
【頭部】TIPS症例28
【症例】80歳代男性
【現病歴】最近ふらつきあり。スクリーニング。
画像はこちら
両性硬膜下水腫があるのでは?主治医に聞かれたがどうですか?
またその他異常所見があれば記載ください。
両側大脳半球の外側にT2WIで高信号スペースを認めています。
両側大脳半球の外側のT2WI高信号スペースはFLAIRでは抜けており、髄液と同じ信号強度であることがわかります。
この場合考えなくてはならないのが、
- 両側硬膜下水腫が存在する
- 脳萎縮によりくも膜下腔が目立っているだけ
という二つです。
今回はどっちでしょうか?
よく見るとT2WIで高信号スペースには血管のflow voidを認めていることがわかります。
硬膜下水腫ならばこのような血管は見えません。むしろ血管を脳表に押しつける形で存在するのが硬膜下水腫の場合です。
ですので、今回のように高信号部位を血管が悠々と走向している所見こそが、脳萎縮によりくも膜下腔が目立っているということを示唆するのです。
それ以外にも所見があるので見てみましょう。
左の前頭部に硬膜に接して結節を認めています。脳実質外腫瘤です。
これは頻度が高い髄膜腫を疑う所見です。
また右乳突蜂巣に液貯留を認めています。
左右差を見れば明らかですね。これは乳突蜂巣炎を疑う所見です。
さらに両側上顎洞に軽度粘膜肥厚を認めており、両側上顎洞炎も伴っていることがわかります。
診断:
硬膜下水腫ではなく、脳萎縮によるくも膜下腔の開大
+髄膜腫疑い
+右乳突蜂巣炎、両側上顎洞炎
関連:硬膜下水腫とは?原因、症状、治療、画像診断のポイントは?
その他所見:右内頸動脈サイフォン部に狭窄あり。右椎骨動脈低形成あり。
【頭部】TIPS症例28の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
他部位の萎縮傾向がそこまで強くないと、硬膜下も「萎縮というより水腫かな」と思ってしまいます。
血管構造を見ればいいというのは分かりやすくて助かります。
アウトプットありがとうございます。
>血管構造を見ればいいというのは分かりやすくて助かります。
ですね。CTではわからないことがしばしばあるのですが、MRIで血管が走行しているかをチェックしてください。
実際、くも膜下腔の拡大を硬膜下水腫と間違えてカルテに記載しているのをよく見かけます。
CTでは鑑別が難しいときがありますが、MRIが撮影されていると鑑別は用意です。
アウトプットありがとうございます。
>実際、くも膜下腔の拡大を硬膜下水腫と間違えてカルテに記載しているのをよく見かけます。
ありますね(^_^;)
今回この症例を探す際にもいくつか・・・(略)
CTでは判別が難しそうですね。
一度見ていると今後鑑別に思いつける気がするので良い経験でした!
アウトプットありがとうございます。
CTではちょっと難しいですね。少しでも血腫成分(髄液よりもやや高吸収)な成分があれば水腫〜血腫と言うことはできますが、等吸収の場合は厳しい場合が多いです。
高信号の中の血管のflow voidがあると一目瞭然でMRIはやはりすごいですね。
乳突蜂巣炎見逃しました…
アウトプットありがとうございます。
そうですね。MRIでないとわからないことが多いですね。MRIでもわかりにくいことがありますが(^_^;)
やらかしました(恥)
「硬膜下水腫」と思い込んで見てしまったので、血管が浮いてることに気づきませんでした。
思い込みは怖いです。ちょっと気を許すと出てくるので、よい戒めにいたします。
ところで、乳突蜂巣炎ですが、中耳炎と言ってしまうとダメなのでしょうか?また、耳鼻科の論文などで出てくる乳様突起炎とは異なるのでしょうか?
実はあまり違いを気にせず使っていたのですが、せっかくなので質問させていただきました。
よろしくお願い申し上げます。
アウトプットありがとうございます。
>ちょっと気を許すと出てくるので、よい戒めにいたします。
正直に報告いただきありがとうございます(^^)
>乳突蜂巣炎ですが、中耳炎と言ってしまうとダメなのでしょうか?
中耳炎はしばしば乳突蜂巣炎を合併しますし、今回も中耳炎も伴っていると考えられます。
中耳炎〜乳突蜂巣炎を認めているというのが正しいかもしれません。
>乳様突起炎とは異なるのでしょうか?
個人的には乳様突起炎という言葉を使ったことがないので調べてみました。
急性乳様突起炎:中耳炎の炎症が乳突洞や乳突蜂巣にまでおよび、粘膜腫脹や肉芽によって排膿が困難になり膿瘍を形成すると本症に至ります。
(STEP 耳鼻咽喉科)
と記載がありますので、同じものですね。
調べていただいて有難うございます。
だいたい同じようなもののようなので、乳突蜂巣にのみ所見かある場合には、乳突蜂巣炎とする様にします。
有難うございました。
こちらこそありがとうございます。
こんにちは。いつもお世話になっております。
「脳萎縮に伴うもの」と指摘することはできましたが、髄膜腫、乳突蜂巣炎は指摘できませんでした。
乳突蜂巣炎についてもごろ〜先生のまとめで勉強しました!
https://medical-symptoms.net/archives/3179
アウトプットありがとうございます。
>髄膜腫、乳突蜂巣炎は指摘できませんでした。
いずれも今後救急外来含め割と見ると思いますので、覚えておきましょう。
なんだ、この腫瘤は!?と思いましたが、髄膜腫なんですね。頻度が一番多いというのは知りませんでした。(この知識くらいは国試出そうですね(^_^; )
今回はくも膜下腔が拡大していたから見つかりましたが、もししていなかったら多分見つからないですよね?
右の内頸静脈(内頸動脈だったらすみません。でも、私は静脈だと思いました)が、左に比べて高信号に見えるので、右の内頸静脈の狭窄かなぁと思いました。いかがでしょうか?
p.s 雨の日でもスキーできるんですね! 最初、はい?(゜゜;)と思いましたが笑 奥さん大助かりですね(^_^)
アウトプットありがとうございます。
>なんだ、この腫瘤は!?と思いましたが、髄膜腫なんですね。
まずは腫瘤に気づけたことが重要です。国家試験に出るかはわからないですが、頻度は結構高いので覚えておきましょう。
>右の内頸静脈(内頸動脈だったらすみません。でも、私は静脈だと思いました)が、左に比べて高信号に見える
T2WIの5/24のことですかね?頚静脈孔のところですね。
これは、症例20でやった偽病変ですね。
https://imaging-diagnosis.com/view/D2bdK5HF
通常静脈の狭窄というのはMRVなどを撮影しないと評価は難しいです。
>雨の日でもスキーできるんですね!
そうなんです。いつも激混みしてリフト乗り放題買っても全然乗り放題じゃないのに、本当に乗り放題でした。
小雨ならば雨の日のスキーはむしろオススメです。
>T2WIの5/24のことですかね?頚静脈孔のところですね。
これは、症例20でやった偽病変ですね。
https://imaging-diagnosis.com/view/D2bdK5HF
そうです!すっかり忘れてましたm(_ _)m 穴があったら入りたいですね。。。
>穴があったら入りたいですね。。。
その体験が次につながりますね!(^^)
T2WIでくも膜下腔の血管径がまばらなのは、撮影の切れ方や血流の速度の影響などでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
さまざまな血管径があるからだと考えます。
同じ血管ではそれほど広狭不整は認めていません。
この症例は脳の萎縮だからそれに対しては特に治療もない。脳室の開大がないですけど正常圧水頭症は鑑別にならないでしょうか。
ふらつきはむしろ乳突蜂巣炎などによるものだったりしたのでしょうか。
単なる脳実質の萎縮だったとして両側ともかなり薄く見えるものですから、この方の認知機能低下はどのくらいのレベルだったのか気になります。
なんとなく、マンニットール、グリセリンなどの利尿薬など点滴して脳実質が広がらないかななどと期待したくなるのですがナンセンスなのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>脳室の開大がないですけど正常圧水頭症は鑑別にならないでしょうか。
いわゆるDESH所見は認めていませんのでこの画像からは、正常圧水頭症は鑑別には挙がらないかと考えます。
ただ円蓋部は少し狭いようにも見えなくないですね(^_^;)
>単なる脳実質の萎縮だったとして両側ともかなり薄く見えるものですから、この方の認知機能低下はどのくらいのレベルだったのか気になります。
認知機能低下については記載がありませんでした。
右VAは低形成なんですね。血管がわかれていたので解離かと思いました。
アウトプットありがとうございます。
確かにあまり見ない形で分かれていますね。
元画像でもVAと同じくらいの太さで分かれています。元画像でよく追ってみるとPICAのようです。
いつもありがとうございます。FLAIR13/24で左尾状核や両側淡蒼球のあたりに黒い抜けがありますが、陳旧性ラクナ梗塞ととってよろしかったでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>FLAIR13/24で左尾状核や両側淡蒼球のあたりに黒い抜けがありますが、陳旧性ラクナ梗塞ととってよろしかったでしょうか?
まずこの方のT2WIを見てみると両側の放線冠レベルから基底核に血管周囲腔がやや目立つことがわかります。
その上でFLAIRを見てみると、両側の放線冠レベルから基底核に低信号の抜けは多くは血管周囲腔であることが推測されます。
陳旧性のラクナ梗塞はFLAIRで低信号であるだけでなく、辺縁に高信号の縁取りを認めるのが通常です。
とすると、おっしゃるように左の尾状核はこのパターン(13 / 24)ですので、こちらは陳旧性ラクナ梗塞と言えそうです。
右放線冠にもFLAIR低信号、辺縁に高信号があるようにも見えますが、T2WIと併せてこちらは血管周囲腔なのだろうと考えられます。
どうしてもオーバーラップがあるので難しいところですが(^_^;)
白質病変や血管周囲腔に混じった陳旧性ラクナ梗塞ぽい、かといって、明瞭ではない場合は、「陳旧性ラクナ梗塞の混在の可能性あり。」と濁して記載するのも一つだと思います。
いつもありがとうございます。勉強になります。
今回の本題とずれますが、BPASをとらずに椎骨動脈が低形成であると判断できるポイントがあればご教授下さい。
アウトプットありがとうございます。
今回のような画像をみれば頻度からしても基本低形成です。
BPASを撮影して鑑別となるのが椎骨動脈解離などとなりますが、この場合は数珠状に拡張したり、今回の症例のように広範に細くなるということは通常ありません。
あとは、元画像をしっかり確認しましょう。解離などであればMIP像で見えている高信号の外側に偽腔構造などを認めるはずです。