
症例41
【症例】70歳代女性
【主訴】腹痛、嘔吐
【身体所見】心窩部に圧痛あり、反跳痛なし、筋性防御なし。
【既往歴】胃潰瘍、虫垂炎、子宮外妊娠で手術歴あり。
【データ】WBC 13100、CRP 0.77
画像はこちら
腹部単純CTです。
小腸の拡張像およびニボー像を認めています。
こういった所見をみたら閉塞機転を探すと言うことで、拡張した腸管を追いましょう。(本講座でオススメしている系統的読影法も使いましょう。)
そうすると、、、
腸管の拡張がなくなる閉塞機転で腸管内に索状の構造があります。
カルテになにを食事したまでは記載がありませんでしたので、この正体がなになのかはわかりませんが、消化に悪いものを食べたためにここで食事が停滞しており、それによる腸閉塞と診断することができます。
これを食餌性腸閉塞(しょくじせいちょうへいそく)といいます。
食餌性腸閉塞の原因としては、
- 餅・ごぼうの様な咀嚼困難なもの
- 昆布の様な水分で膨化するもの
- コンニャク、椎茸のような消化の悪いもの
などがあります。
画像診断としては、小腸の機械性単純性腸閉塞とわかれば十分です。
診断:食餌性腸閉塞(小腸の機械性単純性腸閉塞)
※保存的に加療されました。
同じ小腸腸閉塞でも閉塞機転に
とさまざまなケースを見てきましたが、その違いをこの機会に復習しておきましょう。
今回は食物ですが、異物によるものですので、ここに相当します。
機械性単純性の中で、異物による小腸腸閉塞です。
関連:餅やコンニャクが原因に?食餌性イレウスのCT画像診断!
その他所見:
- 腹壁に術後瘢痕あり。
- 少量腹水あり。
- 石灰化子宮筋腫の疑い。
- 両側大腿骨頸部術後。
症例41の動画解説
症例41を正しい用語、系統的読影法を用いて改めて動画解説
食餌性腸閉塞について
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
確かに読影自体は段々とできるようになってきていると感じていますが、やはり疾患を見た経験がないと完璧な正解にたどりつくのは難しいですね。
小腸イレウスと閉塞起点、そしてそこに食べ物らしきものがあることは全てわかっていたのですが、
食餌性イレウスですか…その「食べ物らしきもの」自体がイレウスの原因だったわけですね。
今日も勉強になりました。またお願いします。
アウトプットありがとうございます。
>小腸イレウスと閉塞起点、そしてそこに食べ物らしきものがあることは全てわかっていた
ならば診断はできています。あとは、言葉の問題だけですので、全く問題ありません。
冠状断の27/71正中付近の先細りがbeak signのように見えるのですが、気のせいでしょうか
鋭いですね。確かに細く見えますね。横断像でも細く見えます。
この方胃を手術されていまして、胃と空腸が吻合されています。その先で少し細い部位があります。
ただしここより口側が拡張していたり、残渣が停滞しているわけではありませんので、有意ではないと考えます。
結腸が少し追いにくくて間違えてしまいました。
空気が多いと境界がわからなくなって、気づけば違う所にいってしまうことが多々あります…。
アウトプットありがとうございます。
>空気が多いと境界がわからなくなって、気づけば違う所にいってしまうことが多々あります
そうですね、空気が多いとちょっと濃度を変えられないと追いにくいことがありますね。
お世話になっております。
この症例は、癒着性か食餌性で悩みましたが、結局、既往より癒着性と判断してしまいました。
言われてみれば、狭窄付近の低信号域は糞便サインというより、索状の構造物であり食物に見えます。
違いを覚えておきます。
アウトプットありがとうございます。
>癒着性か食餌性で悩みましたが
癒着ならばbeak signのような所見が見られると思います。
>糞便サインというより、索状の構造物であり食物に見えます。
おっしゃるように今回は便というよりは索状の構造であり、食物でしょうね。
冠状断27/71付近の先細りを見て反射的にbeak signと判断し、思考停止しました…その前後での腸管径と食物残渣貯留有無と合わせて有意な所見が判断するよう気をつけます
解説動画で小腸をマウスで丁寧に追って頂けるのが良い目慣らしになって非常にありがたいです
些末なことですが本症例の横断像67/89と「餅やコンニャクが原因に?食餌性イレウスのCT画像診断!」ページの「70歳男性、腹痛、嘔吐」の画像は同一に見えるのですが、性別を変えてあるのは何か理由があるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>beak signと判断し
確かに冠状断で見るとそのように見えてしまいますね。ただしその前後で腸管が拡張していたりはありませんので、今回は関係ないと思われます。
>70歳男性、腹痛、嘔吐」の画像は同一に見えるのですが、性別を変えてあるのは何か理由があるのでしょうか?
女性ですね。意味はありません、単なる間違いです。修正しておきます。ありがとうございます。
子宮との癒着を疑ってしまいました。まだまだ知識や着目に見当違いな部分が多いのですが頑張っていきたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>子宮との癒着を疑ってしまいました
おっしゃるように子宮はすぐ近くにあるので癒着の可能性もゼロではありませんね。
コメント欄こそ、充分すぎる「補足」ですね(^▽^)/
>>beak signと判断し
>確かに冠状断で見るとそのように見えてしまいますね。ただしその前後で腸管が拡張していたりはありませんので、今回は関係ないと思われます。
今回はさらに、「心の目」でclosed loopを見つけてしまいました( ̄▽ ̄;)( ̄▽ ̄;)
>言われてみれば、狭窄付近の低信号域は糞便サインというより、索状の構造物であり食物に見えます。
>違いを覚えておきます。
なるほど~(^^♪
ちなみにちなみに、
今回の所見を「small bowel feces sign」と言うと、それ自体が誤りですか?
それとも、絞扼性でも食餌性でも呈しうる所見ですか?
>画像診断としては、小腸の機械性単純性イレウスとわかれば十分です。
え~~、難しいなぁ~~(;´Д`) と思いつつ、
>※保存的に加療されました。
ってことは、放科や外科の先生が見たら一発ってことなんですかね( ̄▽ ̄;)
がっ、がんばります( ̄▽ ̄;)!
アウトプットありがとうございます。
>ちなみにちなみに、
今回の所見を「small bowel feces sign」と言うと、それ自体が誤りですか?
それとも、絞扼性でも食餌性でも呈しうる所見ですか?
今回の所見も「small bowel feces sign」でよいと思います。
ただし、通常よく見る「small bowel feces sign」とは少し形態が異なります。
長軸方向に索状の構造を認めている点でです。
>それとも、絞扼性でも食餌性でも呈しうる所見ですか?
絞扼性でも食餌性でも認めます。
食餌性の場合は、お餅など高吸収なものが閉塞機転となる場合がありますが、
絞扼性でも癒着でも「small bowel feces sign」は認め得ます。
お疲れ様です。
保存的に加療されたとあるのですが、
薬を投与するとかの治療でしょうか?
それとも何もせず安静にしていると
詰まっている食事性のものが
自然にながれるということでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>詰まっている食事性のものが
自然にながれるということでしょうか?
イレウス管を入れたりして減圧をはかり、おっしゃるように自然に流れるを待つことになります。
経過を見てあまりに停滞している場合は手術になることもあります。
イレウスを疑いながらも、小腸ウィルス性感染性腸炎としてしまいました。。
SMAを中心に、whirl signのようにくるくる回っているのは、
手術が影響しているのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>SMAを中心に、whirl signのようにくるくる回っているのは、
手術が影響しているのでしょうか?
おっしゃるようにwhirl signとも取れる所見がありますが、
今回は明らかな閉塞機転があり、腸閉塞とは関係がないと考えます。
おっしゃるように、術後でも見えることがあります。
解説ありがとうございます。
たしかに、糞便というよりは食べ物のような線維物な感じに見えますね。
糞便と索状物を見分けるのはまだ自信はありませんが、機械性単純性イレウスと答えられるように頑張ります。
アウトプットありがとうございます。
>糞便というよりは食べ物のような線維物
そうですね。普段見かける糞便様構造とはやや異なります。
>機械性単純性イレウスと答えられるように頑張ります。
ですね。今回は異物に相当します。
上に表を追加しました。
閉塞機転の位置は大体分かったのですが、食餌性イレウスとまでは分かりませんでした。
腫瘍もないし、捻転もなさそう。でも閉塞しているという場合は、閉塞する理由を考えないといけないのですね。
残渣のところはdirty mass signとは言えないのですか?
あと昨日の問題でも思ったのですが、小腸はどのくらい拡張していれば病気的と言えるのですか?
アウトプットありがとうございます。
>腫瘍もないし、捻転もなさそう。でも閉塞しているという場合は、閉塞する理由を考えないといけないのですね。
単純性機械性、とわかればOKですが、さらにその原因まで考えられたらなおよいですね。
>残渣のところはdirty mass signとは言えないのですか?
dirty mass signは穿孔して腸管外に漏れ出た糞便を指しますので今回は関係ありません。
>あと昨日の問題でも思ったのですが、小腸はどのくらい拡張していれば病気的と言えるのですか?
小腸の場合は、3cm以上とも言われます。
が、一つの目安ですね。
液貯留が目立つ。
ニボー像がある。
ガス貯留が目立つ。
といった所見からの方が拡張を指摘しやすいですね。
今回は概ね正しく所見を述べることができました。
明日もよろしくお願いいたします!
それはよかったです(^o^)
明日もよろしくお願いします。
小腸の機械的閉塞で、部位も同定することができたのですが、索状の低吸収をfecus signと考えてしまい、食餌と思いつきませんでした。
手術歴もあるし、近くに索状構造があると思ってしまったので、癒着性かと考えてしまいました。
食餌性イレウスもときどき診断しているのですが、多くは高吸収の餅、形状が特徴的なキノコ(椎茸など)、塊状の低吸収になるこんにゃくばかりでしたので、こんな感じの陰影の場合、食餌性と気づけていなかった可能性があります(汗)。
慣れるまでは難しそうですが、鑑別にはあげるように、気にとめておくようにいたします。
勉強になりました。
最近は、なかなか正解にならず、自分の診断力に自信をなくしつつありますが、再度勉強する機会ととらえ、恥ずかしい解答ながらも最後まで頑張ります!
アウトプットありがとうございます。
>手術歴もあるし、近くに索状構造があると思ってしまったので、癒着性かと考えてしまいました。
今回については小腸の機械性単純性であることがわかれば治療法は同じですので、食餌性とまで診断できる必要はないと考えます。
>多くは高吸収の餅、形状が特徴的なキノコ(椎茸など)、塊状の低吸収になるこんにゃくばかりでした
逆にこのあたりは個人的にあまり経験がありません(;゚ロ゚)
>再度勉強する機会ととらえ、恥ずかしい解答ながらも最後まで頑張ります!
ぜひぜひ明日以降もよろしくお願いします。
今回もまた、自分の説明がつかない所見をスルーする癖が出てしまいました。いつもと違う何かが在るのであれば、所見として書く癖をつけなければと感じました。今回は単純性イレウスなので違うと思いますが、横行結腸と並走している拡張した結腸の壁が菲薄化していると読み、虚血のsignととらえました。如何でしょうか。もしそうであればclosed loopを形成している壁全域に見られるのでしょうか。よろしくお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
横行結腸と並走しているのは小腸です。
結腸の走行を動画にしました。
また補足ですが、SMA塞栓やNOMIで見たような腸管(小腸)壁の菲薄化が重要なのは小腸全体で見られる場合です。
SMA塞栓もNOMIも基本的にSMAの根元から詰まる(NOMIは必ずしもそうではないこともあるでしょうけど)ので、かなり広範に小腸壁の菲薄化が起こるのが特徴です。
腸閉塞の手術では索状物で腸が閉めつけられていたり、腹壁に癒着して腸管が急角度になっているのが見られます。イレウス管で保存的に腸閉塞が軽快してもその癒着は改善しないでしょうから、急な角度となったものが改善し、なんとか通過できるようになったと思われます。今回も癒着で元々通りが悪かったけど何とか通っていたところに、消化の悪いものがたくさんやってきて、通りにくくなったり、癒着により腸管の角度が悪くなったりして通りにくくなったのではないかと思います。つまり、食餌性でも、癒着性腸閉塞でも同じ現象を見ているのではないかと思いました。
アウトプットありがとうございます。
>つまり、食餌性でも、癒着性腸閉塞でも同じ現象を見ているのではないかと思いました。
単なる食餌性の場合は、癒着がベースにないものも含みますが
癒着があるところに消化の悪いものが来て、ということはあると思います。
つまり、癒着がある人はない人に比べて食餌性腸閉塞が起こりやすいとも言えますね。
複雑性腸閉塞にしては腹部所見や炎症所見に乏しいなと思いつつ、65/89スライスの、食残で閉塞起点となっている腸管のすぐ背側にある腸管にbeak signありと判断し、既往から癒着性と考えてしまいました。
複雑性であるかどうかの判断には、腸管壁のCT値の変化や腸間膜の脂肪織濃度上昇も目安になるのですね。勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>65/89スライスの、食残で閉塞起点となっている腸管のすぐ背側にある腸管にbeak signありと判断し、既往から癒着性と考えてしまいました。
閉塞機転であろうところを見つけたあとで本当にその口側腸管が拡張しているのか丁寧に追うことが、閉塞機転と診断する上で重要ですね。
今回はsmall bowel feces signとしてはちょっと矛盾する食塊がありましたので、食餌性腸閉塞だろうと診断されました。
しかし大事なのは単純性の機械性の腸閉塞であろうということに気づく点であり、その原因を癒着としても大きな問題はありません。
>複雑性であるかどうかの判断には、腸管壁のCT値の変化や腸間膜の脂肪織濃度上昇も目安になるのですね。勉強になりました。
そうですね。腸間膜の浮腫や、腸管壁肥厚、あとはclosed loopを確認できるかなどが重要ですね。
一番わかりやすいのは、症例26で見たような周りと明らかに異なる腸管群がを認める場合です。
症例26
https://imaging-diagnosis.com/view/Yt7hPJfc