
【頭部MRA】症例19
【症例】70歳代女性
画像はこちら
一見気付きにくいですが、左の内頸動脈(ICA C1)から下方に突出する動脈瘤様構造を認めています。
元画像で見てみますと左の後交通動脈(Pcom)起始部からやや外側下方に突出する3mm大の動脈瘤を認めています。
同部は、内頸動脈後交通動脈分岐部と言われ、動脈瘤の好発部位でした。
ただし、同部の動脈瘤で注意する正常変異として、漏斗状拡張がありました。
これらの鑑別点は以下の通りです。
今回はどうでしょうか?
- 向かう方向:後ろでやや外側下方に向かう→動脈瘤ぽい
- 動脈分枝との関係:根元から動脈分枝出ている→動脈瘤ぽい
- 形状:嚢状~円錐状→どちらもあり
- サイズ:3mm程度→どちらもあり
前者2点から動脈瘤ぽいと診断することができます。
とくに動脈分枝との関係が上のイラストでも見たように重要です。
診断:左内頸動脈後交通動脈分岐部(IC-PC)動脈瘤
参考症例を1つ見てみましょう。
右内頸動脈(ICA C1)から後方に突出像を認めています。
このスライスだけ見えると先端から細い血管が出ている様にも見え、漏斗状拡張との鑑別はこれだけではできないことがわかります。
正面像で見ると、下外側に突出しており、嚢状の形態です。
いかにも動脈瘤のような形ですね。
元画像においても右内頸動脈(ICA)のC1から外側下方に向かう最大径6mm大の突出像を認めています。
よくみるとこの突出像の起始部から細い血管を認めていますが、後大脳動脈との連続はなく、後交通動脈(Pcom)ではないことがわかります。
これは前大脳動脈から分岐する穿通枝であり、前脈絡叢動脈(Acho)と呼ばれる血管です。
ですので、内頸動脈前脈絡叢動脈分岐部(IC-Acho)動脈瘤ということになります。
正確には内頸動脈後交通動脈分岐部(IC-PC)動脈瘤ではないのですが、内頸動脈後交通動脈分岐部(IC-PC)動脈瘤と報告されている症例に一定の割合で(かなりの割合で?)この内頸動脈前脈絡叢動脈分岐部(IC-Acho)動脈瘤が含まれているのではないだろうかと思われます。
正確にはICーPC動脈瘤ではないのですが、上の表の項目を評価していくと、
- 向かう方向:後ろでやや外側下方に向かう→動脈瘤ぽい
- 動脈分枝との関係:根元から動脈分枝出ている→動脈瘤ぽい
- 形状:嚢状→動脈瘤ぽい
- サイズ:6mm程度→動脈瘤ぽい
といずれの所見も動脈瘤を示唆する所見ですね。
診断:内頸動脈前脈絡叢動脈分岐部(IC-Acho)動脈瘤(内頸動脈後交通動脈分岐部(IC-PC)動脈瘤では正確にはないですが、これでもよいかと思われます。)
【頭部MRA】症例19の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
動脈瘤と漏斗状拡張の鑑別は慣れないと難しそうなので、今のうちに丁寧に確認しておきます。
アウトプットありがとうございます。
>動脈瘤と漏斗状拡張の鑑別は慣れないと難しそう
ですね。
慣れても難しいですけどね(^_^;
明らかに鑑別できるものを間違えないようにしましょう。
動脈瘤と漏斗状拡張の復習ができました。まとめて頂いた表をチョックして再確認しました。
アウトプットありがとうございます。
復習になって良かったです。鑑別のポイントがいくつかありますので見つけたら確認するようにしましょう。
今回の症例はかなり見にくいですね.最初に違和感を感じたものの,異常があると思って見なければ見逃していたと思います.
アウトプットありがとうございます。
この部位の動脈瘤は、MIP像だけ見ているとスルーしがちですね。
ですが好発部位ですので、見落とさないように、
かつ明らかな漏斗状拡張を動脈瘤としないように注意も必要ですね。
逆もですが。
完全に見落としました。元画も確認したつもりだったのですが。。。良い経験になりました。
アウトプットありがとうございます。
IC-PC動脈瘤は頻度も高く、MIP像では気づかないこともありますので元画像でも同部を必ずチェックしましょう。
今回の症例といいますか、いつも読影していて感じることなのですが…
目の錯覚なのでしょうか、MRA画像を動かしているとたまに血管どうしの奥行きがわからなくなることがあります。
画像を回転させているときに、どちら方向に回転させているのかわからなくなるといいますか…!
今回も瘤を同定したのですが手前に突出しているのか奥に突出しているのか一瞬わからなくなりました。
アウトプットありがとうございます。
>MRA画像を動かしているとたまに血管どうしの奥行きがわからなくなることがあります。
これは皆さんよくあることだと思います。MIP像では後ろなのか前なのか、右なのか左なのか・・・「アレ?」ということはしばしばあります。
そのまま収録していますが、動画内で迷子になっていることもたまにありますよ(^_^;
>今回も瘤を同定したのですが手前に突出しているのか奥に突出しているのか一瞬わからなくなりました。
まず正面の画像に一旦戻ってから(リセットしてから)再度回転させて確認する方がいいですね。
また元画像との対応が必須ですね。
動脈瘤の診断にT2画像の重要性を認識しました。MRA画像の判別が難しいときにぜひ参考にします
アウトプットありがとうございます。
サイズが大きい場合は特にT2WIが有用ですね。
いつもありがとうございます。毎日とても勉強になっています。
今回は、先端から何かの血管が出ている気がするという1つの情報に引っ張られて漏斗状拡張として他を探しに行ってしまいました…後発部位、動脈分岐との関係を把握していればPcomが瘤の脇から出ていると捉えることができたのでは…と反省しました。
ここで質問なのですが、mriの中でも血管の本数が少なく見やすいものと、今回のように血管まみれで見づらいものがあるのですが、これはテスラの違いと言う認識で間違いないでしょうか?
また、下矢状静脈洞の一部が描出されているので、PCAからの動静脈瘻を形成していると考えたのですが(両側PCAからなのでおかしいのですが…)これは正常変異の逆流と捉えて良いのでしょうか?
個人的見解の質問で恐縮ですが、回答して頂けると幸いです。
アウトプットありがとうございます。
>ここで質問なのですが、mriの中でも血管の本数が少なく見やすいものと、今回のように血管まみれで見づらいものがあるのですが、これはテスラの違いと言う認識で間違いないでしょうか?
おっしゃるようにテスラの違いです。
外勤先で0.1テスラのMRAを読影していますが、主幹動脈さえ見えにくいことがあります(^_^;)
>これは正常変異の逆流と捉えて良いのでしょうか?
そうですね。それでよいと考えます。