【胸部】症例16
【症例】20歳代男性
【主訴】左胸痛
【現病歴】本日起床時より違和感あり。朝9時頃疼痛認めるも就労(美容師)。職員が当院連絡され受診となる。
【既往歴】虫垂炎(手術)
【生活歴】喫煙 5-6本/日×3年
【内服薬】なし
【身体所見】自立歩行で来院。BP 116/63mmHg、HR 83bpm、SpO2 100%(RA)、体温 35.6℃、握雪感なく皮下気腫認めず。breath soundで左肺尖部に減弱あり。
【データ】WBC 6600、CRP 0.02
画像はこちら
左肺に萎縮した肺の辺縁が細い線状影として認め、その外側に透過性の亢進した無血管領域を認めます。
左気胸と診断できます。
なお、肺尖が鎖骨レベルに存在しており、軽度気胸と診断できます。
呼吸器外科コンサルトとなります。
気胸の原因としては、bulla(ブラ)の破綻による自然気胸や外傷によるものが多く、今回は外傷のエピソードはありませんので、頻度としてはbulla(ブラ)の破綻が疑われます。
治療方針決定のために、呼吸器外科にて胸部CTが撮影されました。
すると、左肺尖部にはbulla(ブラ)を複数認めていることがわかります。
この胸膜側のものが破綻したことが推測されます。(どれが破綻したかは通常わかりません。)
また、右側にも小さなbulla(ブラ)を認めています。
bulla(ブラ)の破綻による自然気胸と診断することができます。
診断:左自然気胸
なお、気胸の際にレントゲンで認めることがあるサインとして、deep sulcus signがあります。
肋骨横隔膜が鋭く入り込むサインですが、臥位で認める所見です。
今回はレントゲンは立位で、CTは当然臥位で撮影されています。
今回CTを参照すると左の肋骨横隔膜角部に空気を認めており、このサインの成り立ちを理解することができますが、レントゲンでははっきりしません。
もし臥位でレントゲンが撮影されていたら見られたかもしれませんね。
※呼吸器外科入院となり、胸腔鏡下肺部分切除術(左)が施行されました。
【胸部】症例16の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
胸部症例で久々に正解できた気がします。
deep sulcus signは知りませんでした。臥位Xpがあれば意識して観察してみます。
気胸も簡単そうで呼気じゃないとわからない症例もあり、Xpでは見逃してしまっていることもあると思うので、Xpでの兆候はできるだけ多く知っておきたいです。
アウトプットありがとうございます。
>胸部症例で久々に正解できた気がします。
よかったです。昨日のARDSから一気にシンプルになりましたね。
>deep sulcus signは知りませんでした。臥位Xpがあれば意識して観察してみます。
立位になると空気が移動するので臥位で見られる所見ですね。是非意識して見てください。
>気胸も簡単そうで呼気じゃないとわからない症例もあり、Xpでは見逃してしまっていることもあると思うので、Xpでの兆候はできるだけ多く知っておきたいです。
ですね。CTでも微妙な気胸もありますが、Xpで典型的なものはきちんと拾いたいですね。
気胸は、できるだけX-Pの段階で見つけたいです。肩の痛みで肩関節X-Pが撮影されて、「肩関節に異常なし、結局気胸だった」なんで症例を過去に経験したことがあります。
それから、繰り返す気胸には注意したいと思います。「今回も自然気胸か…」ではなく、一度、月経随伴性気胸やリンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患なども鑑別にあげないとけないと考えています。
アウトプットありがとうございます。
>「肩関節に異常なし、結局気胸だった」なんで症例を過去に経験したことがあります。
副所見で気胸が見つかったということですね。そんなこともあるんですね。
>「今回も自然気胸か…」ではなく、一度、月経随伴性気胸やリンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患なども鑑別にあげないとけない
おっしゃるとおりですね。月経随伴性気胸の症例もあったのですが、今回はまずは圧倒的に頻度が多い自然気胸を診断しようというコンセプトです。
気胸は臥位撮影の際、皮膚のしわで紛らわしいこともあり、撮影側としては気を付けたいと思います。過去には皮膚のしわをDrが気胸かと疑い、技師サイドは違うと思うので再撮影させてほしいと伝え再撮影したが同じような線があり(反省点ですが)、CT撮ったら何もなかったということもありました。末梢だと血管・気管をしっかり追いにくい場合もあり、円パイで皮膚がたるたるの患者さんだとどうしようもない(皮膚を引っ張りながら撮るならいけたのでしょうがその時は皮膚を一時的に伸展しただけでした)こともありました。しっかり確認するためのCTであるのでしょうが少し苦い思い出です。心不全・肺炎もどんどん難易度があがりましたので、気胸もややこしいのが用意されているのでしょうか?楽しみにしています。
アウトプットありがとうございます。
>気胸は臥位撮影の際、皮膚のしわで紛らわしいこともあり
そうですね。ありますね。
>末梢だと血管・気管をしっかり追いにくい場合もあり、円パイで皮膚がたるたるの患者さんだとどうしようもない(皮膚を引っ張りながら撮るならいけたのでしょうがその時は皮膚を一時的に伸展しただけでした)こともありました。
そんなこともあるんですね。気胸となると皆さん色々思い出があるんですね(^▽^)
>心不全・肺炎もどんどん難易度があがりましたので、気胸もややこしいのが用意されているのでしょうか?
いえ、気胸は基本これと外傷によるものです。
ややこしいのはまたいつか番外編などでやるかもしれません。
まずは頻度が圧倒的に多い自然気胸をしっかり!ということでお願いします。
deep sulcus signはjatecなどで勉強することがありますね。気胸はシンプルですが、見逃すことも多い病気だと思うので注意したいです。
アウトプットありがとうございます。
>deep sulcus signはjatecなどで勉強する
そうですね。外傷患者は臥位で撮影しますからね。
「胸腔内のエアーは最初に肺底部の前面に貯留する。
その後、胸腔内エアーが増加していくと、肋骨横隔膜角にエアーが貯留し、肋骨横隔膜角が開大し深くなる(deep sulcus sign)。」
(画像診断 vol.33 No.5 2013 P501)
と記載があり、やはりある程度空気が溜まらないと見られない所見であり、これがないからと言って否定はできませんね。
今日もありがとうございます。
気胸がある事はすぐ分かりましたが、それをどう表現するか曖昧だったので勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
気胸を見た場合はその原因も考えてみましょう。多くは自然気胸ですが、bullaが見つからない場合もありますし、外傷やその他の原因のこともあります。
ありがとうございます。基本的な疾患ではありますが、所見の表現の仕方など含めて、勉強になります。
質問ですが、気胸の、軽症、中等症、重症のそれぞれの区別についてご教授をお願いします。
肺尖部からの縦の距離や肺門部からの横の距離など、ありますが、肺門部からのだと中等症程度の距離がありますが肺尖部は軽症程度でそれほど落ちていない。など悩ましい場合があるのですが。
アウトプットありがとうございます。
自然気胸治療ガイドラインによると、
肺虚脱度は、胸部単純X線写真で判断する。
日本気胸・嚢胞性肺疾患学会では癒着がない場合には以下の3つに分類している。
・「軽 度」肺尖が鎖骨レベルまたはそれより頭側にある。またはこれに準ずる程度。
・「中等度」軽度と高度の中間程度。
・「高 度」全虚脱またはこれに近いもの。
となっています。
参考
http://www.marianna-u.ac.jp/gakunai/chest/kikyou/guaidline.htm
>肺門部からのだと中等症程度の距離がありますが肺尖部は軽症程度でそれほど落ちていない。
この場合は、肺尖部および肺門部からを考慮して、中等度に分類すればよいのではないでしょうか。
軽度:肺尖部のみの軽度なもの
高度:全虚脱またはこれに近いもの。
で、これ以外は中等度となりますので。
今日もありがとうございます。
“空気は基本的に上に移動する”と何かの本に書いてあったような気がします、、。
だから、立位で撮影すると、気胸によって胸腔内に漏れ出た空気は頭側に移動して肺尖部に虚脱した肺のラインが見られる。臥位で撮影すると、横隔膜の潜在腔に空気が移動して、deep sulcus signが見られるということなのかなと思いました。
消化管穿孔で見られるfree airは横隔膜下に見られますが、これも同じ理屈なのかなと思いました。
アウトプットありがとうございます。
すべておっしゃるとおりです!
質問失礼します。
手術適応を決めるためにCTを撮像するようですが、それはブラがあったら手術適応になるということですか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるとおりです。ブラがあればその破綻が原因で気胸を起こした(ブラの場合特発性といわれますが)と判断でき、治療対象となります。
冠状断CTでは、これほどの気胸があったのかと驚かされました。
胸部レントゲンや横断像のCTと比べるとだいぶ気胸が強いように感じました。
冠状断でdeep sulcus signは理解しやすいですね。
アウトプットありがとうございます。
>胸部レントゲンや横断像のCTと比べるとだいぶ気胸が強いように感じました。
もっと肺が虚脱した高度なものもあり、一応今回は軽度に該当します。
>冠状断でdeep sulcus signは理解しやすいですね。
そうですね。冠状断像は全体像がわかりやすいですね。
レントゲンしか撮影できない環境であれば、立位と臥位を撮影してもいいかもしれませんね。
deep sulcus signは知りませんでした。救急で必要になる知識ですね。
ブラや外傷が原因でない気胸というと例えばどういうものが考えられるのでしょうか。
あと申し訳ないのですがthin sliceが途中で終わっているようです。せっかくですので、thin sliceも確認できればと思います。
可能であれば修正していただけますと幸いです。
アウトプットありがとうございます。
>ブラや外傷が原因でない気胸というと例えばどういうものが考えられるのでしょうか。
COPDから気胸を起こすことがあります。
他には、肺リンパ管筋腫症(LAM)、異所性子宮内膜症、膠原病、肺癌、肺結核、宮崎肺吸虫症などが教科書的には記載があります。
>あと申し訳ないのですがthin sliceが途中で終わっているようです。せっかくですので、thin sliceも確認できればと思います。
すいません。修正しました。
様々な疾患から起こすということが分かりました。ありがとうございます。
また、画像の修正もありがとうございました。