
症例42
【症例】70歳代男性
【主訴】腹痛
【身体所見】右上腹部から下腹部にかけて圧痛あり。反跳痛なし。
【データ】WBC 8300、CRP 12.35
画像はこちら
下腹部やや右側に腸管内腔に血管と脂肪組織を伴った腸管が陥入しています。
これは腸重積を疑う所見です。
腸重積とは上のように、口側の腸管が肛門側の腸管に腸間膜や血管を連れて入り込む状態です。
腸間膜は脂肪ですので、CT値で低吸収(黒い)に見えます。従って、腸管に対して垂直に切った断面では、腸管内に脂肪成分があるように見えるのです。
成人の場合は上のように、腫瘍があり、それが先端となって入り込むことが多いとされます。
ですので、先端に腫瘍がないかをチェックすると・・・
陥入した腸管の先端には少し見えにくいですが腫瘤性病変を認めています。
続いて冠状断像です。
冠状断像では、腸管内に腸管や腸間膜、血管が入り込む様子がよくわかりますね。
冠状断像でも入り込んだ腸管の先端を追うと、腫瘤性病変を認めていることがわかります。
腸重積を認めた場合に注意するべきことは、腸管に分布する腸間膜内の血管が巻き込まれて圧迫され、血流が行き届かなくなり、腸管虚血から壊死にいたることです。
ですので、腸管虚血を疑うような、
- 腸管浮腫
- 腸管壁の造影不良
- 腸間膜浮腫
- 腹水貯留
などをチェックします。今回は、腸管虚血を疑うような所見は認めませんでした。
待機的に外科的手術が施行されました。
術中の写真です。
腸管および腸間膜が入り込んでいる様子がわかります。
小腸切除術が施行され、CTで認めた腫瘍は有茎性の腫瘤の形態を示していました。
腸重積の原因となる腫瘤としては、脂肪腫が最多ですが今回は、「良性線維性組織球腫」と病理学的に診断されました。
診断:腸重積(空腸空腸重積、空腸腫瘍)
その他所見:
- マーゲンチューブが留置されています。
- 肝嚢胞あり。
- 小腸の拡張および液貯留・ニボー像あり。小腸イレウス(腸閉塞)の状態。
- 結腸に造影剤の残存あり。実はこの方他院で腸重積と診断されて、転送で来られたため造影剤の詳細は不明です。
症例42の動画解説
腸重積について
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
腫瘤を同定できませんでした…。
嵌入端の高吸収な部分は腫瘤の茎と考えればいいですか?
はやいアウトプットありがとうございます。
>嵌入端の高吸収な部分は腫瘤の茎
そうですね。茎と思われます!
腸重積のCT画像も初見でした。リング状に見える腸管には気づき、これが何かのサイン何だろうとは思って画像を見たのですが、どうしても腸管に残る造影剤に目が行ってしまい、バリウム糞石による小腸イレウスだろうと結論付けてしまいました。解説を読んで画像を見ると良く分かりました。ただ・・・腫瘤性病変はここがそうなのかなぁという感じであまりピンときませんでした。(見捨てずご指導くださいませ)
アウトプットありがとうございます。
>どうしても腸管に残る造影剤に目が行ってしまい、バリウム糞石による小腸イレウスだろうと結論付けてしまいました。
この方腸重積で紹介で来られた方のようで前医での検査など記載がありませんでしたので、腸管に残る造影剤はよくわかりません。
>ただ・・・腫瘤性病変はここがそうなのかなぁという感じであまりピンときませんでした。
ちょっと腫瘍は見えにくいですね。今回。
今日もありがとうございます。
成人の腸重積は初めて見ました。
まさか小腸腫瘍があるとは…腸重積の診断に満足して完全に見落としてました。勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>まさか小腸腫瘍があるとは…腸重積の診断に満足して完全に見落としてました。勉強になりました。
まずは腸重積が診断できればOKです!
高齢者の腸重積なら先進部に腫瘤があるかもという目で探したのですが腫瘤と認識できませんでした
画像からは腸管虚血はなさそうと思ったのですがその割にCRPが高値で重症度の判断に迷いました
アウトプットありがとうございます。
>高齢者の腸重積なら先進部に腫瘤があるかもという目で探したのですが腫瘤と認識できませんでした
腫瘤はちょっとわかりにくかったですね。
胸部は撮影されていませんでしたが、この方確か肺炎があったかで、それでCRPが高値だったと思います。
久しぶりに診断できたと思っていたのですが…腫瘍に気付くことができませんでした。
先端の高吸収の部分が何か分からずその周囲の腫瘍も見落としていました。
今回は空腸の腸重積だったということですが、空腸と回腸はCTで見分けることができるのでしょうか?
また空腸と回腸を見分ける意義はあるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>今回は空腸の腸重積だったということですが、空腸と回腸はCTで見分けることができるのでしょうか?
また空腸と回腸を見分ける意義はあるのでしょうか?
CTで見分けることはできません。
肉眼的にも境目があるわけではありませんが、
「小腸で人工肛門作るときは回腸で作ったり、尿路変更する時は回腸使うし、頸部食道癌と時は遊離空腸使うし、見分ける意味はある。」
と外科医の同期から返信ありました。
お世話になっております。
腸重積の原因病変ですが、「一部中心に強い造影効果を伴った、淡く造影された低信号腫瘍」ということで脂肪腫と判断しました。中心の強い造影効果の部分はおかしなと思ったのですが、重積で圧迫されているのためかなと…、画像診断は難しいです。
良性線維性組織球腫の画像所見を早速調べてみました。勉強になります。
アウトプットありがとうございます。
>腸重積の原因病変ですが、「一部中心に強い造影効果を伴った、淡く造影された低信号腫瘍」ということで脂肪腫
周りに液貯留もあり、腫瘤も低吸収ですので、確かに脂肪腫ぽくも見えますね。
今日も勉強になりました。
複数で1つの画像診断をすると、同じ考えの人とかがいて(今回はバリウム)、自分だけではないんだと思って少し前向きになれます。
腸重積はシェーマでは横に進んでいく絵しかみたことがなかったですが、今回の画像なんかをみると、腫瘍の重さで下に引っ張られていく、というイメージでもよいのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>腫瘍の重さで下に引っ張られていく、というイメージでもよいのでしょうか?
盲腸部や回盲部に腫瘍があり、それが上行結腸に入り込んでいくケースもあるので、重力の問題ではなさそうで、あくまで蠕動の方向に進んでいくのだと思います。
あれは造影剤だったのですね。これがおかしいのだと考えてしまいました。
成人の腸重積もあるということを覚えてはいましたが、こうして症例として勉強することで実感を持って学ぶことができました。30cmも入り込むんですね…。
アウトプットありがとうございます。
>成人の腸重積もあるということを覚えてはいましたが、こうして症例として勉強することで実感を持って学ぶことができました。
腸管の中に腸間膜の脂肪成分があればおかしいと思えるようにしてください。
あ~~~、最初小腸って書いたんですけどねぇ(言い訳)( ̄▽ ̄;)( ̄▽ ̄;)
造影剤に惑わされ、
「よく分からないけど、まぁ、結腸なんだろう」
と思ったらそこで試合終了でした(;´Д`)
さて、、、
実は、腸重積の「先進」っていうのが、学生時代から全然よくわかっていません(^-^;
蠕動で、、みたいなことは聞きますが、いまいち・・・( ̄▽ ̄;)
理解のための突貫工事的な概念として、
「腫瘍の重さで腸管が尾側に落ちていく」
というイメージを持っています(^-^;
そして、「横断面でtarget signが結構見られる」ようなので、
やっぱり重力的に尾側に落ちていくイメージであんまり困ってはいません(^-^;
しかし、、必ずといっていいほど、
腸重積の教科書は、腸管が「横に横に」重積しています(^-^;
それはやっぱり、腸重積が「横に」起こることが多いからなんでしょうか?
実は、「蠕動」とかは全くの詐欺で、
本当は「重力」なんじゃないんですか(;´Д`)??
確かに、矢状断像でtarget sign、横断像でpseudokidney signが見られることもよくあるとは思います。
でも、本当は「真横」じゃなくて、少しは「斜め」になってるんじゃないですか(;´Д`)?? (取り調べ室風)
昔から立体のイメージ、とても苦手です( ̄▽ ̄;) 多分その部分のIQは50くらいだと思います(;´Д`)
アウトプットありがとうございます。
>そして、「横断面でtarget signが結構見られる」ようなので、
やっぱり重力的に尾側に落ちていくイメージであんまり困ってはいません(^-^;
基本はそのイメージで良いと思います。
>しかし、、必ずといっていいほど、
腸重積の教科書は、腸管が「横に横に」重積しています(^-^;
それはやっぱり、腸重積が「横に」起こることが多いからなんでしょうか?
今回は冠状断像で下の方に重積していますので、立位での重力方向といってもいいかもしれません。
>実は、「蠕動」とかは全くの詐欺で、
本当は「重力」なんじゃないんですか(;´Д`)??
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/17022
こちらの症例は回盲部の腫瘍が、上行結腸に頭側に入り込んでいますので、
もちろん重力もあると思いますがそれだけではなさそうです。
なるほど〜(╹◡╹)
腸重積のシェーマは横方向が大多数な気がしますが、
それは、紙面の都合とかですか(・・;)?
それはどうなんでしょうか。。。
確かに紙面の都合などあるかもしれませんね。
腸重積を見つけた時は、
原因である先端の腫瘍を探さなければいけないのですね。
今日も勉強になりました!
ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
まずは腸重積があることを見つける
次に、
先端部に腫瘍がないか
血流障害がないか
をチェックしましょう。
今回の症例とはあまり関係ないのですが、ある疾患はCTで吸収、MRIのT2で高信号だからこの疾患であるなどと教科書に書いていますが、放射線の先生方は各々の疾患に対してこのようなことを暗記しているのでしょうか。それとも原理的な事柄から導いているのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
暗記というかまあ確かに暗記なのかもしれません。
パターンでこうくればこれが最も考えられるという。
受験勉強と同じかもしれません、そういう意味では。
原理的なというよりは、パターンからの方が強いと思います。
毎日ありがとうございます!
腸重積の所見を述べることができました!しかし、重積の原因となる病変まで同定することはできませんでした。
上行結腸に糞便が貯留しているように思ったのですが、これは造影剤によって糞便が口側に押しやられたという解釈でよろしいでしょうか?
糞便がこの位置にあるのはなんだかおかしいなと思って、この近辺が閉塞起点になっているのでは?と変なことを考えてしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>上行結腸に糞便が貯留しているように思ったのですが、これは造影剤によって糞便が口側に押しやられたという解釈でよろしいでしょうか?
ちょっと前医で何をされたのかが一切記載がないのでなんとも言えないのですが、
注腸透視をされている可能性がありますね。その場合はおっしゃるように口側に押しやられているという解釈になりますね。
腸重積までは診断できたのですが、先端部の高吸収を出血と考えてしまい、何で出血しているのか合理的に説明できないまま、その先の腫瘍にも気づかず、読影を終了してしまいました。
みつけた異常所見が合理的に説明できるストーリーを考えろ、と昔の上司に言われたことを再認識しました(有名な某先生は、やりすぎると妄想、と仰っていましたが)。
最近、読影がいい加減になっていたことを思い知らされました(汗)。本当に勉強になります。最後まで、よろしくお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
>先端部の高吸収を出血と考えてしまい、何で出血しているのか合理的に説明できないまま、
他の方がコメントしておられますが、腫瘍茎が高吸収なようですね。
>みつけた異常所見が合理的に説明できるストーリーを考えろ、と昔の上司に言われたことを再認識しました(有名な某先生は、やりすぎると妄想、と仰っていましたが)。
妄想しすぎて、最初から間違った方向に行ってしまうのは危険ですが、ストーリーを考えることは重要ですね。(自分にも言い聞かせています)
引き続きよろしくお願いいたします。
症例ありがとうございます。他のコメントされている方と同様、腸重積は診断できましたが、先端の腫瘤はわかりませんでした。
一つ質問があります。総胆管や膵管は保たれていますが、肝内胆管が軽度拡張しているところがあるように感じましたがとり過ぎでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>総胆管や膵管は保たれていますが、肝内胆管が軽度拡張しているところがあるように感じましたがとり過ぎでしょうか?
そうですね。小さな肝嚢胞が複数あり、肝門部の門脈の横に低吸収を軽度認めていますが、これを即肝内胆管拡張と取るのはちょっと取り過ぎですね。
末梢は開いていないです。
もしかしたら胆管周囲嚢胞がこの部位にあるのかもしれません。いずれにしろ有意ではないですね。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/22205
ターゲットサインがあるなあと思ったのですが、年齢的に腸重積がありうるのかなと思ってしまいました。また、結腸(上行結腸)にも便固があり、これが閉塞起点にもなりうるのかなと思ってみていたのですが、結腸側はあまり拡張している様子はなく造影剤まみれになっていて、難しかったです。ただ、やはりなんか変だなあと思ったところは変なのですね。やっと少しずつ読めるようになってきた実感があります。
アウトプットありがとうございます。
>年齢的に腸重積がありうるのかなと思ってしまいました。
成人でもたまに認めます。決して稀ではありません。
>ただ、やはりなんか変だなあと思ったところは変なのですね。やっと少しずつ読めるようになってきた実感があります。
変だと気づけることが大事ですね。あとはそれをどう解釈するかですね。
腸重積は画像所見が非常に特徴的なので、わかりやすいですね。
いつもありがとうございます。
腸重積の部分が腸管と連続しているように見えず、戸惑いました。。
でもこれは、連続しているんですね。腸重積=target signと覚えていましたが、いざ画像を提示されると答えられない。
よい経験になりました。ありがとうございます。
p.s. 本日のp.s.も楽しく読ませていただきました。最後にオチもちゃんとついていましたね笑
アウトプットありがとうございます。
>でもこれは、連続しているんですね。腸重積=target signと覚えていましたが、いざ画像を提示されると答えられない。
連続しています。
言葉では覚えていたけど実際の画像となると、ということですね。
言葉で覚えていた+答えられなかった→より記憶として定着すると思います。
是非次見たときは思いだしてください。
>本日のp.s.も楽しく読ませていただきました。最後にオチもちゃんとついていましたね笑
ツッコミありがとうございます。
最後、
(私「コンビニの板チョコでよかったら、すぐ買ってくるけど」)
とは言っていない(より怒りを買うだけなので)ですが、これを言えばオチとしてはもう一段上でしたね(^_^;)
> 言葉では覚えていたけど実際の画像となると、ということですね。
そうです。。。確かに、間違えるとより記憶に残りますね。この講座の有り難みの一つだと思うので、こういう経験を大事にしたいと思います。
確かに、そのオチだとより秀逸ですね笑
前医で注腸検査がされていますが、エコーで腸重積と思われる像を見つけ、回腸結腸型あるいは結腸結腸型なら注腸で整復できるのではとトライしたが、小腸小腸型のようだ→二次病院に送ろう、というストーリーだったのでは??妄想のしすぎですかね。
アウトプットありがとうございます。
>前医で注腸検査がされています
そうなんです。前医の記録が一切ないので、詳細はわからないのですが、おっしゃるように注腸検査がされていますので、そのようなストーリーがあったのかもしれません。
小腸小腸型の場合は、注腸検査では、届かないから整復できないということですね。