
【頭部MRA】症例26
【症例】20歳代 女性
画像はこちら
両側の内頸動脈終末部、前大脳動脈・中大脳動脈近位部を認めておらず、前大脳動脈・中大脳動脈は末梢が細く描出されています。
また細かい血管を多数認めていることがわかります。
MIP像を横から見ると、内頸動脈終末部、前大脳動脈・中大脳動脈近位部を認めておらず、後大脳動脈(PCA)の発達があることがわかります。
正常例と比較すると、内頸動脈終末部、前大脳動脈・中大脳動脈近位部の描出不良が明らかですね。
※正常例では、前大脳動脈・中大脳動脈に色をつけています。
元画像においても、内頸動脈は終末部で消失し、多数の細かなもやもやした血管を認めています。
そう、もやもや血管です。
これがもやもや病です。
T2WIではflow voidとして認めるべき、内頸動脈終末部、前大脳動脈・中大脳動脈近位部を認めておらず、その代わりにかなり細かい多数の血管を認めていることがわかります。
もやもや病は、Willis動脈輪閉塞症とも呼ばれ、内頸動脈終末部、前大脳動脈・中大脳動脈近位部に狭窄や閉塞を生じます。
それを代償しようと複数の側副血行路が発達します。
- もやもや血管
- 後大脳動脈系
- 外頸動脈系
といったものです。
後大脳動脈が発達しているのは、軟髄膜吻合を介して前方循環系領域に側副血行路を形成するためですね。
その軟髄膜吻合による皮質枝末梢の血流増加と拡張、血流速度の軽度遅延を示唆するのが、FLAIRにおけるIvy signとも呼ばれる脳表の血管の高信号です。
ivyとは「ツタ」のことで、ツタのように血管が走っているのが見えるという意味ですね。
FLAIRにおける血管の高信号としては、脳梗塞のときのintraarterial signalがありましたが、それとは機序が異なるということです。
診断:もやもや病
【頭部MRA】症例26の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
もやもやと思いながらも?をつけてしまい自信もあやふやでしたので今後自信が持てます。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>もやもやと思いながらも?をつけてしまい
MIP像だけをみると個人的にも「ん?見えにくい人なのか?」などと思ってしまうことがあります(^_^;
T2WIやMRA元画像を見るともやもや血管を確認することができますので、
それで、「ああだからこのMIP像なのか、合点!」となりますね。
両側PCAが目立っていたのは、ただ単に「両側MCAやACAが見えないため」というのではなく、代償性に発達していたのですね…。新生血管、PCA系、外頚動脈系の3つの代償を覚えておきます。
アウトプットありがとうございます。
>代償性に発達していたのですね
ですね。門脈圧亢進時と同様に、人体の不思議というか、代償能力のすごさを感じますね。
Ivy signは知らなかったです。
勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
名前がカッコいい(?)サインなので是非覚えておいてください。
つい最近小児の頭部MRAで、片側のM2に強い狭窄、末梢は健側同様の血流があり、その他代償性の発達もない症例がありました。片側タイプで、かつ初期段階のもやもや病でしたのでいつも見る典型的なものではなく、こんなのもあるんだなと思いました。
アウトプットありがとうございます。
>片側タイプで、かつ初期段階のもやもや病でしたのでいつも見る典型的なものではなく、こんなのもあるんだなと思いました。
片側タイプはありますが、初期段階というのはみたことがありません。
代償性発達がなければその部位はどうやって血流を得ているのでしょう・・・。
いつも分かりやすい動画をありがとうございます!
一つ伺いたいのですが、この患者さんは頭痛などを主訴に受診されたのでしょうか?
その場合、おそらく内科では最初に頭部CTが行われることが多いと思うのですが、
もやもや病には、CTでひっかけられるような所見はあるのでしょうか…?
CTで何もない20代の頭痛であれば、
(随伴症状にもよりますが)MRIまでオーダーすることの方が少ないかな?と思ったので
この方がなぜMRIまで施行されたのかが気になりました。
アウトプットありがとうございます。
もやもや病でフォローされておられる方です。
定期的なMRI検査です。
症状はない状態ですが、もともと見つかった際には症状があったのかもしれません。
この方がMRI施行された理由は何かあったのでしょうか?失神や痙攣などの症状があったのでしょうか
アウトプットありがとうございます。
もやもや病でフォローされておられる方です。
定期的なMRI検査です。
症状はない状態ですが、もともと見つかった際には症状があったのかもしれません。