【胸部】症例40
【症例】50歳代女性
【主訴】嘔気、倦怠感
【現病歴】6年前に左乳癌で温存療法術施行。術後補助化学療法、放射線治療を施行。補助化学内分泌療法を2年間施行し、その後は複数の内分泌療法を施行している。1年半前に右下肢痛あり、多発骨転移を指摘。メタストロンの治療をしていたが、倦怠感高まり受診。
【既往歴】卵巣のう腫
【身体所見】意識清明、BP 95/55mmHg、PR 78bpm、BT 37.2℃
【データ】WBC 3500、CRP 1.45、CEA 42.6(1年前から経時的に増大している)
画像はこちら
まず6ヶ月前のレントゲンと今回のレントゲンを比較してみましょう。
すると6ヶ月前と比較すると明らかに肺野の透過性が低下している(全体的に白くなっている)ことがわかります。
また両側肺野に多数の線状影を認めており、左の肋骨横隔膜角(CP angle)は鈍化しています。
さらに、6ヶ月前も今回も、肋骨に多発骨転移を認めています。
次に、6ヶ月前のCTと今回のCTを比較してみましょう。
6ヶ月前の画像と比較すると、中葉舌区を中心に胸膜に達する線状影(小葉間隔壁の肥厚)が出現し、肺野がやや収縮しています。
小葉間隔壁の肥厚に加えて、葉間胸膜の肥厚、気管支血管束の肥厚を認めています。
これらはいずれも広義リンパ路であり、広義リンパ路が肥厚していることがわかります。
広義リンパ路病変には以下のものがあります。
最も有名なのは肺水腫でしたね。
今回は、乳癌術後で、経時的に腫瘍マーカーも増大している点からも、癌性リンパ管症が最も考えられます。
診断:癌性リンパ管症
その他所見:全身骨に骨融解性病変あり。多発骨転移の所見。
【胸部】症例40の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
症例39での癌性リンパ管症の解説が助かりました。
アンケートの件ですがメールアドレスでどれを選んで入力してもエラーが出て送信できません。確認の方よろしくお願い致します。
アンケート確かに調子悪いですね。
再度作り直して、再送しました。
放射線治療後ということで、左乳房放射線治療に起因した心不全による肺水腫と考えました。
解答を見て考え直すと、乳房再建(左乳ガン術後再建と右は整容性を整えるため?)されており乳房に放射線治療をしておらず骨転移に放射線治療したのかと考え直しました。そうなら癌性リンパ管症ですね。メタストロンも溶骨が多いのでそこには外照射でしょうし。
カーリーラインが出てたら心不全に引っ張られる傾向が私にありそうで気をつけます。
乳ガン患者は不幸にも根治しなければ、生存期間は長いことが多いので色々出てくるので胸が痛くなります。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>乳房に放射線治療をしておらず骨転移に放射線治療したのかと考え直しました。
温存療法後ですので、乳房に放射線治療をしたのだと思います。
ただし、今回も6ヶ月前のものも前胸壁沿いの放射線治療後の変化ははっきりしないですね。
>カーリーラインが出てたら心不全に引っ張られる傾向が私にありそうで気をつけます。
カーリーラインは小葉間隔壁の肥厚ですので、
広義リンパ路病変を思い出していただき、そこから鑑別を考えていきましょう。
>生存期間は長いことが多い
そうですね。単発性の骨転移でずっとフォローされている方など色々ですね。
乳癌は癌性リンパ管症が起こりやすいのですね。癌性リンパ管症とは異なりますが…乳癌術後の10年以降の再発及び転移を2例ほど経験したことがあり、既往歴が大切だと感じます。
アウトプットありがとうございます。
>乳癌は癌性リンパ管症が起こりやすいのですね。
ですね。胃癌、乳癌、膵癌、前立腺癌、肺癌などで頻度が高いですね。
>乳癌術後の10年以降の再発及び転移を2例ほど経験したことがあり、既往歴が大切だと感じます。
そうなんですね。
長期期間を経て忘れた頃に転移が起こることがあるのは、腎癌が有名ですね。
39で癌性リンパ管症を見ていたので,わかりやすかったです.
広義リンパ路病変はこれまであまり意識できていませんでしたが,この講座で身についたと実感します.
アウトプットありがとうございます。
>広義リンパ路病変はこれまであまり意識できていませんでしたが,この講座で身についたと実感します.
呼吸器や画像診断を専門でやっていないとなかなか広義リンパ路病変は難しいかもしれません。
心不全や今回の癌性リンパ管症で典型的な画像を見ていただきましたので、現場でも広義リンパ路病変意識してみてください。
最終症例ありがとうございました。
おっしゃるように、典型例をまずはきちんと身に付けられるように何度も復習しようと思います。この講座で、読影の難しさ・奥深さを感じ、謙虚に努力しないといけないなと思いました。住んでいるところがGo To トラベルから外れてしまったので、ぜひともGo To 頭部画像診断させていただきたいと思います笑
質問なのですが、
レントゲンで、左第5後肋骨や右第5後肋骨等に見られる、辺縁優位に高吸収な結節影を肋骨骨折と間違えてしまいました。。
肋骨のズレがないことや、辺縁優位に高吸収な点から肋骨骨折は除外できますか?
(骨島は均一な濃度を示すはずなので考えにくいかなと思いました。)
アウトプットありがとうございます。
>住んでいるところがGo To トラベルから外れてしまったので
東京なのですね!大都会に住んでおられるのですね。
>レントゲンで、左第5後肋骨や右第5後肋骨等に見られる、辺縁優位に高吸収な結節影を肋骨骨折と間違えてしまいました。。
その他所見に記載があるように全身骨転移がありますね。骨条件を作ってもらいます。
と思ったら骨条件最後についてましたね。
すみません。骨条件ありますね。お手数おかけしました。今後ともよろしくお願いいたします。
癌性リンパ管症勉強になりました!ありがとうございます^^ 今回の患者の主訴である嘔気、倦怠感は具体的には何が原因でおきたのでしょうか?癌が進行して嘔気とかでてきそうだなというのはなんとなくイメージはできるのですが、具体的にどういう機序(胃が圧迫されているからとか)でこれらの症状は出現するのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>今回の患者の主訴である嘔気、倦怠感は具体的には何が原因でおきたのでしょうか?
癌性リンパ管症では、呼吸苦の症状は起こりえます(ですので呼吸苦を主訴に精査をして診断されることがあります)が、嘔気、倦怠感は別の原因でしょうか。
薬剤性なのかもしれませんが、確定的なことはわかりません。
40症例ありがとうございました。
復習用のリンク集を最後の追加症例に関しても送っていただけないでしょうか。。
お疲れ様です。本日手配済みです。
40問がんばれました。とても勉強になりました。
これからも復習のために1日1動画見るようにします。
縦隔条件の97.98/353あたりで見える右肺動脈のlowな部分は転移でよいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
40症例お疲れ様でした。
>縦隔条件の97.98/353あたりで見える右肺動脈のlowな部分は転移でよいでしょうか?
肺動脈のおそらく外ですのでリンパ節転移の可能性があります。
いつもありがとうございます。小葉間隔壁の肥厚はみつけられるようになりましたが気管支血管束の肥厚は指摘できませんでした。正常の気管支血管束と比べてどれくらい拡張していたら「気管支血管束の肥厚」と言えるのか、何mmなど目安などはあるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
小葉間隔壁の肥厚を指摘できたら今回の症例では十分です。
気管支血管束の肥厚は今回指摘は難しいです。また何mm以上という基準はおそらくないと思います。
胸部救急画像診断40症例、とても勉強になりました。私は呼吸器内科をしており、とてもためになりました。復習もしようと思います。今後もこのような企画を楽しみにしていますので、ぜひよろしくお願いします。本当にありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
呼吸器内科の先生ということで大変恐縮です。
今後、頭部→腹部と開催予定です。
他の領域にも今後参入すべく常にインプットをしようとしておりますので、
楽しみにしていただけたら幸いです。
症例39のランダムパターン(血行性転移)、今回の癌性リンパ管症の症例の解説はわかりやすかったです。
今回の症例では骨転移も激しく、経過中に皮下脂肪も少し減ってきていることにも気にかけるようになりました。
今回で胸部救急は終了ですが、胸部のことは大分わかった、自信がついた、という所には立てていません。まだ道は続く感じです。
ご指導ありがとうございました。今度は頭部を頑張るぞお。
アウトプットありがとうございます。
>今回で胸部救急は終了ですが、胸部のことは大分わかった、自信がついた、という所には立てていません。まだ道は続く感じです。
基本的なところを典型例を提示することで一通り体験していただきました。
今後胸部の画像を読む際に、この40症例で体験していただいたことを活かしていただければ幸いです。
胸部救急お疲れ様でした。
沢山の胸部症例をありがとうございました。
胸部レントゲンがびまん性粒状影にみえる、CTで粒状影ではないと確認した後でも・・・、レントゲン読影は難しい。
6か月前の肺野条件CT29,33-37/338の胸膜に接するなだらかな隆起病変が6か月後に17新規、22-30/353で大きくなっているようですが、これは胸膜病変と考えてよいでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>6か月前の肺野条件CT29,33-37/338の胸膜に接するなだらかな隆起病変が6か月後に17新規、22-30/353で大きくなっているようですが、これは胸膜病変と考えてよいでしょうか。
こちらは局所的な無気肺や陳旧性炎症性瘢痕など非特異的な所見だと思います。
復習しております。
スライス98/353の、右肺動脈の右側にある陰影は、腫大したリンパ節と考えてよいでしょうか?
もしそうであれば、転移でしょうか?
以前の質問と回答に記載がありました。
確認せず申し訳ありませんでした
了解です。復習ありがとうございます。