症例43 解答編

症例43

【症例】20歳代女性
【主訴】下腹部痛(半月前から痛みが強くなったり、消失したりを繰り返している)

【データ】WBC 7100、CRP 0.45、HCG 2340、尿妊娠反応陽性(最終月経開始から6週)

MRI画像はこちら

T2強調像の横断像です。

子宮内腔には胎嚢を疑う所見を認めていません。

子宮外妊娠(異所性妊娠)が疑われます。

子宮の左腹側に胎嚢を疑う嚢胞(内部一部低信号)を認めています。

脂肪抑制T1強調像では胎嚢内および胎嚢壁に高信号を認めており、出血を示唆します。

いずれも子宮外妊娠時の胎嚢で見られる所見で、これが胎嚢でよさそうです。

両側卵巣は同定できます。

しかし、胎嚢と左の卵巣の間に内部が不均一で一部ニボー像を呈する管状構造を認めています。

卵管留血腫の状態が示唆されます。

Douglas窩などには、T2強調像で急性期出血であるデオキシヘモグロビンを示唆する低信号の液貯留を認めています。

血性腹水を疑う所見です。腹水はDouglas窩以外にも認めています。

以上から、子宮外妊娠(卵管妊娠)の破裂と診断され、緊急手術となりました。

診断:子宮外妊娠破裂

術中の写真です。

左卵管が著明に拡張して内部に血腫の貯留が疑われます。

術後、摘出卵管を縦切開をすると、卵管峡部には胎嚢、絨毛膜、脱落膜と考えられる組織が血腫とともに存在し、その部から卵管膨大部にかけて血腫が充満していました。

下手くそなイラストで表すとこんな感じです。

ちなみに卵管の正常解剖はこちらです。

術後の病理報告書によると、

血腫に加え、絨毛を認め、妊娠が成立していたことを意味します。
血腫は赤血球とフィブリンからなり器質化が始まっていない新鮮な血腫です。
絨毛は卵管外にみられ、卵管が破裂して受精卵が卵管外に放出されたと推測されます。
血腫はおそらくこの際に出た出血に起因すると思われます。

ということです。

つまり、「卵管峡部で妊娠が成立→卵管が破綻して腹腔内出血を起こした。」

ということです。

診断:子宮外妊娠(左卵管峡部)破裂

関連:子宮外(異所性)妊娠のMRI画像診断のポイント!

その他所見:

  • 右卵巣背側に被包化された複数の血腫の疑い。(T1強調像および脂肪抑制T1強調像で高信号。術中所見にて右卵巣や卵管には異常所見は認めなかったとあり、内膜症性嚢胞などではなさそうです。)
症例43の動画解説

異所性妊娠(子宮外妊娠)について


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