クリプトコッカスは比較的頻度の高い肺真菌症をきたす真菌として知られています。
クリプトコッカスは鳩(はと)の糞から感染することで有名です。
アスペルギルスとの違いとして、アスペルギルスは通常免疫抑制状態の人に発症しますが、クリプトコッカスは健康な人にも感染して症状を起こすことがある点が挙げられます。
そんなクリプトコッカスについて症状、診断、治療について実際のCT画像を交えてまとめました。
先に結論:肺クリプトコッカス症とは
- 鳩などの鳥のフンに含まれるカビ(クリプトコッカス)を吸い込んで起こる肺の真菌症です。人から人へはうつりません。健康な人にも起こるのが特徴で、健康な人では無症状で健診のレントゲン・CTで偶然見つかることが多いです
- CTでは胸膜の近くにできる単発〜多発の結節が典型で、同じ肺葉にいくつか集まることが多く、空洞を伴うこともあります。肺がんと見分けにくいため、血液のクリプトコッカス抗原検査や生検で診断します。生検の組織ではPAS染色・グロコット染色で菌体が、ムチカルミン染色で菌体を包む莢膜が染まります
- 免疫が落ちている人(HIV・ステロイド・抗がん剤など)では広がりやすく、髄膜炎(頭痛・発熱)を起こすと重症です。治療は抗真菌薬(フルコナゾールなど)で、髄膜炎では髄液検査も行います
※健診で肺の影を指摘されたら、呼吸器内科で精密検査を受けてください。
クリプトコッカスとは?
クリプトコッカスとはカビ(真菌)の一種です。
クリプトコッカス症は自然界に広く分布するCryptococcus neoformans(読み方は、クリプトコッカス-ネオフォルマンス)が口や鼻を通して経気道的に感染することで発症します。

鳩などの鳥類の糞の中で増殖して、それが乾燥した時に空気中に拡散されます。
人に病気を起こすのは主にCryptococcus neoformansとCryptococcus gattiiの2つの仲間です(Howard-Jones 2022)。
- C. neoformans:鳩や鶏の糞との関連が知られ、腐った植物や土からも見つかる。
- C. gattii:ユーカリなどの樹木に関連し、オーストラリア、パプアニューギニア、カナダ、米国の一部などで多い。免疫が正常な人にも起こりやすく、5〜10cmを超える大きなかたまり(クリプトコッコーマ)をつくることがある。
クリプトコッカス症の分類〜原発性と続発性〜
クリプトコッカス症は原発性と続発性に分類されます。
- 原発性:健常者に発症するクリプトコッカス症
- 続発性:基礎疾患がある人に発症するクリプトコッカス症
基礎疾患とは、白血病、悪性リンパ腫、糖尿病、AIDSなどが当てはまります。
これ以外に、抗がん剤を使用している人、ステロイドを使用している人、免疫抑制剤を使用している人に発症する場合も続発性に分類されます。

一般的に真菌感染は基礎疾患があったり、免疫機能が低下している人にかかりやすいですが、このクリプトコッカス症は健常人にも発症することがあるので注意が必要です。とくにAIDSや悪性リンパ腫などの細胞性免疫不全の患者さんで発症頻度が高くなります。
また、クリプトコッカスは炎症反応が乏しく、病変ができても症状が乏しいのが特徴です。
クリプトコッカス症の症状は?
肺でクリプトコッカスが増殖して炎症を起こし、症状をきたす状態を肺クリプトコッカス症と言います。
そして、原発性か続発性かで症状が異なります。
原発性肺クリプトコッカス症の症状は?
健常人に発症する原発性のクリプトコッカス症は、通常無症状で、検診などの胸部X線などでたまたま発見されることが多いとされます。
続発性肺クリプトコッカス症の症状は?
一方で、基礎疾患がある人に発症する続発性肺クリプトコッカス症では、
- 発熱
- 全身倦怠感
- 胸痛
- 体重減少
- 呼吸困難
- 咳嗽・血痰
と言った症状をきたします。
肺以外の症状は?
感染が肺にとどまらず、髄膜への播種をひき起こす事があります。
その他、免疫能の低下した人では血液に真菌が入り込み、真菌血症から全身播種をひき起こすことがあります。
特にAIDS患者においては、この傾向が強いと言われています。
クリプトコッカスの診断は?
診断は喀痰からクリプトコッカスを分離・同定することで行います。
肺生検で採取した病変部位の組織をPAS染色やGrocott(グロコット)染色で、病理学的に診断することもあります。
PAS染色・グロコット染色などでの見え方
| 染色 | 見えるもの |
| グロコット染色(GMS)・PAS染色・HE染色 | 結節の壊死した中心部に酵母(丸い菌体)が見える。菌体が少ないこともある |
| ムチカルミン染色 | 菌体を包む多糖類の莢膜(きょうまく)を染める、クリプトコッカスに特徴的な染色 |
| フォンタナ・マッソン染色 | 菌体のメラニン色素を染める |
| 墨汁法 | 黒い背景の中に、染まらない莢膜が透明な輪として見える。髄液で行う |
出典:Howard-Jones 2022。血液や髄液のクリプトコッカス抗原検査は、この莢膜の成分(グルクロノキシロマンナン)を検出しています(Howard-Jones 2022)。
髄膜炎を合併している時は、髄液の墨汁法でクリプトコッカスを検出する(莢膜に包まれた円形の菌体として見えます)ことも診断に有用とされます。なお、肺外に広がった例では血清・髄液のクリプトコッカス抗原がほぼ全例で陽性になった一方、肺に限局した例では血清の抗原検査(LFA)が25%(20例中5例)で陰性だったという報告があり、抗原が陰性でも肺クリプトコッカス症は否定できません。
クリプトコッカスのCT画像診断は?
肺クリプトコッカス症はCTで、孤立性あるいは多発性の結節として認められることが多く、中でも肺の末梢(胸膜下)に見られることが多く、多発する場合もあります(免疫正常の10例の検討では、多発結節7例のうち5例が両側性でした Lindell 2005)。
そのため、肺がんや肺結核との鑑別が問題となることがあります。
続発性肺クリプトコッカス症の場合、結節の中に空洞が見られる割合が原発性よりも高いと言われています。72例の検討では、結節・腫瘤が90.3%にみられ、病変の65.2%が肺末梢に分布していました。結節・腫瘤にともなう所見は、CT halo sign(結節の周りのすりガラス影)24例、空洞23例、エアブロンコグラム11例で、リンパ節腫大5例・胸水8例は少数でした(Xie 2015)。空洞は免疫不全例(特にAIDS)で、エアブロンコグラムは免疫正常例で多くみられました。
画像所見のポイントをまとめると次のとおりです。
- 多発病変は同一肺葉内に多い。
- 下葉・末梢(胸膜下)に多い(免疫正常者27例で下葉55.55%、末梢74.07%;Yang 2017)。
- スピキュラや胸膜陥入を伴うことがあり、原発性肺癌との鑑別が問題になる。
- CT halo signを認めることもある(免疫正常者で22.22%;Yang 2017)。
- 単発あるいは多発の浸潤影にair bronchogramを伴うことがあり、この場合は特発性器質化肺炎(COP)との鑑別が重要となる。COPはステロイドで治療するが、クリプトコッカス症では抗真菌薬が必要であり、取り違えないことが大切。
症例 80歳代男性 咳嗽

胸部CTで左上葉に多発結節あり。
喀痰にて肺クリプトコッカス症と診断されました。
この多発結節のCT画像を動画でチェックする。
症例 60歳代男性

左の下葉内に結節性病変を複数認めています。
喀痰にて肺クリプトコッカス症と診断されました。
症例 80歳代 女性 乳がんの既往あり

こちらの症例も左の下葉内に結節性病変を複数認めています。
乳がんの既往あり、転移の可能性を否定できず、手術となりました。
手術の結果、肺クリプトコッカスと診断されました。
症例 50歳代男性(免疫正常者)

左下葉のみ(同一肺葉内)に多発結節を認めています。
血中抗原陽性により、肺クリプトコッカス症と診断されました。
このように同一肺葉内に複数の結節影として認められることが多いのがクリプトコッカスの特徴です。
免疫状態によって異なるCT所見
肺クリプトコッカス症のCT所見は、免疫状態によって異なることがポイントです。
基礎疾患のある症例は、ない症例より、
- 浸潤影が多い。
- 空洞の頻度が多い(胸水の頻度は差がなかったとする報告もある;He 2017)。免疫正常者13例・免疫不全者16例を比べた検討でも、最も多い所見は肺結節で、結節内の空洞と浸潤影は免疫正常者で有意に少なく、免疫不全者のほうが病変の範囲が広い傾向でした(Chang 2006)。
- 多肺葉分布が多い。9研究のメタ解析では、免疫不全者で空洞・すりガラス影・縦隔リンパ節腫大が有意に多く、病変は上葉に分布しやすく、発熱・頭痛も免疫不全者に多くみられました(Xiong 2022)。
- 関節リウマチの患者さんでは、浸潤影・すりガラス影が多く、末梢に限らず広く分布しやすい(Yanagawa 2013)。
| 状態 | 主なCT所見 |
|---|---|
| 免疫正常者 | 孤立性または多発性の結節・腫瘤(空洞形成あり) |
| 免疫不全者 | 浸潤影、空洞性病変、すりガラス陰影、縦隔リンパ節腫大、広い範囲の病変 |
肺がんとの区別と診断のポイント
- 60例の検討では、病理で確定する前に56例が結核や肺癌などと診断されており、画像だけでの区別は難しいとされます(Liu 2025)。
- 多発結節、halo sign、結節内の小さな空気(air-bubble sign)などは、クリプトコッカス症を考えるきっかけになります(Yang 2017)。
- 血清クリプトコッカス抗原の陽性率が44.2%にとどまったという報告もあり、陰性でも否定できません(Liu 2025)。確定には生検・手術標本の病理が必要なことが多いです。
クリプトコッカスの治療は?
治療薬としては、抗真菌薬が用いられます。
第一選択は、
- フルコナゾール(FLCZ)、
- イトラコナゾール(ITCZ)
ですが、重症例や、続発性クリプトコッカス症の場合は、
- アムホテリシンB(フルシトシンとの併用)
- ボリコナゾール(VRCZ)
が用いられることもあります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 健康な人でもかかりますか?
A. かかります。免疫が正常な人では結節が主体で、症状がなく健診で見つかることもあります(Yang 2017、He 2017)。
Q. CTでの見え方は免疫状態で変わりますか?
A. 変わります。免疫不全の人では空洞・すりガラス影・縦隔リンパ節腫大が多く、発熱や頭痛も多いとされます(Xiong 2022)。
※せきや発熱が続く、健診で肺の影を指摘されたなどの場合は、医療機関を受診してください。
参考文献
- Lindell RM, Hartman TE, Nadrous HF, et al. Pulmonary cryptococcosis: CT findings in immunocompetent patients. Radiology. 2005;236(1):326-331. PubMed
- Xie LX, Chen YS, Liu SY, et al. Pulmonary cryptococcosis: comparison of CT findings in immunocompetent and immunocompromised patients. Acta Radiol. 2015;56(4):447-453. PubMed
- Perfect JR, Dismukes WE, Dromer F, et al. Clinical practice guidelines for the management of cryptococcal disease: 2010 update by the infectious diseases society of america. Clin Infect Dis. 2010;50(3):291-322. PubMed
- Chang CC, Harrison TS, Bicanic TA, et al. Global guideline for the diagnosis and management of cryptococcosis: an initiative of the ECMM and ISHAM in cooperation with the ASM. Lancet Infect Dis. 2024;24(8):e495-e512. PubMed
- Shi J, Chen J, Hu L, et al. Retrospective analysis of pulmonary cryptococcosis and extrapulmonary cryptococcosis in a chinese tertiary hospital. BMC Pulm Med. 2023;23(1):277. PubMed
- Howard-Jones AR, Sparks R, Pham D, et al. Pulmonary Cryptococcosis. J Fungi (Basel). 2022;8(11):1156. PubMed
- Xiong C, Lu J, Chen T, et al. Comparison of the clinical manifestations and chest CT findings of pulmonary cryptococcosis in immunocompetent and immunocompromised patients: a systematic review and meta-analysis. BMC Pulm Med. 2022;22(1):415. PubMed
- Yang R, Yan Y, Wang Y, et al. Plain and contrast-enhanced chest computed tomography scan findings of pulmonary cryptococcosis in immunocompetent patients. Exp Ther Med. 2017;14(5):4417-4424. PubMed
- Yanagawa N, Sakai F, Takemura T, et al. Pulmonary cryptococcosis in rheumatoid arthritis (RA) patients: comparison of imaging characteristics among RA, acquired immunodeficiency syndrome, and immunocompetent patients. Eur J Radiol. 2013;82(11):2035-2042. PubMed
- Chang WC, Tzao C, Hsu HH, et al. Pulmonary cryptococcosis: comparison of clinical and radiographic characteristics in immunocompetent and immunocompromised patients. Chest. 2006;129(2):333-340. PubMed
- He Q, Ding Y, Zhou W, et al. Clinical features of pulmonary cryptococcosis among patients with different levels of peripheral blood CD4(+) T lymphocyte counts. BMC Infect Dis. 2017;17(1):768. PubMed
- Liu Q, Lei M. Clinicopathological Analysis of 60 Cases of Pulmonary Cryptococcosis. Int J Gen Med. 2025;18:3207-3214. PubMed
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大学病院で研修中、SLEの患者がり患し、大学病院の鳩の管理が問題だったことがあります。
当時はCTも普及しておらず、今回は初めて多発性結節を示すと知り、良い勉強になりました。
コメントありがとうございます。
>大学病院の鳩の管理が問題
そんなことがあるのですね。平和の象徴だからと、よほど放置されていたのでしょうか。貴重な体験談ありがとうございます。