
【頭部MRA】症例5
【症例】60歳代女性
画像はこちら
左の椎骨動脈はどうなっている?
MIP像では左椎骨動脈(VA)を確認することができません。
左椎骨動脈から分岐している左後下小脳動脈(PICA)は確認出来ますが、そこで椎骨動脈は終わっている様に見えます。
これを、椎骨動脈末端部低形成と言い、臨床の現場はしばしばPICA endとか、PICA terminalなどと呼ばれる正常変異です。
※むしろ、椎骨動脈末端部低形成と言っている人は稀かもしれません。
さて、BPASで左の椎骨動脈を見てみると、わずかに認めていることがわかります。
つまり、先天的に欠損しているわけではなく、後天的に閉塞したと考えることができます。
またMRAの元画像でもその目でよくよく見てみると、わずかに細い左椎骨動脈(VA)が存在している様子が分かります。
これはBPASとの見え方に差がありませんので、解離などではないことがわかります。
診断:左椎骨動脈末端部低形成(PICA end、PICA terminal)
症例4で見た、椎骨動脈低形成との違いは、後下小脳動脈(PICA)以降の末梢のみに低形成を認めるという点です。
つまり、上の様に後下小脳動脈(PICA)までは普通に認めていますが、その後がMRA(とくにMIP像)で描出がないものを椎骨動脈末端部低形成と言います。
さらに、椎骨動脈末端部低形成は
- 先天的に欠損しているタイプ
- 後天的に閉塞したと考えられるタイプ
に分けることができます。
先天的に欠損しているタイプでは、欠損していますので、いくら外形写真であるBPASを撮影しても写ってきません。
一方で後天的に閉塞したタイプでは血流は確認できなくても、外形写真には細いなりに写ってきます。
ですので、今回の症例ではBPASでは細いながら確認することができましたので、後天的に閉塞したタイプと言うことができます。
【頭部MRA】症例5の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
PICA endという言い方があるのですね。確かに低形成のVAからPICAが分岐しているというよりも、VAが直接小脳に入っているような印象でした。
アウトプットありがとうございます。
MRA MIP像でPICA endでも、元画像やBPASではわずかに認めるというケースが多いですね。
なので、先天的な真のPICA endというのは実は少ないのではないかと考えています。
椎骨動脈もいろいろな正常変異があるのですね、知らないと え?
動脈が、ない…としか思わなかったと思います。
この講座でパニックにならずにすみそうです。
ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
PICA endはMIP像のみでは割とありますので覚えておいてください。
2症例連続で低形成ってこともあるのかな・・・と不安でしたが、確かに、前回とはまた違う様相を呈していました。
BPASの使い方にも慣れてきました(^▽^)/
アウトプットありがとうございます。
>BPASの使い方にも慣れてきました(^▽^)/
よかったです。BPASは見た目ですね!
次回から、後下小脳動脈以降の低形成を見た場合、「PICA end(PICA terminal)」とかっこよく記載したと思います。
かっこいいっす!
最初はいつもより太い右椎骨動脈に目がいきましたが,左椎骨動脈が細いことによる代償なのかなと思いました.PICA terminalということば使いたくなりますね.
アウトプットありがとうございます。
>PICA terminalということば使いたくなりますね.
研修医の先生が使っていたら、周りの目が変わります!!w
低形成+閉塞と考えましたが、正常変位かは知らなかったので一回聞くと次からは安心です。類似例がこの後出てきて混乱することになるかもしれないのが不安です。
アウトプットありがとうございます。
>類似例がこの後出てきて混乱することになるかもしれないのが不安です。
(^▽^)
それは・・・・・・・・
今後のお楽しみです(悪)
今日もお世話になりました!
もし知らなかったら現場であたふたしてしまいそうな画像だと思いました。
昨日に引き続き、MRAとBPASを比較して狭窄や解離がないか確認しながら読影できました!
アウトプットありがとうございます。
これ割と頻度の高い正常変異ですが、
「途中から見えないけどまあいいか」
「低形成なのかな、まあいいか」
としている人も多いと思います。
正常変異なので、「まあいいか」で良いのですが、元画像でもしっかり確認したいところですね。
PICA endは先天的な破格だと思っていました。後天的のこともあるのは意識してなかったです。
アウトプットありがとうございます。
BPASでのみ認める細いものは後天的と覚えておきましょう。
いつも楽しく勉強させて頂いております。
後天的に閉塞したタイプでは、脳梗塞などの脳血流障害は発生しないのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
対側の椎骨動脈が閉塞や狭窄すると脳梗塞になることはあるでしょうけど、対側が大丈夫ならば脳梗塞にはならないと考えられます。
もともと低形成な椎骨動脈なので、脳底動脈への血流供給は少ないところに、太い対側の椎骨動脈が「こっちでやるから休んでおけ」的な感じで閉塞するのかもしれません。
まだMRAに慣れていないので、症例1-3で学んだ正常変異も確認させていただいてもいいでしょうか。
右のP-comも低形成だと判断したのですが、いかがでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように左に比べると右のP-comは細く低形成といえますね。
いつもありがとうございます。PICA-endの人では、もし健常側の椎骨動脈に梗塞が起きると脳底動脈に血流が行かなくなり、脳幹梗塞となってしまうということでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>PICA-endの人では、もし健常側の椎骨動脈に梗塞が起きると脳底動脈に血流が行かなくなり、脳幹梗塞となってしまうということでしょうか?
おっしゃるとおりです。
完全に閉塞している場合は脳底動脈の血流がなくなります。
ただし、Pcomがあれば前方循環系から血流を得ることも考えられます。
2周目です。1周目よりじっくりと落ち着いて画像を見ることができるようになって自分でも驚いています。
MRA元画像37/162に右椎骨動脈から内側方向に瘤状の突起が見えるのですが、PICA分岐よりも吻側でこんなところに動脈瘤ができるのかな?と思いつつ、漏斗状拡張とするには脳幹へ向かう細い動脈を見つけられずモヤモヤしています。。。
アウトプットありがとうございます。
2周目ご参加いただきありがとうございます(^^)
>MRA元画像37/162に右椎骨動脈から内側方向に瘤状の突起が見えるのですが
確かに小さなものがありますね。MIP像でも確認でき、やはり小さな動脈瘤があるのだと考えられます。
漏斗状拡張とすると連続する細い血管があるはずですので。