4日前より排便なし
【身体所見】下腹部に圧痛あり、反跳痛、筋性防御はなし。

画像はこちら

小腸の拡張およびニボー像を認めています。

これまで同様、閉塞機転を探しましょう。

下の方までくまなく見ることが重要です。

右の閉鎖孔に腸管の逸脱・嵌頓を認めています。

右閉鎖孔ヘルニアによる小腸腸閉塞と診断されました。

診断:右閉鎖孔ヘルニアによる小腸腸閉塞

※閉鎖孔ヘルニアはヘルニア解除が必要で、外科コンサルトが必要です。
※手術にてヘルニアはRichter型で、嵌頓部はやや暗赤色に変色しており、虚血が疑われるため同部の腸管を切除しました。
※これもイレウス・腸閉塞を使いわけるならば、右閉鎖孔ヘルニアによる小腸「腸閉塞」となります。

外ヘルニアとは?

閉鎖孔ヘルニアは症例8の大腿ヘルニアと同様、「外ヘルニア」に分類されます。

外ヘルニアとは、腹膜臓器が腹腔外へ逸脱することです。

一方で内ヘルニアは、腹腔内にできた穴に腹膜臓器が入り込むことを言います。

外ヘルニアの分類は?

外ヘルニアの分類は以下のようになります。

好発年齢、位置関係、血管との関係を今一度ご確認ください。

関連:閉鎖孔ヘルニアとは?CT画像診断のポイントはこれ!

その他所見:

  • 胆摘後。
  • 肝内胆管〜総胆管の拡張あり。胆摘後の影響。
  • 腎嚢胞あり。
症例22の動画解説

腸閉塞と外ヘルニアと閉鎖孔ヘルニア

症例22のQ&A
小腸イレウスのヘルニアにも今回気づけず、大腸に唯一便塊のあった場所がつまった原因と勘違いしていました。
大腸の便塊でも大腸イレウスを起こすことがありますが、今回は小腸のみのイレウスですね。
イレウスを見たら閉塞機転を探す癖がつきました。ありがとうございます。
閉塞機転を探すのは、面倒ですけど大事です。
閉鎖孔ヘルニア、基本的なところでしたので再度頭に入れておきます。
結構見落とされがちな疾患ですので、覚えておいてください。
イレウスは閉塞起点がまたもやわかりませんでした。勉強を継続したいと思います。
閉塞機転を探しに行くことも大事ですが、今回はきちんと下まで見るということも大事です。
閉鎖孔ヘルニアという発想に至りませんでした。腸管をしっかりと追いかけられていないということですね。反省です。
閉塞機転を探しに行くことも大事ですが、今回はきちんと下まで見るということも大事です。
拡張している腸管を追いかけた際、閉鎖孔の直前まで追えていながら閉鎖孔外に脱出する腸管を見つけるまでにだいぶ時間がかかってしまいました。
閉鎖孔ヘルニアは見逃されることが結構あるので、要注意です。
鼠経ヘルニアは普段目にすることがありますが閉鎖孔ヘルニアは経験したことはなかったです。しかし緊急だと聞いていたので気づけて良かったです。
一度経験しておくことが重要な疾患ですね。
閉塞機転としてほぼ癌しか頭になく、分かりやすい閉鎖孔ヘルニアを見落として
閉塞機転で最も多いのは癒着です。
結腸の場合は、癌が重要となります。
閉鎖孔ヘルニアを同定できました。また、「閉鎖孔ヘルニアをきたしている!→ということはもしかしたら腹圧が上昇する何らかの基礎疾患(進行大腸癌、肝硬変、腹水貯留など)があるかも!」と考えつつ他の所見を探す努力もちょっぴりできました。また、とてもよい機会なので解剖学のアトラスを開いて、解剖構造を復習しました。
閉鎖孔ヘルニアは結構見落とされる疾患ですので同定できたことが非常に重要です。
小腸イレウスはすぐに分かったのですが、閉塞機転を探すことに集中するあまり、鼠径部まで画像を追えていませんでした。小腸が一部染まりが悪い印象でしたが、絞扼性イレウスにまではなっていないですか?造影CTであっても絞扼性イレウスと判断するのは難しい気がしますが、判断基準はありますか?
>閉塞機転を探すことに集中するあまり、鼠径部まで画像を追えていませんでした。

閉鎖孔ヘルニアは見逃されがちな外ヘルニアの一つですので、この機会に見るべきポイントとして覚えておきましょう。

>造影CTであっても絞扼性イレウスと判断するのは難しい気がしますが、判断基準はありますか?

症例26(注:今後の症例です)を参考にしてください。
厳密は判断基準はなく、絞扼性を示唆する所見を拾っていくしかありません。
明らかな造影不良などになっていれば別ですが。

閉鎖孔、大腿、など鼠経部のヘルニアのイレウスですと今回のようにわかりやすいのですが、
内ヘルニアや、先日の症例のようなヘルニアはまだまだ自信がないですね。。
やはり腸管はしっかりと追えるように、日頃練習しておきたいです。
そうですね。
イレウスは奥が深いですね。
今後も何症例か出てきますので楽しみにしておいてください。
イレウスを見つけたときには,もちろん腸管をしっかり追うことが基本ではあるのでしょうが,最初に典型的な狭窄部位を見て,今回なら閉鎖孔や鼠径・大腿部などをみることも実際の現場ではありなのかなと思ったりします.
鋭いですね!実際そういう方法も提案されています。
つまり、まずSMA塞栓や解離を除外して、次に外ヘルニアを除外してという方法ですね。拡張した腸管をひたすら追うのはそれらを除外してからの最終手段とするという方法です。またどこかで紹介したいと思います。
ヘルニアを見落とし、糞便性イレウスと読んでしまいました。糞便性イレウスと言うにはどの腸管までの糞便貯留が参考になるのでしょうか。
糞便性イレウスというのは糞便が原因で閉塞機転となりイレウスをきたすことですので、通常大腸に起こります。
その場合大腸イレウス(腸閉塞)となりますので結腸の拡張が見られます。今回は拡張しているのは小腸です。また、small bowel feces signといって食物残渣が原因となり小腸イレウスを起こすことがあります。
これは食餌性イレウスといって、通常認めない小腸内のプツプツとした糞便様構造が閉塞機転の手前で認められます。
ですので、このような小腸内のプツプツとした糞便様構造を認めた場合、その先(肛門側)に閉塞機転があるのではないかという手がかりとなります。参考:https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/26648
腸管を追っても閉塞機転が中々同定できず一旦諦めたのですが、「ああそういえば」と思って閉鎖孔をみたところビンゴでした。研修医の時に一度経験したことがあったので思い出したのですが、一度経験して「あの所見をチェックしたかな」と思うことで救われることってありますよね。しばらく閉鎖孔ヘルニアに出会っていなかったので記憶が強化されました。
それはよかったです!!!

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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