【頭部】症例56 解答編

【頭部】症例56

【症例】60歳代男性
【主訴】左半身の脱力、呂律困難
【現病歴】本日夕方に急に上記症状が出現、自宅内で転倒した。同居している息子が発見し救急要請。
【既往歴】なし
【内服薬】なし
【身体所見】JCS-2 、BP 162/88mmHg、P 92回/分、BT 35.8℃、
軽度の左半側空間無視あり、軽度の左顔面神経麻痺あり、軽度の構音障害あり、左上肢MMT 4/5、左下肢MMT 5-/5

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来院後入院となり、●日後にMRIが撮影されました。

右被殻を中心に一部尾状核にも及ぶと思われる血腫を認めています。

右被殻出血を疑う所見です。

血腫のサイズは、長径5.5cmと大きめですが、周囲浮腫性変化や圧排所見、脳ヘルニア所見はほとんど認めていません。

保存的に加療されました。

そして、それから●日後にMRIが撮影されました。

とくに前後方向にかなりサイズの大きかった血腫は吸収されている様子が分かります。

血腫は前後方向のスリット状構造を示しており、

  • T1WI:低信号
  • T2WI:辺縁低信号、内部高信号
  • SWI:著明な低信号

となっています。

これは血腫のどの時期に相当するでしょうか?

慢性期ですね。

T2WIではヘモジデリンの沈着を反映して、辺縁に低信号を認めるのが特徴です。

今回のMRIは発症から3ヶ月後に撮影されたものです。

 

診断:右被殻出血(慢性期)

 

※慢性期は1ヶ月以上ですので30日以上となります。

 

超急性期→急性期→亜急性期早期と来たのだから、今回は亜急性期後期にするのではなかったのか?

ひねくれ者か?

まあ、ちょっと変えないとメリハリがないじゃないですか。
もしかして、亜急性期後期相当の画像がなかったのでは?
い、いや、そ、それは・・・。
まあ、次の症例を見ればわかることかな。

ちなみに、SWIでは今回の出血部位の他に、両側小脳歯状核、左被殻、他皮質下白質などに多数の無信号域を認めていますので、陳旧性多発微小出血があることがわかります。

またこれらの出血部位は、小脳歯状核、左被殻という高血圧性微小出血の好発部位が含まれていますので、(今回来院時に高血圧があることを考えても)やはりいずれも高血圧による微小出血が疑われます。

 

関連:脳出血(血腫)のMRI画像における経時的変化まとめ!

その他所見:

  • 両側上顎洞に貯留嚢胞あり。
  • 両側視床に陳旧性ラクナ梗塞の疑い。深部白質変性やや目立つ。
【頭部】症例56の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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