
症例31
【症例】70歳代男性
スクリーニング
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膵に何が起こっている?
膵頭部から膵体部にかけて広範に膵組織の間に霜降り状に脂肪組織が入っていることがわかります。
これを膵の脂肪置換(脂肪浸潤)といいます。
膵頭部や膵尾部にもこの脂肪置換を認めていますが、背側の膵は比較的膵組織が保たれていることがわかります。
この膵の脂肪浸潤は、とくに高齢者や肥満、糖尿病患者において種々の程度に認められることが知られており、以下の4つのタイプに分類されると報告されています。
(Radiology 1995;194:453より引用改変)
今回の症例では、この分類によると、Type 1bということになります。
実は、膵臓は
- 腹側膵→膵鉤部と膵頭下部
- 背側膵→膵頭上部から頚部、体部、尾部
と発生原基が異なることが知られています。
脂肪置換の分布に偏りがあるのも、この発生原基も関与していると考えられています。
また、膵の脂肪置換(浸潤)は、上記の他、慢性膵炎、肝疾患、栄養障害、ウイルス感染、ステロイド療法、膵管閉塞、膵嚢胞性線維症などに合併することが多いとされています。
ではこちらの症例ではどうでしょうか?
こちらの症例では、膵体部から膵尾部は正常膵であり、脂肪に置き換わってはいません。
ところが膵頭部の一部のみ脂肪に置き換わっています。
先ほどの分類によると、Type 1a ということになります。
加齢により、膵は萎縮し、脂肪置換傾向にあるのが通常ですが、このように脂肪置換を起こす範囲に偏りがあることがあることを知っておきましょう。
診断:膵脂肪置換(脂肪浸潤)
その他所見:肝嚢胞及び腎嚢胞あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
お世話になっています。
膵臓の脂肪置換に伴う何らかの症状というのは見られないのですか?(例えば、消化吸収障害や下痢など。)
聞いたことがないですが、あるかもしれません。
お手数ですが、調べていただけますか?
僕も興味あったので、かつ、暇だったのでちょっとだけ調べてみました(笑)
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/syokanai/chiken.html
「京都府立医科大学附属病院でグルカゴン負荷試験、BT-PABA試験を受けられた患者様・ご家族の皆様へのお知らせです。」
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/syokanai/images/chiken/chiken-171103.pdf
ご参照ください。
「近年、膵脂肪化はメタボリックシンドロームや2型糖尿病、膵臓癌といった様々な疾患
のリスクとなることが報告され、臨床的に注目されています。
また、膵脂肪化は組織学的には膵臓の正常組織が壊され、代わりに脂肪組織が置換さ
れている状態を指し、膵脂肪化が膵臓の本来の機能である内分泌機能(インスリンやグ
ルカゴンといったホルモン分泌)・外分泌機能(消化酵素の分泌)に影響を与えている
可能性が考慮されますが、これまでに検討された報告はほとんどありません。
また膵内分泌機能低下は糖尿病、膵外分泌機能低下は消化吸収不良等を引き起こす原
因となりますが、実際の臨床において膵脂肪化が強いだけで他の明らかな膵臓の病気が
ないような患者様は自覚症状等がない限りは精密検査が行われることは少なく、潜在的
に膵内外分泌機能低下した患者様の発見ができていない可能性も考慮されます。
本研究では膵脂肪化の程度を腹部単純CTで評価し、膵脂肪化が膵内外分泌機能にどう
いった影響を与えるのかを検討することで膵脂肪化と膵内外分泌機能低下との関連性を
明らかにすることを目的としております。」
こういう研究が行われている、ということは、
やはり、kenkenさんのご指摘の通り、消化器内科の先生の感覚的には、
「膵が脂肪置換されている患者さんは、下痢などの症状を起こしている割合が多い気がするなぁ~、でもどうなんだろうなぁ~」という風に感じているみたいですね(^▽^)/
今後に注目です(^▽^)/
>膵頭部や膵尾部にもこの脂肪置換を認めていますが、背側の膵は比較的膵組織が保たれていることがわかります。
たしかに!笑
今回、特にType分類では答えませんでしたが、「分類しろ」と言われたら2bとしてしまっていまたと思います(;’∀’)
にしても、発生学は苦手ですね~。
空間把握が苦手なのかもしれません。いつも膵をぐるぐる回すんですけど、同時に頭がこんがらがってます(;’∀’)
やっぱり、外科の先生とか、放射線科の先生は得意な方が多いでしょうか?
私も気になったのでちょっと調べて見たところ以下が引っかかりました。
結論は分かりませんが症状を特定して関連していると思っている人はいるみたいですね。
こういうのってコピペしたらまずいのであれば削除お願いします。
膵脂肪化(膵臓の脂肪化)と膵内外分泌機能低下に関する検討を目的とし
た臨床研究が関西の某大学病院でなされたようですね
研究の目的
近年、膵脂肪化はメタボリックシンドロームや2型糖尿病、膵臓癌といった様々な疾患
のリスクとなることが報告され、臨床的に注目されています。
また、膵脂肪化は組織学的には膵臓の正常組織が壊され、代わりに脂肪組織が置換さ
れている状態を指し、膵脂肪化が膵臓の本来の機能である内分泌機能(インスリンやグ
ルカゴンといったホルモン分泌)・外分泌機能(消化酵素の分泌)に影響を与えている
可能性が考慮されますが、これまでに検討された報告はほとんどありません。
また膵内分泌機能低下は糖尿病、膵外分泌機能低下は消化吸収不良等を引き起こす原
因となりますが、実際の臨床において膵脂肪化が強いだけで他の明らかな膵臓の病気が
ないような患者様は自覚症状等がない限りは精密検査が行われることは少なく、潜在的
に膵内外分泌機能低下した患者様の発見ができていない可能性も考慮されます。
本研究では膵脂肪化の程度を腹部単純CTで評価し、膵脂肪化が膵内外分泌機能にどう
いった影響を与えるのかを検討することで膵脂肪化と膵内外分泌機能低下との関連性を
明らかにすることを目的としております。
インスタントさんの1つ目のコメントになぜか承認作業が必要でしたので、それで時間差でお二人が同じところから引用しているということですかね。
>膵脂肪化が膵臓の本来の機能である内分泌機能(インスリンやグ
ルカゴンといったホルモン分泌)・外分泌機能(消化酵素の分泌)に影響を与えている
可能性が考慮されますが、これまでに検討された報告はほとんどありません。
そうなんですね。
糖尿病患者や慢性膵炎患者に多いということから、
膵脂肪化→内分泌機能・外分泌機能の低下
は確かに予測されますね。
ただし、そもそもCTなど検査をしていない人で、
膵脂肪化をみとめているけど、内分泌機能・外分泌機能の低下を伴っていないという人もいそうですね。
また、糖尿病患者や慢性膵炎の方が必ずしも膵の脂肪化を伴っているわけではありません。
これは、日常的に糖尿病スクリーニングなどで回ってくるCTを見ていてもそうです。
ただし、糖尿病や慢性膵炎の方の方が、そうでない人よりも膵の脂肪化は多い印象です。あくまで印象ですが。
ということで相関関係はあるのだろうけど、
「膵臓の脂肪置換に伴う何らかの症状」については伴う人もいるし伴わない人もいるということで良さそうです。
脂肪置換がない人よりは、脂肪置換がある人の方が、内分泌機能・外分泌機能の低下による症状が出ることが多いとまでしかいえないでしょうね。
皆様、ご回答ありがとうございます。
勉強になりました。
ここのコメントを見ただけで気になる人が複数いるくらいなので笑、
消化器内科の先生の興味があるものも納得ですね(笑)
高齢者で膵臓がなんか見にくいなー萎縮してんのかなー
と思ったことがありました.
上記の議論含めて勉強になりました.
アウトプットありがとうございます。
脂肪置換に加えて萎縮も加齢性変化がありますね。
両方の観点から膵臓をチェックしてみてください。
いつもありがとうございます。
”脂肪置換を起こす範囲に偏りがあることがある。”
とのことですが、主膵管周囲は比較的脂肪置換の影響を受けにくいなどの事はありませんか?
または、そのような状態(病態)はありますか?
超音波検査では、脂肪置換(脂肪浸潤)を疑われるような高輝度膵でも、主膵管周囲のみ輝度上昇を免れいてる症例をちょくちょく見かけます。
いかがでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>主膵管周囲は比較的脂肪置換の影響を受けにくいなどの事はありませんか?
または、そのような状態(病態)はありますか?
これは聞いたことがないですが、主膵管や膵内胆管周囲は保たれる傾向にあるのかもしれませんね。
注意して見てみます。
総胆管下部に陰影欠損のようにみえるものはないですか?石灰化をよく伴っている総胆管結石とはことなっているのですが、コレステロール結石ではでこのように見えませんか?
アウトプットありがとうございます。
>コレステロール結石ではでこのように見えませんか?
その可能性はありますが、これだけでは何とも言えないですね。
少なくとも上流の総胆管や肝内胆管の拡張はありません。
必要に応じてMRCPで精査ですね。
いつも勉強させていただいています。
本題とは関係ないのですが、前立腺左葉辺縁が低吸収域に見えるのですが、こちらは正常範囲内でよろしいのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
今回くらいの所見ですと何とも言えないですね。
前立腺は癌があっても、よほどサイズが大きいとか周囲に進展などしていないとなかなかCTでは同定できません。
CTでよくある所見としては、
前立腺腫大(単純にサイズが大きい)
前立腺の石灰化(生理的)
ですが、指摘するとしたら前立腺腫大ですね。
あとは造影のされ方にあまりに左右差があれば指摘します。
もちろん明らかな腫瘍があれば指摘しますが。
いつも勉強させていただいています。
膵の脂肪置換ですか。
経験値が少ないので初めて見ました。
今回も大変勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
膵の脂肪置換は稀ではなく日常臨床でよく見られますのでこの機会に覚えておいてください。