
【頭部】症例67
【症例】60歳代 男性
【主訴】性格変化
【現病歴】ADLはもともと自立していた。10日前まで仕事でメキシコに行っていた。帰宅した際に普段なら言わないようなことを言ったため、妻が違和感を感じた。表情もいつもと違い、妻の付き添いがないと外出できないようになったため、当院外来受診となる。
【既往歴】糖尿病、発作性心房細動、両下肢静脈瘤、貨幣状湿疹
【身体所見】覚醒は良いが見当識障害、記憶障害あり、四肢症状なし、頭痛あり。
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MRI
DWIでやや左優位に側脳室内に異常な高信号を示す腫瘤があり、同部に一致してADCの信号低下を認めています。
DWIでの高信号やADCの信号低下は、ほぼ均一です。
左側では側脳室下角から周囲の実質にかけて異常な腫瘤影を認めていることがわかります。
腫瘤は、T2WIでやや高信号、T1WIでは等~やや低信号、造影で均一に造影されています。
また、脳室に沿った造影効果も認めています。
T2WIでは脳室周囲に高信号な著明な浮腫性変化を認めています。
造影T1WIでは脳室周囲に造影効果が著明で、一部脳室外にも造影効果を認めています。
- DWIで高信号、ADC信号低下
- 造影で均一に造影されている
- 腫瘤は脳室内や脳室周囲に認めている。
こういった腫瘤を見た場合に考えなければならないのが、
悪性リンパ腫
です。
頻度の多い転移や膠芽腫との信号パターンの違いを覚えておきましょう。
※生検にて悪性リンパ腫と診断され、化学療法が施行されました。
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【頭部】症例67の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
脳室に沿っていたため、上衣細胞由来のものと思い込んでしまい、染まり方や顔つきが違うなと感じながらもテント上の上衣腫としてしまいました。悪性リンパ腫のリンクをしっかり読んで頭に入れておきます。
アウトプットありがとうございます。
>悪性リンパ腫のリンクをしっかり読んで頭に入れておきます。
腫瘍の進展の仕方や発生部位、信号パターンをチェックしてみてください。
メキシコに引っ張られ、悪性リンパ腫が全く浮かびませんでした。反省です。悪性リンパ腫の復習をして、寄生虫の所見も再確認したいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>メキシコに引っ張られ
確かにここに引っ張られますね・・・。
「帰宅した際に普段なら言わないようなことを言ったため、妻が違和感を感じた。」
ですからね。何か感染症を貰ってきたなと思いますね(^_^;
今日もありがとうございます。
僕も海外渡航歴に引っ張られてリンパ腫が全く頭に浮かびませんでした…
アウトプットありがとうございます。
>海外渡航歴に引っ張られて
やはり引っ張られますよね(^_^;
脳室上衣細胞からの進展と思ってしまいましたが,悪性リンパ腫の典型像なのですね.
左右への進展は膠芽腫・悪性リンパ腫の特異所見ということなので,しっかり覚えておこうと思います.
アウトプットありがとうございます。
>左右への進展は膠芽腫・悪性リンパ腫の特異所見ということなので,しっかり覚えておこうと思います.
そうですね。この二つは非常に有名なので、有名どころは押さえておきましょう。
おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
脳腫瘍のMRIは難しかったです。
脳室内進展から「上衣腫」が最も疑わしい、と解答しましたが、違いました…。
上衣腫の場合は
①テント上発生の場合、腫瘍内の大小の嚢胞を反映してもっと造影効果が不均一になるはず
②両側にまたがってバタフライ状に進展はしない
③腫瘍内の出血や嚢胞、石灰化を反映してMRI信号強度は不均一なことが多い
という点で、鑑別から除外されるということですね。
とくに②が最も重要な鑑別点なのかな、と個人的に感じました!
アウトプットありがとうございます。
>とくに②が最も重要な鑑別点なのかな、
そうですね。両側に生じることがあるのが、悪性リンパ腫や膠芽腫の特徴とされます。
また悪性リンパ腫の場合はDWI高信号、ADCの信号低下が診断に非常に有用です。
いつもありがとうございます。患者さんの免疫学的な背景も重要ですね。免疫正常例と免疫低下例で造影効果が異なるとのことですが、何か理由はあるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>免疫正常例と免疫低下例で造影効果が異なるとのことですが、何か理由はあるのでしょうか?
どうして造影効果が異なるのかはわかりませんが、免疫状態により造影効果が異なることが報告されています。
頭部に限らず胸部などでも免疫状態によって生じる陰影が異なることがあります。
ほかのかたもコメントされているように、メキシコにやられました(;^_^A
寄生虫なのかなぁと。
脳腫瘍、なかなかむつかしいですが、せっかくなので特徴を整理して覚えていきたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
メキシコに引っ張られますよね(^_^;)
>脳腫瘍、なかなかむつかしいですが、せっかくなので特徴を整理して覚えていきたいと思います。
脳腫瘍は本当に難しいですね。NRといって神経放射線の研究会に行っても、専門の先生でも豪快に診断を外すことはしばしばあります。いわんや、、、をやですね。
まずは今回の講座で出てきたくらいの脳腫瘍は押さえておいていただけたらと思います。