
症例45
【症例】70歳代女性
エコーで右腎腫瘍が疑われたため精査となった。
画像はこちら
右尿路に奇形がありますが、どんな奇形?
あまり何も考えずに画像を見ていると見落としてしまいそうな所見ですが、右腎は重複腎盂(腎盂が2つある)であり、それぞれから尿管が出ていることがわかります。
※なお重複腎盂の様子は冠状断像の方が同じスライスで見られるためわかりやすいです。
骨盤内では左同様に右の尿管は1本になっていることがわかり、右の2本の尿管はより頭側で合流しているということがわかります。
先ほど解説したように、冠状断像で腎盂が2つある(重複している)様子がよく分かりますね。
また2つの腎盂からそれぞれ尿管が出ている様子がわかります。
腎盂が2つあり、尿管も2本あることから、このような奇形を重複腎盂尿管と言います。
今回のケースでは2本の尿管は途中で合流しているのですが、合流しないまま膀胱に開口するものもあります。
その場合は、完全型の重複腎盂尿管と言います。
今回のように途中で合流するものは、不完全型の重複腎盂尿管と言います。
診断:右重複腎盂尿管(不完全型)
右側の2本の尿管はどこで合流しているのでしょうか?動画を撮影しながら追ってみました。
その他所見:
- 胆石多数あり。
- 膵頭部脂肪置換軽度あり。
- 小腸間膜沿いに小リンパ節散見。
- Th12圧迫骨折あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
重複腎盂は昔泌尿器科の先生に上の腎盂から出てる方が膀胱のでは下側に開口しやすいことと、上側の尿路障害が起きやすいことを教えてもらった記憶があります(これは膀胱壁を通過する距離に関係すると―短いとVURになりやすい―・・・奇形なので毎回そうではないようですが)。不完全重複腎盂の場合は圧の関係もあるのか、今回ご提示いただいた症例のように片側に造影剤が行き届きにくくなる場合(ちょっとバックフローしてますね)があるので、放射線技師としては10分くらい待った排泄相を撮りたくなってしまいます。被ばくの問題があるので本来はKUB(IVP)を取る方が良いのかもしれませんが・・・。異所性開口なのかと(追いかけ間違ってました)初見時に思っていて、私のような未熟な人のためにも造影剤しっかりの画像を撮りたいと思いました。うまく連携取りながら自施設では患者さんのためになれればよいですが、本当は先生のようにpoorな検査状態でもしっかり読めるようになりたいものです。
アウトプットありがとうございます。
>今回ご提示いただいた症例のように片側に造影剤が行き届きにくくなる場合(ちょっとバックフローしてますね)があるので、放射線技師としては10分くらい待った排泄相を撮りたくなってしまいます。
そうですね。確かに排泄相も見たいところですね。
この方は撮影前には診断されていませんでしたので、排泄相まではオーダーされていないのが残念ですね。
そこで技師さんが気付いて「追加いかがでしょう?」と言ってくださればよいのかもしれませんが、施設や状況によってはなかなか難しいでしょうね。
いつも貴重な症例をありがとうございます。
当施設では、
「泌尿器系オーダーでないこと。
症状が無いこと、腎機能正常であること。
泌尿器系に明らかな腫瘤影が無いこと。
右腎盂排泄遅延あるが合流部まで造影されていること。
両側尿管の造影剤が膀胱移行部まで排泄されていること。」
などから、一部仮定の条件もありますが、super delay相は追加撮像しないかも知れません。解剖学的には撮りたい気はしますが、臨床的意義からすると少し後ろめたいですね。
個人的には正常奇形、変異は臨床的意義をより重視して検査することが大切だと感じます。どんどん追い求め追加検査、追加撮像したくなりますが(笑)
検査目的
「エコーで右腎腫瘍が疑われたため精査となった。」
だったのですね。
これであれば、本症例の臨床的意義はあまり高くないかも知れませんが、super delay相、撮ります。
アウトプットありがとうございます。
腎盂や尿管を観察するにはあったほうがいいですね。
今回は、super delay相は撮影されていません。
右尿路に奇形、というと今思えばもの凄いヒントのようですが、それでもかなり苦労しました。
よくよく見ると、腎盂の形が変だな…という感じで。
知らなければ見逃すことも多そうです(;’∀’)
アウトプットありがとうございます。
>知らなければ見逃すことも多そうです(;’∀’)
そうですね。横断像だけだと気付かないケースもあるかと思います。
尿管が2本あったのですね…全く気がつきませんでした。
右腎臓の皮質が肥厚しているように見えたので、Bertin柱の肥厚としてしまいました。今後、注意深く観察したいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>Bertin柱の肥厚としてしまいました。
逆にこのBertin柱の肥厚の症例を探しているのですがなかなか見つかりません(^_^;
重複腎盂・・・知りませんでした。勉強になります。
右の腎盂(腎臓)が形がおかしいなとしか考えがおよびませんでした。
2つあることがあるということで覚えておいてください。
こんにちは。いつもありがとうございます。
今日は正答できました!ワイゲルト・マイヤーの法則を確認する絶好の機会!と思いきや、不完全型で確認できませんでしたね…。
アウトプットありがとうございます。
>ワイゲルト・マイヤーの法則を確認する絶好の機会!と思いきや、不完全型で確認できませんでしたね
ですね・・・。
いくつか症例を探してみたのですが、完全型を見つけられませんでした(^_^;)
横断像では右腎のどこがおかしいのかわかりませんでした。冠状断でああ、そうか、とわかりました。
尿管が合流せずに膀胱に到達するものと、途中で合流するものがあるということも知らなければ、
どっちかなと探すこともないでしょう。疾患を知ることで深く読めていけるのですね。
アウトプットありがとうございます。
確かに横断像ですと気づきにくいですね。尿管を追う際に気づくかもしれませんが、冠状断像がわかりやすいですね。
>尿管が合流せずに膀胱に到達するものと、途中で合流するものがあるということも知らなければ、
どっちかなと探すこともないでしょう。疾患を知ることで深く読めていけるのですね。
そうですね。尿管の走行が途中でわからなくなることが正常例でもよくありますが、冠状断もあわせて確認したいところですね。
Celiac がやや細く感じます。
また脾動脈がSMAから分岐しているように見えます。
Celiac の細さとSMA の分岐に何か関係はありますか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように腹腔動脈(CA)がかなり細いですね。
CA、上腸間膜動脈(SMA)からの血管の分岐様式はさまざまなタイプがあり、総肝動脈、脾動脈、左胃動脈をCA,SMAどちらから分岐するかで、15通りあると、ちょうど今月の月刊画像診断にも記載があります。
おっしゃるように今回SMAから脾動脈が分岐しており、CAの細さと分岐には関係がありそうですね。
参考:画像診断 Vol.41 No.6 2021 P565