【胸部】症例34
【症例】50歳代男性
【主訴】なし
【現病歴】生来健康。1ヶ月前に人間ドックを受診しPET-CT撮影されたところ肺野に異常陰影を指摘され、当院呼吸器科紹介となる。
【既往歴】なし
【内服薬】なし
【生活歴】喫煙:12-3本×30年間、8年前に禁煙、飲酒:3回/週、焼酎3杯、ビール1杯、職業:アパレル関係(粉塵ばく露なし)、海外渡航:年に3回ほど中国に出張している、ペットなし。鳩との接触なし。
【身体所見】意識清明、BT 36.6℃、HR 76bpm、BP 113/72mmHg、他身体所見に特記すべき異常所見なし。
【データ】WBC 3900、CRP 0.03
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まず胸部レントゲンから見ていきましょう。
左下肺野に結節影が散見されます。
それ以外に特記すべき所見はありません。
次にCTを見てみましょう。
すると、左下葉に気道散布性病炎を疑う割と大きな結節影を多数認めています。
他の肺葉には認めず、左下葉のみに認めています。
細菌やマイコプラズマなどによる気管支肺炎としても基本的に結節影のみ認めている点も典型的ではありません。
こういった同一肺葉内に多発する結節影を見たときに考えなければならないのが、肺クリプトコッカス症です。
診断:肺クリプトコッカス症
※画像だけでは診断はできませんが、クリプトコッカス症の可能性があるというところまでは言及できるようにしましょう。
※気管支鏡検査目的で呼吸器科に入院となりました。
※気管支洗浄液のグロコット染色ではクリプトコッカス感染を疑う所見は認めませんでしたが、クリプトコッカス抗原は陽性であり、クリプトコッカス症と診断されました。ミコシストカプセル100mg 3T分1より開始し、退院となりました。
左下葉の結節影は軽減していることがわかります。
真菌はなんでもありですが、結節影・腫瘤影の形で来ることが多いので、鑑別に挙げるようにしましょう。
関連:
【胸部】症例34の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
関連文書にも記載ありましたが、肺転移と間違えたらいやですね。可能性だけでも示唆できるよう努めたいです。ありがとうございました、
アウトプットありがとうございます。
>肺転移と間違えたらいやですね。可能性だけでも示唆できるよう努めたいです。
そうですね。担癌患者であるかや、同一肺葉内という分布も手がかりになりますね。
人間ドックで指摘される無症状の同一肺野内の多発結節影として考えなければいけない疾患ですね。
また、海外渡航歴より肺吸虫症も鑑別にあがるかと思いました。
アウトプットありがとうございます。
>人間ドックで指摘される無症状の同一肺野内の多発結節影として考えなければいけない疾患ですね
まさにおっしゃるとおりです。
>海外渡航歴より肺吸虫症も鑑別にあがるかと思いました。
肺吸虫症は移動したり、気胸を作ったりするのが特徴ですね。
残念ながら私は勉強会など以外では見たことがありません。
探したのですが肺吸虫症も見つかりませんでした。
真菌症には馴染みがなくて、いつも鑑別から忘れてしまいます。
今後は考えないとだめですね
アウトプットありがとうございます。
>真菌症には馴染みがなくて、いつも鑑別から忘れてしまいます。
おっしゃるとおり、忘れがちですね。
kenkenさんがおっしゃっているように
「人間ドックで指摘される無症状の同一肺野内の多発結節影として考えなければいけない疾患」
としてクリプトコッカス症を覚えておきましょう。
私も真菌症はいつも忘れてしまいます。
クリプトコッカスは肺に留まる場合は無症状であることも多いのですね。
とりあえず「人間ドックで指摘される無症状の同一肺野内の多発結節影として考えなければいけない疾患」を覚えるようにします。
アウトプットありがとうございます。
>私も真菌症はいつも忘れてしまいます。
例の画像パターンを追記しました。
>とりあえず「人間ドックで指摘される無症状の同一肺野内の多発結節影として考えなければいけない疾患」を覚えるようにします。
そうですね。このパターンで発見されて、診断されることも結構多いです。
今回も解説ありがとうございます。
真菌症も鑑別としてリストに入れなければなりませんね。
左右の大葉間裂?が特に尾側にかけて肥厚しているように見えたのですが、これは有意な所見でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>左右の大葉間裂?が特に尾側にかけて肥厚しているように見えたのですが、これは有意な所見でしょうか?
確かにそのように見えますね。
縦隔条件では確認できないので、無気肺などではなさそうで、脂肪が少し入り込んでいるように見えます。
特に有意ではありません。
10症例追加特典ありがとうございます!笑
結節の分布パターンが分かりませんでした・・・・。経気道散布ということは小葉中心性ということだと思うのですが、結節が大きすぎて判別出来ず・・・・。境界明瞭すぎるとは思いつつも、ランダムパターンの転移性腫瘍などを考えてしまったのですが、どう考えればよいでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>経気道散布ということは小葉中心性ということだと思うのですが、結節が大きすぎて判別出来ず・・・・。
おっしゃるとおり、結節が大きいので小葉中心性ではないですね。
気道に沿った分布ではあります。
>ランダムパターンの転移性腫瘍などを考えてしまったのですが、どう考えればよいでしょうか。
まず前提としてこれが絶対に転移性腫瘍ではない!とは画像からは言えません。
既往のない方が人間ドックで肺転移がたまたま見つかり、その後の精査で消化管癌などが見つかったというケースもあります。
今回もある意味、腫瘍を除外するための気管支鏡検査とも言えます。
ただし、今回のポイントとしては複数の結節が左下葉のみに認めていると言う点です。
転移ならば血行性ですので、左下葉のみでなくいろんなところに認めることが多いので、その点からも転移ぽくないと言えます。
またランダムパターンの場合は胸膜に接した病変があれば、よりランダムパターンぽいと言えますね。
ランダムパターン、またどこかの症例で出てくるかもしれませんので楽しみにしておいてください。
同一肺葉内に多発している結節影でした。
33/122楕円形の結節で中央部は空洞? 周囲にすりガラス影あり?と見えましたが、2つの結節影の重なりなのですね。結節影の特徴というのは特にないのですか。
その他の所見として、甲状腺右葉の腫大、上心膜腔の液貯留、右副腎腫大があるように思いましたが、いかがでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>33/122楕円形の結節で中央部は空洞? 周囲にすりガラス影あり?と見えましたが、2つの結節影の重なりなのですね。
結節が少しスペースを空けて存在しており、そのスペースがあたかも空洞のように見えているだけですね。
>甲状腺右葉の腫大、上心膜腔の液貯留、右副腎腫大があるように思いましたが、いかがでしょうか。
右の副腎腫大はなさそうですが、それ以外は確かにありますね。