症例36 解答編

症例36

【症例】50歳代女性
【主訴】嘔吐、便秘
【身体所見】腸音に異常なし、左腹部に圧痛あり。
【データ】WBC 15500、CRP 4.07

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全結腸および一部回腸に拡張像を認めており、結腸には液貯留およびニボー像を認めています。

大腸イレウス腸閉塞を疑う所見です。

大腸が拡張するということは、下のように当然閉塞機転は結腸〜直腸、肛門にあるということになります。

イレウス腸閉塞を見れば閉塞機転を探す!ということで、結腸を肛門側に追っていくと、

S状結腸で拡張は終わり、その先にはほぼ均一な造影効果を示す腫瘤影を認めています。

炎症などで3層構造を保ったまま粘膜下層が厚くなるのとは異なり、3層構造ははっきりしません。

腫瘍(S状結腸癌)を疑う所見です。

手術にてS状結腸癌と診断されました。

ちなみに腹側の脂肪濃度の腫瘤は卵巣の成熟嚢胞性奇形腫を疑う所見であり、こちらも手術の際に摘出され、左成熟嚢胞性奇形腫と診断されました。

なお、左の総腸骨動脈沿いにリンパ節腫大を認めており、転移が疑われます。

診断:(S状結腸癌による)大腸イレウス腸閉塞

小腸の腸閉塞の場合は、最も多いのは癒着によるものでしたが、大腸イレウス腸閉塞の原因は、

  • 大腸癌(60%)>軸捻転症(10~15%)>憩室炎。

となっています。

ですので、大腸イレウス腸閉塞を認めた場合は、腫瘍がないかを積極的に探しに行くことが重要です。

関連:大腸腸閉塞のCT画像診断のポイントは?原因、治療は?

その他所見:

  • S状結腸間膜や傍大動脈などに小リンパ節散見。こちらも転移の可能性あり。
  • 右腎嚢胞あり。
症例36の解説動画

大腸閉塞症について

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