
【頭部】症例8
【症例】50歳代男性
【主訴】呂律難
【現病歴】本日2時間前から、仕事中に呂律難が出現し、他院受診。診察にて、呂律難、右上下肢の筋力低下があり、脳梗塞を疑われて当院に転院。
【既往歴】慢性解離性動脈瘤、大動脈弁置換術、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症
【身体所見】JSC 1、BP 178/80mmHg、HR 70/分、SpO2 98%(鼻カニューレ3L)、瞳孔 2.5mm/2.5mm、対光反射+/+、顔面神経 右の鼻唇溝浅い、挺舌 右へ偏位、左への移動は可能、構音障害あり、右上下肢MMT 4/5、Babinski 陰性、Barre 右陽性。
【内服薬】バイアスピリン錠100mg、ワーファリン 3.25mg、テネリア 20mg、ネキシウム、クレストール、フェブリク、メインテート
画像はこちら
左の被殻に2cm大の高吸収域を認めています。
左の被殻出血を疑う所見です。
基底核レベルの解剖については、上の通りです。
頭部画像診断ツールで確認ください。
脳内出血を見た場合、随伴所見として以下の項目をチェックしましょう。
今回はいずれも認めていません。
診断:左被殻出血
※脳外科コンサルトとなります。
さて、次に脳内出血の手術適応について確認しましょう。
被殻出血の場合は、31ml以上(つまり直径が約4cmを超えるもの)であり、圧迫が高度であるものが手術適応となります。
今回は、直径が2cm程度であり、圧迫所見は認めていません。
ですので、保存的に加療されます。
保存的に加療され10日後のCTです。
周囲の低吸収な浮腫性変化は発症時よりもやや大きくなっていますが、血腫自体は吸収されていっています。
このまま保存的に加療されました。
その他所見:とくになし。
被殻出血
- 主な責任血管は、レンズ核線条体動脈外側枝(中大脳動脈からの穿通枝)
- 隣り合う内包が障害されることで、反対側の片麻痺、感覚障害、病巣側への水平性共同偏視などの症状が生じる。
- 血腫量が31ml以上(直径約4cm以上)、圧迫が高度である場合に、手術適応となる。
【頭部】症例8の動画解説
補足動画:脳内出血の局在診断とその原因
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
視床ではなく被殻でした。安易に答えてしまって反省です。解剖の把握が粗末でした。
http://www.sankikai.or.jp/tsurumaki/disease/brain/nosyukke.html
このサイトによると、症状的にも視床出血では運動障害だけでなく感覚障害や眼球運動の異常が出やすいとの記載があり、その点からも被殻>視床出血なのかなと思いました。
手術適応であった場合の術式も変わるようです。
画像診断的にはとりあえず出血の指摘と随伴所見が分かれば合格なのでしょうが、手術適応についても勉強になって楽しかったです。
アウトプット&調べて頂き、ありがとうございます。
>このサイトによると、症状的にも視床出血では運動障害だけでなく感覚障害や眼球運動の異常が出やすいとの記載があり、その点からも被殻>視床出血なのかなと思いました。
出血部位と症状の関係はなかなか難しいところですが、その傾向もありそうですね。
脳内出血を見た場合、「高血圧性なのか?、非高血圧性なのか?」は、高血圧の既往や出血部位などから、必ず意識するようにしています。最近では、感染性心膜炎による脳出血を経験しました。
アウトプットありがとうございます。
>「高血圧性なのか?、非高血圧性なのか?」は、高血圧の既往や出血部位などから、必ず意識するようにしています。
大事ですね!
>感染性心膜炎による脳出血を経験しました。
動脈瘤でもできたのでしょうか?
CTAを行いましたが、動脈瘤は確認されませんでした。エコー所見から典型的な感染性心膜炎で、脳出血を来す他の原因も確認できませんでしたので、合併症と診断されました。
なるほどです。調べていただき、ありがとうございます。
今後血腫の体積を測ろうかとも思いましたが、脳外の先生とトラブったらいやなので、口頭でお伝えしようと思います(笑)。適応しれてよかったです。
アウトプットありがとうございます。
実際の手術適応はこの通りでもないと思いますし、施設や医師によっても判断は異なるかと思います。
一応の一つの目安ですね。
被殻、淡蒼球、どちらかわからなかったのでレンズ核出血としてしまいました。
被殻出血が4割なんですね。
覚えておきます。
アウトプットありがとうございます。
レンズ核出血でもいいかと思います。淡蒼球にも及んでいそうですし。
ただし、首座はやはり被殻ですね。
脳出血の局在の動画とても分かり易かったです.
今後その他の脳出血が登場するのでしょうか.普段から遭遇するほとんどの脳出血が高血圧性であることから,それ以外の脳出血に注意して画像を読影しようと思いました.
>脳出血の局在の動画とても分かり易かったです.
ありがとうございます!!!
>今後その他の脳出血が登場するのでしょうか.
そ、それは・・・・秘密です(笑)
>普段から遭遇するほとんどの脳出血が高血圧性であることから,それ以外の脳出血に注意して画像を読影しようと思いました.
まずは基本の高血圧性をしっかり押さえておいて、非典型例の場合であっても
高血圧性も頭に入れつつ、さらに別の原因も追求していく形ですね。
ただしその場合は、CTのみでは診断できないことの方が多いです。
基底核の解剖はいつも抜けますが、いい復習になりました。
何となく圧排所見や脳室穿破がないことも意識でき、手術適応でもないだろうと判断しましたが、
厳密にはもう少し細かく決まっているんですね(^▽^)/
まぁ、でも、直観的な判断もある程度間違いなさそうですね。4cmあったら、、、さすがに何とかしたくなりそうです(;’∀’)
アウトプットありがとうございます。
>直観的な判断もある程度間違いなさそう
そうなんです。それについてはまたどこかで脳外科の先生とのLINEのやりとりが出てきます(^o^)
“被殻出血”だけで満足していました。
随伴所見の確認や手術適応など、確認するべきことはたくさんありますね。
確認すべきことを頭に入れてしっかりとチェックしていきたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>随伴所見の確認や手術適応など、確認するべきことはたくさんありますね。
そうですね。ただ今回はシンプルすぎたのでその点は仕方がないかも知れません。
強い所見がある場合には評価は必須ですね。
今日もありがとうございます。
今まで手術適応まで考えてなかったです…
基礎解剖の復習もこれを期にもう一度したいと思いました。
アウトプットありがとうございます。
ぜひこの機会に復習してください。
普段MRIしか経験がないため、脳梗塞!と一瞬思いましたがいやいやCTじゃんって自分で突っ込みつつ、被殻の出血だと回答できました。
随伴所見等についてはおいおい覚えて行きたいと思います。
手術適応についても勉強になりました。
出血はCTが強いというか、CTをまず撮影するのは出血を除外するためですので、よろしくお願いします。
脳内出血の随伴症状や手術適応が分かりやすくまとまっており、知識の整理に非常に役立ちました。
ありがとうございました。
それはよかったです。
また来週もよろしくお願いします。
出血の周りが低吸収だったので出血性梗塞かなと思いました。
アウトプットありがとうございます。
血腫の周りの低吸収は浮腫性変化ですね。
今回出血性梗塞としては高吸収がかなり目立つので、まずは出血が疑われます。
ただし、今回の10日後のような画像は、脳梗塞後であれば場合によっては出血性梗塞を疑うような画像です。
左小脳半球の低吸収域(横断像スライス33)を陳旧性脳梗塞と思いました。
被殻出血はよく出会うのですぐわかりました。
アウトプットありがとうございます。
>横断像スライス33
12/33ですかね。
静脈のくも膜顆粒かなと思ったのですが、冠状断像で見ると確かに陳旧性脳梗塞がありそうですね。
こんばんは!いつもお世話になっております!
症例文の身体所見からおおよその解剖学的位置を予測し、その上でCT所見と身体所見が整合性が取れているかどうか確認しつつ読影にあたりました!
今回は、
①出血が内包後脚にもかかっており、皮質脊髄路が障害されて、右上下肢の筋力低下が生じていると考えました。
②挺舌の際、右へ偏位が生じておりますが、「舌下神経核の中枢性支配は対側性である」という事実から、被殻出血に伴う身体所見として矛盾しないと考えました。
③浅い右鼻唇溝についても、口輪筋の支配は対側大脳皮質支配であるという事実から、被殻出血に伴う身体所見として矛盾しないと考えました。
神経内科は苦手ですが、神経機能解剖をおさらいしつつ今後もじっくり取り組みたいです…!
アウトプットありがとうございます。
>症例文の身体所見からおおよその解剖学的位置を予測し、その上でCT所見と身体所見が整合性が取れているかどうか確認しつつ読影にあたりました!
正直現場ではここまで考えずに読影していますので、すごいです!!
特に②③については、勉強になりました。
このあたりも私ももっと勉強していかないとですね(^_^;
被殻出血の手術適応は31ml以上とは教科書に書いてありますが、実際にどのように計算しているか知らなかったので、勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>実際にどのように計算しているか知らなかったので、勉強になりました。
よかったです。あくまで目安の一つですが、覚えておいてください。