症例21 解答編

症例21

【症例】60歳代女性
【主訴】左背部痛
【データ】WBC 8500/CRP 0.26
現病歴にAfあり。

画像はこちら

左腎に被膜側を底辺とする楔状の造影不領域を認めています。

ちょっとわかりにくい所見ですが、被膜には一層の薄く造影される膜があり、これをcortical rim signといいます。

腎臓の造影不良というと、症例13であった腎盂腎炎も考えなければなりませんが、臨床症状やcortical rim signから左腎梗塞と診断することができます。

現病歴にAfがあることも、腎梗塞をより疑う情報となります。

ちなみに右腎にくびれを認めており、炎症や梗塞後の変化がうたがれます。

腎梗塞を見つけた場合、心腔内血栓や対側腎含め、他の臓器に梗塞や虚血がないかをチェックしましょう。

診断:左腎梗塞

関連:腎梗塞の原因、症状、治療は?CT画像診断のポイントは?

参考文献:
1)西巻、腹部外傷、日独放;vol51.No1.51-71,2006
2)マルチスライスCTによる腹部救急疾患の画像診断P106

その他所見:

  • 甲状腺右葉の腫大およびLDAあり。
  • 冠動脈石灰化あり。
  • 肝嚢胞あり。
  • 左殿部皮下に石灰化散見。

一流バリスタDr.Tの淹れ方

毎日、この救急画像診断道場での回答が楽しみになっています。
症例21:上腸間膜動脈起始部より2~3cmに認められる、三日月状の壁在血栓様の所見に関しまして、限局性の解離は考えられるのでしょうか?

 

おっしゃるように

SMA解離の好発部位でもあるので、SMA解離後の偽腔血栓化ではないかと思います。(もちろん壁在血栓の可能性もありますが、、)

腹腔動脈起始部にも同じような所見が疑われるかもしれません。

SMA解離後かなり時間がたった成れの果ての像ではないかと推測します。 (SMA解離を急性期からずっとフォローしていると最終的にこの症例のような感じになることが多いです)

Afの血栓梗塞の場合は、左心耳などにCTで血栓が見える場合もあるので、見えない場合が多いですが、しっかりチェックするようにしています。

ありがとうございます。
症例21の動画解説

腎梗塞の画像所見

症例19-21の過去の解答ページはこちら(passは、Vr6ZjtLw)

症例21のQ&A
右腎のくびれに気づかず、また炎症や梗塞後の変化を疑う所見であることを初めて知りました
日常的にも見られる所見ですので覚えておいてください。
右腎もなんか変だとは思ったのですが、左背部痛だし関係ないかとスルーしましたが、意味のある所見だったのですね。
副所見ですね。今回の症状とは直接関係がありませんが、Afがあるので過去の梗塞かもしれませんね。
今回は「楔状」と書けました。右腎の所見も勉強になりました。
よかったです。
上腸間膜動脈起始部より2~3cmに認められる、三日月状の壁在血栓様の所見に関しまして、限局性の解離は考えられるのでしょうか?
その可能性もありそうです。追記しました。
腎梗塞とは病名すら初めて聞く名前で想像つきませんでした。確かにAfの所見、背部痛とヒントは隠れていますが、腹部症状も色々あるなぁ と今回の勉強シリーズで実感しています
梗塞といえば、心筋梗塞や脳梗塞が有名ですが、腎梗塞や他の臓器の梗塞も重要ですので覚えておいてください。
腎盂腎炎、AFBN、腎膿瘍は染まり方で判断すると聞いたことがあるのですが腎梗塞との判断はまだ難しく感じました。
おっしゃるとおりですね。腎膿瘍と進むほど、造影効果が弱くなりますね。
cortical rim signは知っていましたが、こんなにうっすらなんですね・・・
ですね。このサインは認めないことも多いのでやや微妙だと思います。知っておいて損はないくらいですかね。
冠動脈の石灰化だけでなく、左房の肥大を感じました。
なので、AFもあり、心不全、心源性が強いのかな?と。。
おっしゃるように左房がやや目立ちますね。
冠状断でcortical rim signがわかりやすいと感じたのですが、水平断ではあまりはっきりせず解答には書けませんでした。cortical rim signは思ったよりも薄いものだ、という今日受けた印象をこれからも大切にしたいです。
そうですね。正直あればラッキー程度に考えてください。
cortical rim signを初めて知りました。腎梗塞と回答しましたが、腎盂腎炎とはっきりとした違いを考えて答えた訳ではありません。腎梗塞の病態を理解し、現病歴(Af)を見た時に、ある程度想像できる様にしたいと思いました。
微妙な症例もありますが、腎梗塞の場合は、ベターっと低吸収域が明瞭なことが多いですね。
後はおっしゃるように、現病歴に加えて、主訴や身体所見、採血結果、さらにはcortical rim signなどが参考になります。
心室の壁が厚く感じたのですがこのくらいなら正常ですか?(心拡大もあり心不全による左室肥大?)また、スライス26で左房後壁に造影不良域があり血栓像と思ったのですが正常でしょうか?
>心室の壁が厚く感じたのですがこのくらいなら正常ですか?

この程度ならば正常範囲と考えます。

>スライス26で左房後壁に造影不良域があり血栓像と思ったのですが正常でしょうか?

今回の症例で左房を丁寧に読影することは非常に重要ですね。
今回は下のスライスとの連続性から血栓ではないと考えます。

大動脈基部がやや拡大していると思ったのですがこのくらいなら正常ですか?
そうですね。正常範囲でよいです。
胸部大動脈瘤は大動脈径>4.5cm 手術適応は>5.5cm、あるいは半年で5mm以上の増大。とされています。ですので、4.5cm-5cm程度が一つの目安となるかと考えます。
cortical rim sign勉強になりました。ただ造影不良だ、と終わるのではなく、造影効果をしっかり観察しなければですね。
そうですね。腎梗塞の場合は、造影不良が明瞭であることが多いので、その点も意識してみてください。
腎のくびれの所見について初めて知りました。
陳旧性の炎症後の瘢痕や腎梗塞後などを示唆します。
たまに見る所見ですので、次回から意識してみてください。
梗塞を見たときは血栓を探さないいけないと思いつつ,所見に引っ張られて忘れてしまますね.CTで血栓が見られることを経験したことはありませんが,頻度としては少ないでしょうか.
>梗塞を見たときは血栓を探さないいけないと思いつつ,

同側の血栓を探すことも大事ですが、対側に新規梗塞がないかやSMAなどに血栓がないかなどをチェックすることも重要ですね。

>CTで血栓が見られることを経験したことはありませんが,頻度としては少ないでしょうか

正確な頻度はわかりませんが、まれに見られますのでそれほど少なくないのかもしれません。

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。